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大前研一ニュースの視点

円相場/国内株式市場/日本酒大手/国内コメ市場 ~「貧乏人は麦を食え」から70年

・円相場 一時1ドル=135円58銭
・国内株式市場 弱る輸出、届かぬ円安効果
・日本酒大手 日本酒など約140品目を値上げ
・国内コメ市場 下げ止まるコメ、「眠る在庫」の影



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▼黒田総裁は発言を慎むべき
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15日の外国為替市場で
一時1ドル135円58セントとなり、
24年ぶりの円安ドル高水準となりました。

米国や欧州でインフレが加速し、
米連邦準備理事会(FRB)や
欧州中央銀行(ECB)が
金融引き締めを急ぐ一方、
日銀が金融緩和を続けているのを受けて
金利差拡大を見込んだ
海外のヘッジファンドなどが
円売りを加速したと言うことです。



日銀の黒田総裁が
従来のポリシーを変えず
介入もしないと明言しているので、
ヘッジファンドが円売りの動きになるのは
必然です。

日本にとって良いことだとは思えません。

私に言わせれば、
ポリシーを変えないにしても、
表明することによって
動きが加速してしまう訳ですから、
日本経済のためを思うのであれば
無言を貫くべきだと考えます。

 



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▼30年前の常識は改めるべき
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日経新聞は14日、
「弱る輸出、届かぬ円安効果 世界シェア98年比で半減」
と題する記事を掲載しました。

13日の日経平均株価が
前日に比べ836円下落し、
今年3番目の下げ幅になったと
紹介しています。



輸出への期待が株価を押し上げる
過去の円安株高とは異なる状況になっており、
1998年以降の円安局面を分析すると、
貿易行動や労働市場の変化によって
円安の恩恵を
もたらしにくくなったことが
わかるとしています。

円安でも株価が上がらない理由は、
輸出そのものが衰えているからです。



1991年に約5,000億円だった
日本の輸出額は微増にとどまり、
当時はほぼ同額だったドイツには
約2倍の差をつけられています。

日米貿易戦争だと言われていた米国は
それ以上に躍進し、
急成長した中国は
各国を抜いてトップに躍り出ています。



中国で生産しているため
中国の輸出として数えられている
日本企業の製品もあるとはいえ、
日本はそれほど輸出競争力が
落ちているのです。

貿易収支で見ると、
日本は2010年に貿易赤字に転落し
現在はほぼプラスマイナスゼロです。



収支がプラスマイナスゼロなら、
円安でも円高でも
貿易や日経平均への影響が少ないのは
道理です。

一方で、
日本の対外直接投資や
投資先からの利子、
配当(第一次所得)の収支は
大幅に伸びています。



つまり日本は既に資本輸出国であり、
投資リターンが
主な収益になっているのです。

外国通貨での収益を円に戻す場合は
円安がプラスの影響を及ぼしますが、
現在は必ずしも
国内に還流しない傾向もあります。

日米貿易摩擦の頃とは、
状況がかなり変わってきていると
認識すべきです。

 




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▼原材料高騰の深刻度は市場のセグメントで変わる
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菊正宗酒造は15日、
日本酒や焼酎リキュールなど
約140品目の出荷価格を
10月3日出荷分より
4%から12%値上げすると発表しました。

醸造用アルコールなど材料価格の高騰や
物流費の上昇が要因と言うことで、
値上げは2013年10月以来、9年ぶりです。



菊正宗酒造や日本盛のような
伏見や灘の大きな酒造メーカーは、
数%の値上げが
売れ行きに大きく影響します。

一方で、
北雪酒造や磯自慢酒造のような
マニアに向けて
販売しているようなメーカーは、
数千円の値上げをしても
売れ行きにほとんど影響がありません。



こうした傾向は自動車などでも同様です。

大衆車が
少し値上げしようと思うと大変ですが、
フェラーリのような
コアなファンが多い車は
簡単に3,000万円から5,000万円にできます。

酒造メーカーはこの傾向を踏まえて、
価格に対して鈍感なセグメントに
働きかけることをおすすめします。



実際にニッチセグメントを狙った商品を
開発している酒造メーカーは存在しており、
天山酒造などはその代表例です。

インターナショナルワインチャレンジ(IWC)で
金賞を取った天山酒造の古酒であれば、
どんなに値上げをしても
需要は必ずあるでしょう。

菊正宗酒造のようなマス向けのメーカーは、
原料高を価格に転嫁しにくく
苦しい状況にあると思います。

 





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▼「貧乏人は麦を食え」から70年
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日経新聞は16日、
「下げ止まるコメ 『眠る在庫』の影」
と題する記事を掲載しました。

新型コロナ禍での行動制限解除で
コメの外食向け販売が持ち直し、
2021年産米の主要銘柄の5月の卸値が
前月に比べ1%から9%上昇したと
紹介しています。



世界的な小麦価格の高騰で
パンなどが値上がりし、
代替として米粉やコメに
注目が集まっていますが、
コメの在庫は依然高水準で、
スーパーなど店頭価格の上昇につながるかは
不透明としています。

所得倍増計画で有名な
池田勇人元首相は、
かつて「貧乏人は麦を食え」と発言して
問題になったことがあります。



麦が安く、
コメが高騰していた当時の状況下で
コメの価格は
市場に委ねたいという趣旨でした。

国民の反発は買ったものの、
その後の所得倍増を成し遂げたことで
池田元首相は高く評価されています。



現在の岸田首相は
その池田元首相が創設した
宏池会の出身です。

それを意識してか、
岸田首相も就任時には
「所得倍増」を宣言しました。

これは半分冗談ですが、
岸田首相も堂々と
「貧乏人はコメを食え」と
発言してしまえばよいと私は思います。



たとえ小麦の高騰に対する施策が
機能しなかったとしても、
わかる人にはわかる
最高のユーモアになりますし、
このぐらいの発言をできる気概を
見せてほしいところです。

1つ問題があるとすれば、
岸田首相の場合は
肝心の「所得倍増」が
実現しそうにないということでしょう。

 

 

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