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大前研一ニュースの視点

西武園ゆうえんち/国内航空会社/資生堂/循環型事業/ノジマ ~国内航空会社が「合併」しない本当の理由

・西武園ゆうえんち 熟慮2年、昭和レトロで勝負
・国内航空会社 経営統合で基本合意
・資生堂 時価総額で花王を上回り
・循環型事業 中古家電事業を拡大
・ノジマ スルガ銀行との資本業務提携解消へ協議

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▼リニューアルした西武園ゆうえんちの成功は難しい
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日経新聞は先月30日、
「熟慮2年、昭和レトロで勝負」
と題する記事を掲載しました。

西武園ゆうえんちが
開業70年の古さを逆手に取り、
昭和の日本の町並みをイメージした施設として
新装オープンしました。

 

手掛けたのは、
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン再建の
立役者であるマーケターの森岡毅氏で、
コロナ禍で再建の難易度が高まる中、
森岡氏の手腕が試されるとしています。

少々持ち上げすぎの記事だと私は感じました。

 

USJの再建にあたっては、
ゴールドマン・サックス、
マイケル・キム氏のファンド・MBKパートナーズなどが
250億円規模の資金を投じて、
ハリーポッターなどの人気アトラクションを
日本へ持ち込んだことが、
大きな成功要因の1つでした。

今、西武グループは鉄道も含め、
あらゆる事業が難航していて
様々なトラブルを抱えています。

 

その中で、
西武園ゆうえんちの
リニューアルにあたり、
USJの再建を手がけた
森岡氏に託したとのことです。

リニューアル当初は
人が集まったとしても、
将来的に成功する可能性は
低いと私は思います。

 

巨大な資金を投じた
ハリーポッターレベルの
アトラクションであれば、
遊んだ時に十分にその貨幣価値を
感じられると思いますが、
西武園ゆうえんちで
同じような体験を実現するのは
難しいと感じます。

 

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▼国内航空会社が「合併」しない本当の理由
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国内の新興航空会社である
エア・ドゥとソラシドエアは
先月31日、
経営統合に基本合意しました。

コロナ禍で旅客需要の低迷が長引く中、
再編による経営効率化で
活路を見出す考えです。

 

今回の記事では
誤解してしまう人もいるかも知れませんが、
この経営統合は間接部門を共通にして
経費削減をしようという程度のもので、
会社を合併するという
「経営統合」ではありません。

 

なぜ合併による完全な経営統合ではなく、
本社機能などの間接部門だけの共通化に
留めたのかと言うと、
羽田空港の発着便「枠」を
失いたくないからです。

日本の航空会社の場合、
羽田空港にいくつ
発着便の「枠」を持てるかで
利益が決まると言っても
過言でもありません。

 

今、エア・ドゥとソラシドエアは、
それぞれ羽田空港に
20便以上の「枠」を持っていますが、
もし合併して1社になってしまうと、
おそらく持っている「枠」の半分は
返すことになるでしょう。

これは大きく利益を損ねることを意味します。

 

それを避けたいが為に、
間接部門の共通化のみで
合併はしないのです。

ANAホールディングスは、
ソラシドエアに約17%、
エア・ドゥにも約13%出資しており、
他にも多くの国内航空会社に出資しています。

 

大きな影響力を持ち、
主導権も持っていると思いますが、
それでもANAホールディングスは
合併をしていません。

出資している各航空会社を
タコ足のように使いながら、
羽田空港の発着便「枠」を確保し、
共同運航便を増やしています。

 

羽田空港そのものが
国内・国外の便数を増やしましたが、
それでも限界があります。

成田空港は遠すぎて評判が悪いですから、
この状況は今後も続いていくと思います。

 

エア・ドゥとソラシドエアは、
今回の統合によって
多少のコスト削減は
実現できるでしょうが、
新型コロナの影響が
このまま続いてしまうと、
この程度の経費削減では
限界があると私は思います。

 

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▼花王は資生堂と比べ物にならないほど、安定している
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資生堂の時価総額が2日、
約35年ぶりに花王を上回りました。

資生堂は高価格帯の化粧品に
資源を集中させるなどの
構造改革が評価され、
4月以降投資家の買いが
ふくらんでいました。

 

一方、花王はオムツなどの
既存事業が伸び悩むほか、
化粧品事業をテコ入れするものの
収益への貢献はまだ小さく、
成長性の評価に差が出た形となっています。

こうした投資家、証券会社の見解は、
大きく間違っていると私は思います。

 

