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大前研一ニュースの視点

三菱重工業/韓国ハンファグループ/ホテルオークラ/2030年冬季五輪 ~反省を活かした賢明な意思決定

・三菱重工業 防衛費増額「前向きに捉えたい」
・韓国ハンファグループ 大宇造船海洋買収へ本契約
・ホテルオークラ 運営ホテル数を150カ所に拡大
・2030年冬季五輪 今後の招致活動を見直す方針



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▼日韓の軍事産業にそれぞれ大きな動き
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三菱重工業の泉沢正治社長は先月19日、
岸田政権が
今後5年間の防衛費を
43兆円に増額することについて、
「前向きに捉えたい」
との考えを示しました。

三菱重工業は
自衛隊向けの
戦闘機や潜水艦などを手がけており、
日本、英国、イタリアによる
航空自衛隊の
次期戦闘機開発プロジェクトにも
参加する計画です。

泉沢氏は
「増額で予見性が高まることにより
事業の継続性が高まることは
非常に良いことだ」
と語りました。

絶対に言ってはいけない言葉でした。

他にも様々な要因はありますが、
戦前の産官学で一体となった
軍事産業も、
太平洋戦争を引き起こした一因です。

三菱重工業は
その中心だった企業であり、
そのトップは
歴史の重い十字架を
背負っている自覚があるべきです。

それが防衛費の増額で
浮かれているようでは、
あまりにも
危なっかしいという印象です。

また、43兆円の原資は
税金だという認識にも
欠けています。

経営の視点からは
歓迎すべき傾向であったとしても、
こういう時には
黙っているべきでした。

今は左派が政治的に弱いので
あまり叩かれていませんが、
本来であれば
朝日新聞的な
戦後民主主義の理念に基づいて
大問題になる発言です。

三菱グループ内でも、
肝を冷やした人が
いるのではないでしょうか。

許されているうちに
タガを締めておくべきだと
思います。

三菱グループには
金曜会という
社長同士の集まりがあるので、
アドバイスしてくれる
重鎮がいることを願います。

一方で、
韓国の軍事産業にも
大きな動きがありました。

韓国財閥大手のハンファグループは
先月16日、
造船世界3位の
大宇造船海洋を
買収することで合意したと
発表しました。

買収額は2兆ウォン、
およそ2,100億円で、
ハンファグループは
大宇造船の艦艇や
潜水艦事業を取得し、
防衛装備事業の拡大を
目指す考えです。

何回か計画されては
頓挫していた買収案でしたが、
ついに合意に至りました。

大宇造船は
軍事用の艦艇や潜水艦を造る技術を
持っているため、
この買収で
ハンファグループは
一気に軍事産業の中核に
躍り出た形になります。



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▼ノウハウ不足のままでは難しい
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ホテルオークラが
2030年までに
国内外で運営するホテルの数を、
現在のおよそ2倍となる
150カ所に拡大する見通しが
明らかになりました。

東南アジアなど海外を中心に
拠点数を増やす計画で、
「新型コロナ禍などで
事業環境の予測が難しくなる中、
海外と日本のホテル比重を
同水準にすることが
安定した収益につながる」と
判断したとのことです。

日本のホテルは
世界化を目指しては
失敗を繰り返しているような
印象があります。

オークラのアムステルダムは
利用したことがありますし、
上海にも
オークラのホテルがありますが、
シャングリラ等の華僑系のホテルが
台頭したアジアでは
見劣りしてしまいます。

プリンスホテルが
国内で従業員を削っている今、
海外進出と言われても
説得力に欠けます。

日本のホテルは
華僑系のホテルや
世界三大ホテルに比べて、
ノウハウの部分が
固まっていないという問題が
あるように思います。

ここが解決しない限り、
私としては
日本のホテルの海外進出には
期待できません。



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▼反省を活かした賢明な意思決定
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2030年冬季オリンピックの開催を目指す
札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は
先月20日、
今後の招致活動を見直す方針を
明らかにしました。

東京オリンピックの
汚職談合事件を受け、
「国民の理解を得るには、
大会組織委員会が特定の代理店に
多くの業務を
丸投げしているように見える構造から
決別する必要がある」と
指摘するとともに、
「時限的な組織委員会が
運営に必要なノウハウを確保できるか、
そのために必要なコストなどを
しっかり検討していく必要がある」
との考えを示しました。

婉曲な表現をしていますが、
疑惑まみれの電通を使わずに
招致活動を行おうとしたものの、
自分たちだけではできないと
判断したということです。

電通がそれだけ
力を持っていたということでも
ありますし、
自治体がそれだけ
丸投げしていたということでもあります。

東京と同じ過ちを繰り返すくらいなら、
招致活動が本格化する前に、
一回手を下ろすのは
英断だと評価します。

電通を外すからといって、
別の広告代理店に丸投げするのでは
意味がありません。

自治体が自分たちの力で
招致できるようになることが
正しい道です。

札幌市が自分たちの力だけで
招致できるようになるまで
どれくらいかかるかは分かりませんが、
その間に隙を縫って
長野が再び手を挙げるのも
面白いと思います。

はたして日本の自治体が
それだけのノウハウを獲得できるのか、
注目しています。

 

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