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大前研一ニュースの視点

給与制度/養豚DX/タクシー業界/高速道路料金 ~高齢化とコロナ禍で解決の糸口は見えず

・給与制度 日本企業、国際人材を確保へ
・養豚DX 豚の発情を自動検知
・タクシー業界 「タクシー全然捕まらない」問題の原因
・高速道路料金 料金支払いを50年間延長へ



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▼世界共通の給与制度実現は難易度が高い
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日経新聞は13日、
「給与の世界共通化進む
日本企業、国際人材を確保へ」と
題する記事を掲載しました。

日本企業が、
国内外の社員の給与制度の共通化を
進めています。

日本の給与制度は
主要国に比べて硬直的とされており、
現状は優秀な人材への配分で
見劣りしていますが、
制度の共通化によって
給与水準を
引き上げやすくするとのことです。

私も30~40年前、
マッキンゼー時代に
世界共通の給与制度作りに
取り組みました。

新卒の給料を世界共通にすると、
米国基準の高水準になります。

すると、
だんだんと給料を上げていく仕組みを
採用している
オーストラリアや英国、
日本などでは、
「新卒を金で釣っている」と
批判が起こってしまいます。

そこで、
最初はローカルの水準に合わせて
採用し、
社内の基準を満たして
パートナーやディレクターに
昇進するタイミングで、
世界共通の水準に
引き上げる工夫を
していました。

初任給の他にも
大きな問題が2つあります。

まずは生活費の問題です。

国によって物価が様々なので、
同一の仕事で
同一の給料をもらっていても、
同じライフスタイルができるとは
限りません。

子供がいる方なら、
学費も国によって
大きく異なります。

転勤で住む国が変わるごとに、
生活水準を大きく変えないと
いけなくなってしまうのです。

当時の私は
「どこからどこに転勤したら、
何%給料を上げ下げするか」
という表を
毎年改定して使っていました。

もう一つの問題が為替です。

私自身も、
給料が大きく上がった翌年に
ものすごい円高になり、
円での手取りが40%も
減ってしまった経験があります。

ファーストリテイリングは
物価や為替を考慮して、
40%くらいの範囲で
調整するとしているようですが、
それでは足りないと思われます。

生活費の問題、そして為替の問題。

同じ仕事をしていれば
世界中で同じ給料というのは
理想ですが、
この二つの問題を解決しない限り、
実現するのは不可能です。

報道を見る限りでは、
問題解決の妙手があるようには
見えていません。



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▼畜産分野でもDXは利益を生み出す
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豚の体重や体脂肪率などを測定し、
出荷時期を判定するシステムを手がける
Eco-Porkが、
豚の個体識別や
発情期を検知するサービスを
2023年度に開始することが
わかりました。

帯広のファームノートという会社でも、
似たような取り組みをしています。

こちらでは、
乳牛の発情を検知し、
和牛を掛け合わせることで
利益の大きい和牛の子牛を
効率的に生産しているそうです。

Eco-PorkはAIカメラで個体識別と、
ずいぶんハイテクなことを
打ち出していますが、
ファームノートには
センサーで簡単に
識別する仕組みがあります。

畜産DXの分野にも、
日本には報道されていない
素晴らしい技術や企業が
存在しています。




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▼高齢化とコロナ禍で解決の糸口は見えず
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東洋経済オンラインは13日、
「東京で深刻
“タクシー全然捕まらない”問題の原因」
と題する記事を掲載しました。

以前、
私が出会ったタクシー運転手の方は
52歳でしたが、
それでも若い方だと
おっしゃっていました。

タクシー運転手という職業は、
すでに高齢者の
仕事領域になっているのです。

この仕事は、
交通事故リスクはもちろん、
見知らぬ人を乗せるため
犯罪に巻き込まれる
リスクなどもあります。

高齢のタクシー運転手は
配偶者の方から心配されることも多く、
さらにコロナで利用者が減ったことにより
廃業が激増し、
昨年だけで9,000人が離職しました。

未だに
インバウンドの利用者は
戻ってきておらず、
ニーズは低迷しています。

少し値上げはしましたが、
利用者数の減少を
埋めるほどではありません。

このままでは、
人手不足による
「タクシー全然捕まらない」問題は
ますます深刻になるでしょう。



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▼建造費捻出の工夫も利権に堕してしまった
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高速道路の料金を
利用者が支払う期間について、
国土交通省が現在定めている
2065年から、
50年間延長する方向で
最終調整に入ったことが
わかりました。

高速道路は
吉田茂首相の時代に、
米国やドイツと同じく
原則無料で使えるものとして
計画されました。

しかし、
建造費が不足し、
その対策として
当面の有料化が決まりました。

通行料で建造費を返済していくと、
25年後には
無料化できるはずでしたが、
いつの間にか
2065年まで延長されていて、
ついには2115年までと
さらに50年間の延長です。

無料化ができない原因は、
構造の問題です。

以前私は、
ナンバープレートに課税する方式での
無料化を提言しました。

高速道路を使う車両にだけ課税し、
ナンバープレートで
識別する仕組みで、
一般車両は年間1万円、
トラックなら年間3万円と
設定すれば、
当時の道路財源13兆円と合わせて
十分賄えるはずでした。

たったこれだけのことで
無料化できるはずなのですが、
利権団体の考え方には
合わなかったようです。

出来ることをせずに
2115年まで
有料期間の延長をするということなので、
これはもう永遠に
無料化しないつもりとしか
思えません。

 

 

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