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大前研一ニュースの視点

独フォルクスワーゲン/仏ルノー/中国BYD/中国ファッション大手 ~大前も舌を巻く新発想のビジネスモデル

・独フォルクスワーゲン ポルシェをフランクフルト証取上場へ
・仏ルノー 最終赤字約1,840億円
・中国BYD タイでEV組み立て工場を建設
・中国ファッション大手 中国発シーイン、ユニクロ超え



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▼利益率抜群のポルシェを手放した後が心配
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ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は5日、
子会社のポルシェを
年内にフランクフルト証券取引所に
上場する考えを示しました。

企業価値は
最大850億ユーロ(約11兆9,000億円)規模と
みられ、
これによりフォルクスワーゲンは、
調達した資金を
電気自動車(EV)や
自動運転などの開発に
充てる考えです。


    
冗談のような本当の出来事です。

親会社であるVWの時価総額が
約13兆円なのに、
子会社のポルシェを上場させたら
約11兆9,000億円と、
同じくらいの価値になる見込みに
なってしまいました。

販売台数でVWと同規模の
トヨタの時価総額は28兆円です。



つまりこの出来事の背景には、
VWが株式市場で
評価されていない理由があるのです。
    
VWのブランド別の
販売台数を見てみると、
VWの乗用車が約270万台、
次いでアウディが約100万台。



チェコのシュコダ、スペインのセアト、
商用のVWと続いて
ポルシェは6番目で、
約30万台となっています。

一方で
利益を比較してみると、
VWの乗用車は約25億ユーロなのに対し
ポルシェは約50億ユーロと、
アウディの約55億ユーロに次いで
2番目の成績をたたき出しています。



利益率に直してみると、
VWの乗用車は3.3%なのに対し、
ポルシェは16.5%と、
稼ぐ力は圧倒的です。
    
シュコダやスカニアなど、
私が見学したときには
驚くほど老朽化した生産設備しか
持っていなかったブランドを、
利益が出るところまで
立て直した点においては
VWを評価します。



ですが、
今後ポルシェが抜けたとき、
残ったブランドで
どれだけ効率よく
利益を出せるか心配です。

私が経営者だったら、
アウディにテコ入れをして
ポルシェ並みのブランドに
育てるくらいしか
思いつきません。

それほどポルシェの貢献度は
高いものでした。

 



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▼痛みを伴うもののロシアからの撤退は英断
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フランスのルノーが
7月29日に発表した
2022年1月から6月期の決算は、
最終損益が
13億5,700万ユーロ(約1,840億円)の
赤字でした。

アフトワズの株式を売却するなど、
ロシア事業からの撤退費用を
計上したことなどが
響いたものですが、
生産設備の過剰感も強く、
財務状況の一段の悪化が懸念されます。


    
カルロス・ゴーン体制の
後遺症と言っていいでしょう。

アフトワズは
ロシアの自動車メーカーで、
ゴーン氏がプーチン大統領と
会談した結果、
はじめて外国企業が
50%以上の株式を取得することが
認められたという
経緯があります。



ルノーの国別販売台数は、
フランスが約52万台で、
次いでロシアが約48万台、
3番目はドイツの約18万台と、
ロシアでの事業に
かなり力を入れていたことが
見て取れます。

売上でみると
自動車事業の約6%しかない
アフトワズですが、
撤退するには
巨額の費用がかかってしまった形です。



もし日産自動車が
ルノーとの提携を解消するなら、
今が好機です。

とはいえ、
長い目で見れば
ロシアからの撤退は正解だと考えます。

 



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▼BYDのタイ進出で日本企業は大ピンチ
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中国の電気自動車(EV)大手の
比亜迪(BYD)は8日、
タイでEVの組み立て工場を建設すると
発表しました。

年15万台の生産能力を見込み、
2024年までの
完成を目指すということで、
中国以外で初のEV工場を稼働し、
タイを中心に
周辺国やヨーロッパへの
輸出拡大を図る考えです。


    
タイの自動車産業は
日本がリードしてきた
歴史があります。

タイ自体が大きな市場であり、
周辺の国々へ
輸出する際の拠点としても
立地が良く、
日本企業が生産拠点として進出し
活用してきました。



ここに、
テスラを抜いて
世界一のEVメーカーとなった
BYDが参入してきた形になります。
    
BYDの狙いは
日本と同様、
タイ市場と周辺国への
輸出の拠点として活用することです。



さらに「中国産」の機械は
警戒・敬遠されるような場面でも、
「タイ産」なら警戒されずに
売ることが出来るという目論見も
おそらく存在します。

いずれにせよ、
今回の参入は
日本企業が
ガソリンエンジン車でやってきたことを
BYDがEVでやろうとしていると
解釈できます。

日本企業にとっては
BYDにリソースと市場を奪われる危機であり、
今後のタイの自動車産業から
目が離せない状況です。

 




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▼大前も舌を巻く新発想のビジネスモデル
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日経新聞は8日、
「中国発シーイン、ユニクロ超え」
と題する記事を掲載しました。

中国発ファストファッションの
ネット通販である
シーインが、
世界の若者を取り込んで
急成長しています。



デザインから量産までを
3週間で行う高速回転型のモデルによって、
最新トレンドに沿って
迅速に商品を投入する体制を
実現しており、
通販事業の開始から
わずか10年で
ファストファッション大手の
時価総額を上回ったということです。


    
ファストファッション分野は、
インディテックス、
へネス&マウリッツ、
そしてユニクロが三大企業と
長く言われ続け、
中でもユニクロはだんだんと
時価総額を伸ばしてきていました。

そこに突如として
このシーインが現れ、
14兆円という
ユニクロを超える
時価総額となりました。


    
その手法は
従来のやり方を覆すもので、
100着程度の非常に小さいロットで
製品をつくり、
スマートフォンを使い、
インフルエンサーを起用して
製品を宣伝し、
翌週には売り切っているような方法を
とっています。

この方法で
毎日数千通りの新商品を発売し、
売れ残りを出さずに
利益を出すモデルです。



私からすると常識外れな手法で、
よくここまで成長したなと
感心しています。
    
このビジネスモデルは、
大手三社が模倣しようと思っても
簡単にできるものではありません。



例えばユニクロは
同じ製品を約1,000万着も作る
大量生産方式です。

このように大規模な場合、
今は来年の秋物を企画して
生産の準備を進めるような
スケジュール感になります。



一方でシーインは、
デザインから量産まで3週間。

来週売るものを準備しているような
スケジュール感です。

仕組みがまったく違うと言っていい
回転の速さです。

 

 

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