資生堂の時価総額が
花王を上回ったのは、
あくまでも資生堂の魚谷社長が示した
「不採算事業を捨てて、
ハイエンドの化粧品に集中する」
という方針がわかりやすく、
ウケが良かったという側面が強いと
私は思います。

 

もともと資生堂と花王の収益力は
根本的に異なっており、
比較にならないほど花王が安定しています。

セグメント別の業績を見ると明白です。

 

新型コロナの影響を受けて、
資生堂は日本・中国・トラベルリテールなど、
各セグメントの利益が激減しています。

日本でも利益が700億円から100億円に減少し、
欧州や米国ではセグメント利益が
赤字に転落しています。

 

一方、相対的に花王は
新型コロナの影響は限定的で、
売上も利益も堅調です。

メインのファブリック&ホームケア事業は、
売上が伸びて利益も800億円あります。

スキンヘアケア事業でも500億円の利益、
ケミカル事業でも
270億円の利益を出しています。

 

唯一、化粧品事業は
新型コロナの影響をまともに受けて
400億円の利益が
25億円に減少していますが、
それでも赤字セグメントはありません。

全体としてみれば磐石です。

一体、投資家や証券会社は何を見ているのか?

私には疑問でなりません。

 

また、資生堂が経営資源を集中するという
ハイエンドの化粧品事業には、
ロレアル、エスティローダーなど
世界の強豪企業がひしめいています。

中国での販売が好調だったことが
評価されているようですが、
それでもたかだか180億円程度の
利益に過ぎませんし、
前途多難だと私は見ています。

 

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▼ヤマダホールディングスが中古家電事業を拡大するのは、大いに意義がある
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ヤマダホールディングスが
中古家電事業を拡大する見通しです。

中古専門店の店舗数を
今後2年で2倍に増やすほか、
家電の再生や再資源化、焼却処分までを
グループで完結する体制を
整えるとのことです。

 

メルカリを見てもわかるように、
アパレルでも循環型事業が旺盛ですし、
米国では中古商品の交換市場が
ネット上で広がっています。

これまでのヤマダホールディングスは、
大量販売を行うことで、
販売台数に比例してメーカーと交渉して、
期末にキックバックをもらう、
という典型的な量販店のビジネスモデルを
採用してきました。

 

しかし、ここに来てその方針を
大きく変える決断をした
ということでしょう。

中古家電事業を拡大して、
必要な修理も手掛けることで
末永く利用してもらうというのは
非常に良いことだと思います。

 

家電だけでなく、
TOTOなどのトイレ製品などにも
対応範囲を広げるべきだと思います。

今、家電メーカーは部品を
5年間しか持っていませんが、
実際にはトイレや家電製品は
10~15年使い続ける人も
多いはずです。

 

ヤマダホールディングスのような企業が、
市場を拡大させ、
中古品でも新品同様の部品で
修理・メンテナンスできる体制を
築いてくれれば、
大きな影響があると思います。

こうした取り組みこそ、
SDGs(持続可能な開発目標)に
つながっていく重要なものだと
私は思います。

 

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▼ノジマもヤマダホールディングスのように新しい道を模索せよ
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家電量販大手・ノジマが
スルガ銀行に対して
資本業務提携の解消を
申し入れたことが明らかになりました。

スルガ銀行の再建加速を狙ったノジマが、
独自の取締役人事案を
提案したのに対して、
スルガ銀行が拒否したことを
受けたものです。

 

ノジマが保有する
スルガ銀行株を売却すれば、
争奪戦が始まる可能性も
あるとのことです。

自分たちの息がかかった取締役を
半数以上送り込んで、
スルガ銀行の経営そのものを
効率化したいという狙いなのでしょう。

 

しかし、そもそも量販店のノジマと
相性が良いとは思えない
スルガ銀行の経営に
乗り出すこと自体に私は疑問を感じます。

スルガ銀行の書類改ざんなどの
不正融資が発覚してから、
約3年が経過しようとしています。

 

もともと静岡県内では
トップクラスの銀行でもあり、
銀行として「悪い部分」の
切り離しが終われば、
経営は安定するはずです。

スルガ銀行側としても、
その目処がついたので、
もうノジマは必要ないという判断を
したということでしょう。

 

株式を約18%保有していると言っても、
ノジマが取締役の半数を推薦したというのは、
少々調子に乗りすぎた結果だと感じます。

量販店は厳しい状況が続いていますから、
ノジマもヤマダホールディングスのように、
ぜひ新しい道・活路を
見出してほしいと思います。

 

 

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