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大前研一ニュースの視点

G7サミット/ロシア情勢/サハリン2 ~ロシアの孤立・衰退は決定的

・G7サミット 首脳宣言採択し閉幕
・ロシア情勢 ロシアはもう敗れている
・サハリン2 運営会社資産の無償譲渡命じる大統領令に署名



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▼対中牽制、新興国投資で日本に存在感
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先月28日、
ドイツで開かれていたG7サミットが
首脳宣言を採択しました。

これはウクライナへの
長期的な支援を
実施するとともに、
ロシアに厳しい経済的損失を
与え続けると明記したものです。



ロシア産の石油価格に上限を設け
ロシアの収入を減らすことを
検討するほか、
中国に対しても
ウクライナから撤退するよう
ロシアに圧力をかけることを求める
内容となっています。

今回の議長国はドイツです。



ミュンヘンの南、
オーストリアとの国境の
森と湖とアルプスの絶景に囲まれた
エルマウ城で開催されました。

ロシアへの制裁を機能させるため
ロシア産原油の価格に上限を設けるなど、
重要な議題が数多くありましたが、
オーラフ・ショルツ首相は
いい仕事をしたと評価します。



発表された声明では
中国の東シナ海・南シナ海での
現状変更に反対することや、
台湾問題の平和的解決を求めることなどが
盛り込まれており、
日本に期待されている役割も
大きいと考えられます。



特に、
途上国のインフラ整備を支援する
「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」に
日本が8兆8,000億円を拠出すると
宣言したことには注目です。

これはG7全体の拠出額の
約10%を担うことを意味し、
岸田首相も存在感を示すことに
成功したと言えるでしょう。

 




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▼ロシアの孤立・衰退は決定的
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日経新聞は先月30日、
「ロシアはもう敗れている」
と題する記事を掲載しました。

米国のユーラシアグループの
イアン・ブレマー氏が
現在のロシアの情勢を分析したもので、
「プーチン大統領は
ドンバス地方とクリミアがつながる
黒海沿岸地域を
制圧できるかもしれないが、
自国経済への打撃や
ロシア国民の不満を引き起こしており、
長期的に見れば
ロシアはすでにこの戦争に負けている」
と指摘しています。



ブレマー氏に指摘されるまでもなく、
ロシアが失ったものは
非常に大きいと言えます。

プーチン体制が続く限り
制裁は続くでしょうし、
仮に別の指導者が現れたとしても
それだけでは
西側の信用を勝ち取ることは
難しいと考えられます。



冷戦の時代でも
ゴルバチョフという
モスクワ大学の秀才が現れ、
「グラスノスチ」「ペレストロイカ」と
従来とは全く違う姿勢を見せるまでは
西側諸国が警戒心を解くことは
ありませんでした。

ロシアは制裁下で生き延びる道を
余儀なくされ、
長きにわたって
ダメージを受け続けることに
なるでしょう。



またロシア軍の損失について、
ロシア側の発表では
兵員の損失は数千人とされていますが、
ウクライナ軍によれば
35,000人以上の損失と
推計されています。

戦車や航空機なども多く失っており、
軍の損失に限っても
大きなダメージを受けています。



これらを補強するためには
半導体が必要であり、
どうしても西側から
購入しないといけないものも
多々あります。

また、
ロシアのGDPは
現在韓国より少し少ない程度ですが、
ここからどんどん下がっていく見通しです。



ニューズウィークにも
「プーチン大統領は
戦争目標も、取りうる手段も
どんどん小さくなっている」
という記事が掲載されました。

このように、
ロシアはウクライナ侵攻によって
多くのものを失ったという見解が
西側諸国の中では出てきています。

 




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▼資源の買い手としては尊重されるか
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プーチン大統領は
極東の石油天然ガス開発事業
「サハリン2」の運営を
ロシアが新たに設立する法人に移管し、
現在の運営会社の資産を
無償譲渡するよう命じる大統領令に
署名しました。

この事業には
日本から三井物産や三菱商事が
参加していますが、
今後運営の枠組みから
排除される可能性があります。



サハリン2では
以前ガスプロムが参加する時に、
日本の2社の出資比率を
10%程度にまで下げられた
経緯があります。

今度は新しい運営会社に
無償で資産を奪われ、
経営権まで失う形に
なってしまいそうです。



日本にとっては大きな損失ですが、
希望があるとすれば
産出した資源の買い取り権は
残る見通しがある点です。

ロシア国内では消費しきれませんし、
もし中国やインド、
北朝鮮に売るようなことがあれば
日本との信頼関係は永遠に失われ、
日露共同でのビジネスは
二度と出来なくなってしまうでしょう。

ロシアとしてもそれは避けたいはずなので、
顧客としての日本は尊重されると
私は見ています。

 

 

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