人口動態・2017年度予算案 ~人口減と高齢化社会。日本は直面する深刻な問題に手を打てていない
2019/01/29
- 人口動態 2016年に生まれた日本人の子ども98万1000人
- 2017年度予算案 構造改革なき予算案、アベノミクスに綻び
人口減と高齢化社会。日本は直面する深刻な問題に手を打てていない。
厚生労働省が発表した統計によると、
2016年に国内で生まれた日本人の子どもは過去最少の98万1千人で、
統計を始めた1899年以降初めて100万人を割り込む見通しになりました。
死亡数が出生数を上回る「自然減」は10年連続で、
人口減に歯止めがかからない現状が示されています。
何とも言えない重苦しいニュースと言わざるを得ません。
日本社会は高齢化していますから死亡数が増加するのは当たり前です。
かつては戦後の第1次ベビーブームがあり、
その人たちが子どもを産んで第2次ベビーブームがありました。
しかし、その後の第3次、第4次へと続くことはありませんでした。
その結果、出生数は100万人を下回りました。
日本は年間に約30万人ずつ人口が減っています。
今後、50万人、60万人と減少幅は大きくなっていくでしょう。
そうなっていくと、
1年間で鳥取県や高知県が1つ消滅してしまうのと同じインパクトがあります。
現状からすれば、日本が人口増に転じることは考えられません。
確実に日本の将来は人口が減っていきます。
移民政策など対策はありますが、移民に対する反発、
欧州の例にみる社会的な問題に鑑みると、一筋縄ではいかないでしょう。
そもそも安倍政権が強くハンドルを切って舵取りをすることも考えられません。
人口が減っていき、同時に高齢化社会が進みます。
国民一人ひとりの負担額は大きくなっていきます。
そういう深刻な問題に日本は直面しているのです。
成長戦略を実現するためには、政治家として討ち死にする覚悟が必要
日経新聞は、23日「構造改革なき予算案、アベノミクスに綻び」
と題する記事を掲載しました。
第2次安倍政権発足後で5度目の予算案が決定したことを紹介。
保育士の待遇改善や研究開発費を増加しながら新規国債の発行は減らした、
と政府が自画自賛するものの、痛みを伴う中長期制度改革は手付かずのままで
円安や超低金利の追い風に頼るアベノミクスの綻びが示されたとしています。
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日経新聞も今さらアベノミクスに「綻び」などと言っていますが、
私に言わせれば最初から綻んでいます。
アベノミクスは何の効果も生んでいません。
今回の予算を見ていても、過去の反省もなく、
構造改革も手付かずのままで、消費税も先延ばしにしたままになっています。
未だに2020年にプライマリーバランスの黒字化を掲げているようですが、
もはや奇跡が起きても不可能な状況です。
公債発行額は増加し、国の借金は膨れ上がっています。
一般会計の歳出を見ると、社会保障費が増加していることがわかります。
また国債費が23兆円もあります。
今の日本財政を個人で例えるなら「年収500万円の人が、
毎年300万円借金を増やしていて、その借金総額が1億円」という状態です。
これで支払いができると思う方がおかしいでしょう。
今、生まれてきた人は1億円の借金の重圧を背負っていくことになります。
日本の政治家はこの問題をどのように考えているのか。
どう解決しようとしているのか。
私には全く理解できません。
「成長戦略」と軽々しく口にしていますが、全く本質をわかっていません。
成長戦略を成功させた政治家はいません。
成長戦略の基本的な方針は「規制撤廃」です。
レーガン氏やサッチャー氏が示した成長戦略も、
規制撤廃から始まっています。
安倍政権はそれすら実行していませんが、
仮に規制撤廃をしたら何が起こるか?
まず既存の産業がつぶれます。
その後、十数年の時を経て、
ようやく新しい産業や会社が成長の軌道に乗り始めます。
成長戦略の効果が現れてくるのは、10年以上先になるのです。
政治家はすぐに結果を示して選挙に臨む必要があります。
レーガン氏もあれだけのことを実行しながら、
その結果が現れてきたのはビル・クリントン氏の時代でした。
レーガン氏もサッチャー氏も、
この点で言えば非常に気の毒だと思います。
先に保護されている産業から失業者が大量に出ます。
その痛みを伴うことを覚悟しなければ
「成長戦略」などと言えたものではありません。
日本の政治家もこの前提を理解した上で、
成長戦略の効果は10年以上先であり、
政治家としては討ち死にする覚悟で
取り組まなければ何も実現しないと思います。
日本には、ドイツのシュレーダー氏、英国のサッチャー氏、
米国のレーガン氏などに匹敵する政治家は見当たりません。
安倍首相は最も悪い事例です。
耳当たりのいいことばかり言って、
100年前の経済学で金利とマネーサプライで
何とかできると思っています。
これまで安倍首相からの個人攻撃をおそれて、
日本のマスコミはほとんど批判的な記事を書いていませんでしたが、
ようやく日経新聞が一石を投じたというところでしょう。