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大前研一ニュースの視点

人口動態/生産緑地/横浜市長選 ~新型コロナ感染拡大により日本の人口問題は深刻に

・人口動態 2020年度出生数85万3214人
・生産緑地 生産緑地延長、8割が申請
・横浜市長選 IR誘致の是非、論戦期待

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▼新型コロナ感染拡大で日本の人口問題は深刻さが加速した
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厚生労働省が先月25日に発表した
人口動態統計によると、
2020年度の出生数は85万3214人と
前年度比4.7%減少したことが
わかりました。

新型コロナによる
妊婦や胎児への影響を不安視したり、
出産時に立ち会いができないことなどが
響いたと見られます。

 

また、日経新聞は、
新型コロナによる人口減が
日本経済の潜在成長率を
0.1~0.2pt押し下げる見方も
あるとしています。

もしかしたら、
人口減がこの程度では
すまないかもしれないと
私は感じています。

 

妊娠届出数の推移を見ると、
新型コロナ感染拡大が始まって以来、
ずっと低い水準になっていることが
わかります。

1970年代には
100万組を突破した婚姻件数も、
年々下がり続けています。

 

また、約10年前に
死亡数が出生数を上回ってから
その差は広がるばかりで、
特に近年、出生数は
急激な減少傾向にあります。

年齢別出生数の推移を見ると、
80年代半ばには
25~29歳の層が最も多かったのですが、
今は30~34歳の割合が
最大になっています。

 

そして35~39歳という年齢層の出生数が
25~29歳に迫る勢いを見せていて、
24歳以下は極めて少なく
40歳以上は若干増えています。

新型コロナウイルス感染拡大による
出生数などへの影響は
日本に限らず世界的な現象ですが、
こうした一連の数値推移を見ていると、
日本にとっては特に大きな影響だと理解できます。

 

新型コロナウイルス感染拡大によって、
日本が抱える問題が
より深刻になったと言えるでしょう。

 

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▼生産緑地の延長申請で見える、日本社会の低欲望化の実体
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日経新聞は先月20日、
「生産緑地延長、8割が申請」
と題する記事を掲載しました。

大都市圏の生産緑地への税優遇措置を
10年延長する国の特別制度について、
首都圏1都3県の自治体で
8割の所有者が延長を申請していると紹介。

 

自治体は環境維持や防災のため
生産緑地の維持を目指しており、
延長の申請を
後押ししているとのことです。

これは、いかに今の日本社会が
「低欲望社会」になってしまったかを
物語っていると思います。

 

一昔前であれば、
生産緑地の指定解除となる2022年になったら
一斉にマンションの建設ラッシュなどで
賑わったと私は思います。

ところが今は
宅地のニーズもそれほどないし、
生産緑地指定を受けていれば
固定資産税が一般農地扱いになって
相続税の納税が猶予されるので、
このまま指定を受け続けるほうが
得だと思う人が多いという状況です。

 

8割が指定を受け続けるというのですから、
驚きです。

一斉に指定解除を受けて
大量の農地が宅地として
不動産市場に流れ込むことが懸念され、
「2022年問題」とも称されてきましたが、
どうやら今回は大きな問題に
発展することはないでしょう。

 

とはいえ、
生産緑地は三大都市圏で合わせて
約1万3000ヘクタールという
巨大なスペースを誇るので、
2割であってもかなりの面積です。

今回は指定継続を決めた人も、
世間のニーズが高まってくれば、
多少の税金を支払ってでも
指定を解除して、
宅地としての活用を
考えるときが来ると思います。

 

将来的に見れば、
供給量はほぼ無限といえるほどであり、
大都市圏では地価の高騰は
まず考えられないと思います。

 

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▼横浜市長選でIR誘致はもう論点にならない
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日経新聞は先月20日、
「IR誘致の是非、論戦期待」
と題する記事を掲載しました。

任期満了に伴う
横浜市長選挙が8月8日に告示、
22日に投開票されると紹介。

 

林市長は前回の選挙で
IR誘致について白紙と繰り返したものの、
その後誘致を決めたことで
反対派から民意を問うべきとの
批判を浴びたため、
今回の市長選も誘致の是非が
大きな争点になるとしています。

 

現段階で、
林市長は立候補するか否か
態度を示していません。

しかし、私に言わせれば
林市長は市長としての役割を
十分に果たしておらず、
再選されたとしても
全く期待はできないと感じます。

 

前回の選挙では、
IR誘致反対を表明していたのに、
当選してから
意見をひっくり返してしまいました。

菅首相や二階幹事長など
IR誘致賛成派の人たちと
つながった結果かもしれません。

 

いずれにせよ、
横浜市民の大多数は
IR誘致に反対ですから、
林市長の立場が悪くなるのも当然です。

こうした背景はあるものの、
今回の選挙ではIR誘致は論点になりえません。

 

というのは、
そもそも今この状況に至っては、
逆立ちしても
日本にIRを誘致することなど
できないからです。

ラスベガス・サンズの創業者
シェルドン・アデルソン氏は
今年他界していますし、
同じく米カジノ王の
スティーブ・ウィン氏も
かつての勢いはありません。

 

マカオのカジノも
日本で派手に展開する力は
残っていないと思います。

現実的にIR誘致を考えたとき、
一体誰が横浜に莫大な資金を
投じてくれると思っているのでしょうか。

 

このような事態になった大きな要因は、
新型コロナウイルス感染拡大です。

日本はパチンコを代表に
ギャンブル人口が多いということで、
カジノを展開したときの
期待感も高かったのでしょうが、
一気にしぼんでしまいました。

 

今の状況で1兆円、
あるいはそれ以上の金額を投じるような人は
誰もいないでしょう。

IR誘致を争点とすること自体が的外れで、
横浜にはもっと議論すべき重大な問題が
たくさんあります。

 

みなとみらいなどについては、
ある程度良い開発が
出来ていると思いますが、
それ以外では問題は山積しています。

今の林市長も含め歴代の横浜市長の中で、
横浜という都市の将来像を
明確にイメージできた人はいないと
私は思います。

 

IR誘致という話題に飛びつくのではなく、
都市としての将来像を明確に描き、
問題点を考えていけば、
やるべきことはたくさんあります。

ぜひ、次期横浜市長には
そのようなビジョンを持って
問題解決を実践できる人が選ばれてほしい、
と思います。

 

 

-大前研一ニュースの視点