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大前研一ニュースの視点

車載用電池/日本電産/中国市場~永守会長の「勘」は警鐘として受け止めるべき

・車載用電池 2020年に電池開発の新会社設立
・日本電産 連結純利益1120億円見通し
・中国市場 「東芝家電」中国傘下で攻め

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▼トヨタとパナソニックの新会社。トヨタの本音はどこにある?
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トヨタ自動車とパナソニックは、電気自動車(EV)などに使う
車載電池の生産会社を2020年末までに共同で設立する見通しです。

充電時間が短く、走行距離を飛躍的に伸ばすことができる
全固体電池を共同で開発するもので、電気自動車の競争力を左右
する電池で協力し影響力を強める中国・韓国勢に対抗する考えです。

この新会社の出資比率は、トヨタが51%でパナソニックが49%なので、
「トヨタ系」の電池会社ということになりますが、トヨタの競合相手
から売ってくれと言われたら、どう対応するつもりなのでしょうか。

パナソニックはテスラと提携し、米国市場にも中国市場にも
参入していますから、そのような可能性は大いにあります。

そもそもトヨタはグループ内にデンソーやアイシンといった優秀な
企業を抱えていますし、このパナソニックとの提携へのトヨタの本音、
新会社の性格がもう1つ明確ではない点に懸念を感じます。

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▼日本電産の永守会長の「勘」は事実を正確に捉えている
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日本電産は先月17日、2019年3月期の連結純利益が
前期比14%減の1120億円になる見通しを発表しました。

実質的な最高益更新を見込んでいた12%増の1470億円
という従来予想から一転して減益となるものです。

中国の景気減速が響いて、主力のモーター販売などが
落ち込んだことが要因としています。

あの経営感覚の鋭い永守会長が
「46年の経営経験で初めて。尋常ではない」
と語ったのは大いに意味があると私は思います。

まず、永守会長の勘は極めて正確に現実を捉えています。

昨年末から年明けにかけて、半導体もしくは
半導体装置の注文はキャンセルの嵐で、急減速しました。

米中貿易戦争の影響もありますが、中国経済そのものが
減速しているのが大きな要因です。

加えて、トランプ大統領は台湾系の企業も
ターゲットにしたため、TSMCなどの台湾企業も割を食う
形になって落ち込んでいます。

永守会長の日本電産は部品を扱っていますから、
こうした変化を如実に感じたはずです。

日本電産は売上も利益も赤丸急上昇で過去最高益を
見込んでいたと思ったら、減益に転じたわけですから、
永守会長としては相当ショックだったと思います。

この永守会長の感覚を未だにわかっていない経営者も
多いでしょうが、あのプライドが高い人が
「自分の経験にない尋常ではない事態が起きている」と発言する
ほどですから、これは大切な警鐘として受け止めるべきです。

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▼実態なき東芝ブランド、ブランドを安売りしてしまったツケ
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日経新聞は先月14日、『「東芝家電」中国傘下で攻め』と題する
記事を掲載しました。

中国の家電大手・美的集団に売却された東芝ライフスタイルや
中国・家電大手の海爾集団(ハイアール)傘下にはいった
三洋電機の白物家電事業が復活の兆しを見せています。

高価格ブランドとしての地位を確立し始めていることが要因
としながら、米中貿易摩擦を背景に中国傘下に入るリスクも
浮上しているとのことです。

高級ブランドとしての地位を確立し始めているとのことですが、
この「ブランド」に問題があります。

というのは、東芝は「東芝ブランド」を美的集団に
売ってしまったため、今復活してきている「東芝ブランド」は
(企業としての)東芝とはほぼ無関係だからです
(美的集団が東芝ライフスタイルの約80%の株式を保有)。

ゆえに、今後、東芝が他のブランドで展開しようとしても、
常に自分たちとは関係がない「東芝ブランド」に
悩まされることになります。

ブランドを売るときにはもっと細心の注意を払うべきです。

例えば、1970年代にモトローラ社がテレビなどを
松下電器産業(現パナソニック)に譲渡したときは、
「Quasar」ブランドのみを対象としました。

また、IBMがPC事業を売却した際には、「IBM」という
ブランドの使用を5年間限定とし、その後の使用を
禁止しています。

日本企業はこうした対応をとらないために、実態がないのに
いつまでも「東芝ブランド」を使われてしまう羽目に
なってしまいました。

東芝はブランドの重要性もわからないまま、
切り売りしてしまったのです。

事業譲渡するならブランドの重要性くらい理解しろと
強く言いたいところです。

高級ブランドとして売れているというのは
ありがたいことですが、全く純然たる「東芝製品」と
言えないのは非常に虚しい気持ちになります。

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