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大前研一ニュースの視点

原子力政策/EV充電器/サプライチェーン連携 ~技術への理解に乏しい軽率な発言

・原子力政策 新たな原子力政策を評価
・EV充電器 急速充電器規制を年内緩和へ
・サプライチェーン連携 米CSIS講演で連携呼びかけ



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▼技術への理解に乏しい軽率な発言
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経団連の十倉会長は、
政府が打ち出した
次世代原発の建設などの
新たな原子力政策について、
「思い切った決断をした」と述べ、
評価する考えを示しました。

また、
核のゴミの最終処分地の問題等について、
「政府が率先して対応すべき」と
指摘する一方、
「原発はある種、移行期の技術であり、
ゆくゆくは
核融合発電に行きつかなければ、
人類の未来は無い」
との考えを示しました。

米国で、
レーザー核融合で
エネルギーを取り出すことに
成功したことを受けての
発言だと思われます。

しかし、
ここから電気を
安定的に取り出す技術は、
全く目途が立っていません。

私自身も、
博士課程の一年目は
教授の薦めで
核融合発電の研究をしましたが、
自分が生きてるうちには
到底不可能だと思い至って、
原子炉の材料研究に
切り替えました。

それから30年経ちましたが、
当時から存在する諸問題は
まだまだ解決していません。

私に言わせれば、
「地球環境が汚染されたので、
人類は月に移住しましょう」と
言われたようなものです。

たしかに
月に行くことはできますが、
そこで生活するための諸問題は
全く解決していません。

イーロン・マスクのような人が
発言する分には自由ですが、
経団連の会長ともあろう人が
新聞に書いてあったことを
落語の枕みたいに話すのは
軽率だと思います。

アドバイスする人も
いなかったのだとしたら、
経団連の体制にも
疑問を感じます。

たしかに現在、
核融合には
投資がかなり集まっていて、
同じように投資が集中した
アルツハイマー新薬は
成果が出つつあります。

ですが、
核融合発電の実用化に関しては、
まだまだ先は長いと
言わざるを得ないでしょう。




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▼電気自動車の利点を立ち止まって考えるべき
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電気自動車(EV)の
急速充電インフラの普及に向けて、
政府が機器の設置や
取り扱いに関する規制を、
年内に緩和する見通しが
明らかになりました。

日本は現在、
中国やドイツ、韓国などに比べて
EVの普及が遅れていますが、
厳しい規制により
充電機器の設置が
進んでいないことなどが
響いているもので、
政府は規制緩和によって
充電機器の設置を容易にし、
EVの普及を後押しする考えです。

EVの普及は
ノルウェーが一番進んでおり、
人口あたりの充電設備の数も
世界一です。

にもかかわらず、
現地では
充電設備の渋滞や順番待ちが
大きな問題になっています。

現在EVに乗っている人たちへの
アンケート調査でも、
次の車もEVを買うという人は
半分にとどまるほど、
満足度は低いのが現状です。

日本は自宅に
充電設備を置く方向で
進んでいるので、
事情は少し違います。

しかし、
コンビニや家庭で充電できる
インフラの整備と、
短時間の充電で
数十キロ走れるような
急速充電技術の開発がなければ、
ノルウェーと
同じ轍を踏んでしまうことに
なるはずです。

そもそも、
EVの普及が
本当に正しいのかどうかを、
一度立ち止まって
考える必要があります。

EVの問題としては、
コストの高さが挙げられます。

今のままでは、
ガソリン車の方が
コストベースでは安いというのが
現実です。

もう一つの問題は、
発電所が
クリーンエネルギーに
転換していないと
意味がないということです。

もし自動車が
CO2を出さなくなったとしても、
その動力を賄うために
発電所が
大量の化石燃料を
燃やしていれば、
環境への負荷は変わりません。

EVはまだまだ
過渡期にある技術です。

私としては、
ガソリンを併用する
ハイブリッド車や、
プラグインハイブリッド車を
もっと重用して、
トータルでのガソリン消費量を
減らしていくのが
得策だと考えます。




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▼米国追従だけで経産相の責務を果たしていない
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米国を訪問した
西村経済産業相は5日、
米国の戦略国際問題研究所(CSIS)で
講演し、
サプライチェーン強化へ向け
友好国の連携を
呼びかけました。

対立する国を
貿易制限等で
経済的に威圧する行為を繰り返す
中国を念頭に、
国際的に協調して
対抗策を準備する必要性を
訴えたもので、
日本が議長国を務める
2023年のG7サミットでも
重要議題とする方針です。

優秀なはずの西村経産相にしては
期待外れの講演でした。

中国を過剰に
警戒、排除しようとしている
米国の聞きたいことを
言ってあげているという印象です。

本来であれば、
頭に血がのぼってしまっている
米国をたしなめ、
冷静な対応を求めるのが
日本の役目でした。

そもそも、
日本や韓国、
東南アジアのサプライチェーンは、
中国が存在することを前提に
25年の年月をかけて
作り上げてきたものです。

そこからいきなり
中国を外そうとしても、
現実的ではありません。

無理に排除を進めれば、
米国の企業やユーザーにとっても
悪影響が出るでしょう。

それぞれの国が
得意なことを分担する
サプライチェーンの中で、
日本は精密で難しい部品を
担当しているという
重みがあります。

その日本がやるべきことは、
ルールを守らせるための
順序や段階を
提案することでした。

中国に
疑わしいところがあるなら調査し、
調査して不正の証拠があれば抗議し、
それでも居直るようなら
ここで初めて
排除を検討するべきです。

最初から不正・横暴と
決めつけて動くことは、
誰の利益にもなりません。

それをハッキリと伝えず、
米国追従に
終わってしまったことは、
経産相としての資質にも
疑問を感じてしまいます。

 

-大前研一ニュースの視点