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大前研一ニュースの視点

世界穀物市場/欧州情勢/北欧情勢/日・フィンランド関係 ~食料を運び出すことも重要な支援

・世界穀物市場 穀物約2,500万トンがウクライナから輸出できず
・欧州情勢 「欧州政治共同体」設立を提唱
・北欧情勢 スウェーデン、フィンランドとの安全保障宣言に署名
・日・フィンランド関係 ロシアのウクライナ侵攻を非難



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▼食料を運び出すことも重要な支援
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国連食糧農業機関は6日、
ウクライナで約2,500万トンの穀物が
輸出できない状況だと
明らかにしました。

港の封鎖や
インフラの欠如が要因ということで、
戦闘が起きているにもかかわらず
ウクライナ国内の収穫状況そのものは
それほど悪化していないとの見方を
示しました。



輸出ができない原因は、
ウクライナ南部の輸出港が
機能しておらず、
ロシアが黒海を
海上封鎖しているためです。

輸出用の船舶が出航できない状態で
留め置かれています。

黒海にはロシアの機雷が
大量に設置されているという情報もあり、
ロシアの船ですら
航行が難しい状況です。



モルドバの南に
ルーマニアに入っていく
鉄道ルートがありますが、
こちらは輸出ルートとしては
まだ確立されていません。

いざ使おうとしても、
鉄道はミサイルで
狙い撃ちされる危険もあります。



2,500万トンは
ウクライナの輸出の半分にのぼる量で、
同国が外貨獲得できないだけでなく、
食料が乏しい国や地域で
飢餓が発生し得るという
非常に深刻な問題です。

解決のカギは黒海の機雷です。



掃海艇による機雷除去は
日本の得意分野ではありますが、
現状ではロシアに沈められる可能性もある
危険な作業で、
簡単に引き受けられることではないでしょう。

とはいえ、兵器を送るだけでなく、
食料を運び出すという支援のあり方が
存在することは認識しておくべきです。

 



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▼マクロン大統領の政策は、机上の空論という印象
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フランスのマクロン大統領は9日、
欧州連合(EU)より
簡素な手続きで加盟できる
新たな組織「欧州政治共同体」の設立を
提唱しました。

現状のEU加盟基準が
厳しすぎることを受けたもので、
これによりウクライナなどを取り込み
欧州の結束を強める狙いです。



確かにトルコなどは
長い間EU加盟を待たされて、
その間に大きな問題が起こりました。

ですが、
その解決策として
新しいものを作ったところで、
内容が伴うものになるかどうか
私は疑問です。



EUとの違いを出しすぎると、
新しい共同体にしか加盟できていない国は
欧州の一員でありながら
互助組織には
入れていない状態になってしまいます。

一方で、
EUと同様の仕組みで
加盟基準だけを緩くすると、
別の深刻な問題が生じます。



EUはEUとしての予算を共同で用意して、
日本の地方交付税のようなイメージで
補助金を加盟国に支給しています。

現在スペインやポルトガル、
ルーマニアやブルガリアのような
貧しい地域を抱える国が
補助を受けていますが、
より貧しいモルドバのような国が加盟すれば
予算はすべてそちらに流れてしまい、
大きな軋轢が生じるでしょう。



問題点を是正しようという理念は評価しますが、
今のままでは具体性に欠けた
机上の空論という印象を拭えません。


 


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▼同じ轍は踏まないジョンソン首相の英断
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英ジョンソン首相は11日、
スウェーデンとフィンランドの
安全保障強化に向けた
新たな合意文書に署名しました。

両国が他国から攻撃を受けた場合
英国が軍事支援を行うほか、
情報共有や行動軍事訓練、
演習、軍事力配備等を強化することが
盛り込まれたと言うことです。



ジョンソン首相の英断だと評価します。

スウェーデンとフィンランドは
北大西洋条約機構(NATO)加盟を
表明しましたが、
正式加盟までには通常1年程度かかるとされます。

その間にロシアから攻撃されるリスクは
かえって大きくなっているのが現状です。



その危険な1年間を乗り切るために、
有事の際には
両国は英国が守るという
軍事同盟と安全保障宣言です。

そもそもロシアが
ウクライナに侵攻した背景には、
ウクライナがNATO加盟国ではないことを理由に
米国が「派兵をしない」と
宣言してしまったことがあります。



これでロシアは
援軍を警戒する必要がなくなり、
侵攻に踏み切りました。

同じような状況に置かれた
スウェーデン、フィンランドに対し、
すかさず軍事同盟を打ち出したことは
ロシアへの大きな抑止力になるはずです。

 




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▼歴史を知り、メッセージを真摯に受け止めるべき
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岸田首相は11日、
訪日したフィンランドのマリン首相と
会談しました。

両首脳はロシアによる
ウクライナ侵攻を強く非難し、
結束して対応することで一致。



また、先端技術や
再生可能エネルギー分野での協力、
核兵器のない世界に向けた連携も
確認するとともに、
マリン氏は共同発表で
軍事的中立を掲げてきた
フィンランドのNATO加盟検討について、
「国際社会全体が強化される」として
意義を強調しました。



マリン首相は、
フィンランドに帰国したら
すぐにニーニスト大統領と
NATO加盟宣言をするという
非常に重要で多忙な時期に来日しています。

同じタイミングで
EUのミシェル大統領と
フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長も
来日していることも示しているように、
今回は非常に重要な意味を持った
訪日だったのですが、
日本側がそれを理解していたのかどうか
疑問です。



フィンランドは
帝政ロシアの支配下にありましたが、
日露戦争でバルチック艦隊が
日本に敗れるなどして
ロシアは日露戦争に負け、
その後のロシア革命のさなかで
独立を果たしたという歴史的経緯があります。



故に「日本のおかげで独立できた」、
「日本が極東で
ロシアに睨みを利かせてくれると、
フィンランドは脅威から解放される」という
国民の共通認識があるのです。

NATO加盟宣言はロシアを強く刺激し、
一時的にリスクは大きく高まります。



その正念場を前に、
日本に期待するフィンランド国民を代表して
マリン首相は訪日しました。

それにもかかわらず
岸田首相や日本政府の対応は、
その意味の重大さを理解しているようには
私には見えませんでした。



報道に関しても、
マリン首相の容姿や年齢、プライベートの生活に
フォーカスするものばかりで、
政治的な意味や意義を取り上げることは
ありませんでした。

両国の歴史を踏まえて、
フィンランド国民からのメッセージを
きちんと受け止め、
日本国民に伝える報道を
してほしいと思います。

 

 

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