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大前研一ニュースの視点

トルコ情勢/米トルコ関係/ウクライナ情勢/中東情勢 ~イランとサウジアラビアの仲介をしたイラクの思惑

・トルコ情勢 黒海-地中海に新運河
・米トルコ関係 アルメニア人「虐殺」を認定
・ウクライナ情勢 ロシア軍部隊に撤収命令
・中東情勢 イラン、サウジが直接協議

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▼トルコの新運河が完成すれば、軍事的にも極めて重要な意味を持つ
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日経新聞は先月20日、
「黒海-地中海に新運河」
と題する記事を掲載しました。

トルコのエルドアン大統領が6月から
イスタンブール運河の建設に取り掛かる方針を
明らかにしたと紹介。

 

ボスポラス海峡から
欧州側に十数キロ離れた場所に
開通させる計画ですが、
この海峡は条約で
黒海沿岸国以外の通行を
大幅に制限しており、
運河ができればこの条約が無効になると
懸念する声が挙がっているとのことです。

 

イスタンブール運河によって
新しいルートが完成すると、
これまでのボスポラス海峡の制限を無視して
エルドアン大統領の思惑で
渡航を許可することができます。

すなわち、トルコの許可で
黒海へ入ることができるようになります。

 

これは黒海を実質的に支配している
ロシアにとっては、
当然面白くありません。

おそらく、
今ロシアは相当ナーバスに
なっているでしょう。

 

とは言え、実際に完成するかどうか
わからないと思います。

トルコが45キロという長距離の運河を
最後まで掘り切る財力があるか、
あるいは完成するまで
エルドアン政権が存続しているかもわかりません。

もし本当に完成すれば、
軍事的な意味で
大きな風穴を開けることになると思います。

 

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▼バイデン大統領のアルメニア人虐殺声明に、トルコはどう反応するか?
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第一次世界大戦中のオスマン帝国で起きた
アルメニア人の大量殺害について、
米バイデン大統領は先月24日、
「アルメニア人に対するジェノサイドで
亡くなった人たちに思いを馳せ、
こうした残虐行為が
二度と起きないようにする
決意を新たにする」
と声明を発表しました。

 

バイデン氏はトルコのエルドアン大統領に
事前に通告するなどの
配慮を示していましたが、
トルコは虐殺を否定しており
反発は必至です。

オスマン帝国の後期、
約150万人のアルメニア人を
強制移住させたり、
虐殺したと言われていて、
アルメニア人のトルコに対する恨みは
根深いものがあります。

 

また、昨年再び勃発した
ナゴルノ・カラバフ戦争でも、
トルコはアルメニアと対立した
アゼルバイジャンを支援しました。

この問題については、
かつてレーガン大統領も
言及したことがありますが、
米国にはアルメニア系の移民も多いので、
米国にとって
政治的に重要な意味を持ちます。

 

とは言え、バイデン大統領が就任早々に、
この問題について言及し始めたのは
ちょっと意外でした。

一歩間違えると
大きな問題に発展するかもしれませんが、
声明を発表する前に
電話でエルドアン大統領に
説明済みとのことですし、
問題はないと私は思います。

 

そもそも、オスマン帝国時代と言えば
100年も前のことですし、
トルコ共和国の初代大統領である
アタテュルク氏以前のことですから、
近代トルコとの関係性は薄いと言えます。

ゆえに、エルドアン大統領も
それほど興奮していないと私は見ています。

 

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▼ロシア軍部隊が撤収しても、ウクライナの今後は目が離せない
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ロシアのショイグ国防相は先月22日、
ウクライナとの国境近くに展開していた
ロシア軍部隊に対して、
5月1日までに本来の駐屯地や基地に
戻るように伝えたことを明らかにしました。

 

国境周辺には
10万人以上のロシア軍が集結し、
ウクライナに再び侵攻する可能性が
指摘されており、
緊張緩和に繋がるかが注目されています。

バイデン大統領とプーチン大統領が
お互い顔を合わせて
ミーティングを実施することになったと
伝えられています。

 

今、プーチン大統領は
ロシア国内に数々の問題を抱えていて
大変ですから、
さすがにウクライナ方面を
侵略するのは難しいと判断して
国軍に撤収を命じたのでしょう。

ニュースを見て私が意外に思ったのは、
ロシアはクリミア半島まで
軍を派遣していたということです。

 

黒海の北岸・クレミア半島まで
進軍していたということは、
かなり本気だったはずです。

そこまで進めた軍を撤収し、
米ロで会談の機会を作るというのが
真実なら非常に良いことだと思います。

 

しかし、
バイデン大統領とプーチン大統領の会談が
実現したとしても、
ミンスク合意レベルには
戻るかも知れませんが、
それ以上の進展は厳しいのではないかと
私は見ています。

 

ウクライナには
欧州側に付きたいという意向が
見え隠れしており、
ロシアとしては
それを絶対に防ぎたいと
思っているでしょう。

一旦クリミア半島から
軍は撤収となりましたが、
今後ウクライナがどうなっていくのか、
目が離せない状況が続くと思います。

 

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▼イランとサウジアラビアの仲介をしたイラクの思惑
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日経新聞が報じたところによると、
対立するイランとサウジアラビアが
水面下で直接協議を
開始したことがわかりました。

両国は代理戦争の様相を呈する
イエメン内戦などをめぐり
対立を続けてきましたが、
米国がトランプ前政権の
イラン敵視・サウジ肩入れを修正し、
双方に歩み寄る姿勢に転じたことを受けて、
まずは協議の場を設けて
双方がそれぞれの立場を確認したとのことです。

 

トランプ前大統領が歪めた中東情勢を、
バイデン大統領がこれほど早いタイミングで
修正に動くとは予想外でした。

イランとサウジアラビアが
話し合いを始めたというのは、
評価できる成果だと思います。

 

トランプ前大統領のときには、
イスラエルがイランを敵視するから、
米国もイランを敵視するという
単純な発想しかありませんでした。

そんな前政権に対して、
もう少しバランスを重視した
立場に取ろうとしています。

 

ここで重要な役割を果たしたのは、
両者を仲介したイラクでしょう。

イラクの首相の手助けもあって、
協議が始まったと言われています。

イラクが仲介役を買って出るのは、
イラク自身のためでもあります。

 

イラクはサダムフセイン時代には
支配層はスンニ派でしたが、
マジョリティーはシーア派であり、
ある意味、
スンニ派とシーア派による
対立構造の縮図を
表している国とも言えます。

 

それゆえ、双方の勢力が争い続けていると、
イラク国内も2つに割れ続けてしまい、
平和が訪れないと
感じているのだと思います。

トランプ政権以降の様々な動きを見ながら、
今ならうまく橋渡しできると思って
イニシアティブを取ったのでしょう。

 

どこか出来すぎたストーリーのようにも
聞こえますが、
中東問題の解決のためにも
イラクが仲介した協議がまとまることを
私は願っています。

懸念点があるとすれば、
最終的に駄々をこねる可能性が高い
イスラエルをどのように抑え込めるか、
ということでしょう。

 

 

 

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