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大前研一ニュースの視点

対中輸出規制/ナトリウムイオン電池/米中関係/ブラジル・エンブラエル ~日本企業も苦しめる行き過ぎた輸出規制

・対中輸出規制 半導体製造装置など日本の輸出規制是正求め
・ナトリウムイオン電池 電池関連特許で中国が首位
・米中関係 中国企業、米市場に秋波
・ブラジル・エンブラエル 2025年に年間100機納入体制へ

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▼日本企業も苦しめる行き過ぎた輸出規制
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中国商務省は4日、
日本政府が決定した半導体製造装置など
23品目の輸出規制に対し、
是正を求めると発表しました。

日本の規制が
「中国企業の合法的な権益だけでなく、
日本企業に損害を与え、
世界的なサプライチェーンの安定にも
悪影響を及ぼす」と指摘したものですが、
一方で、
中国政府がレアアースを使った
高性能磁石などの製造技術の輸出を禁止する
検討に入ったこともわかっています。

日本には東京エレクトロンなど、
半導体製造装置の技術を得意としている
企業があります。

オランダにはASMLのような
回路を刻む技術を持った企業があり、
中国が半導体を生産するためには
こうした企業の製造機械が不可欠です。

それが輸出規制で止められてしまったために、
報復として中国からも日本が必要とする
製造技術が止められようとしています。

日本は米国からの圧力に応じざるを得ない形で
輸出規制に踏み切ったわけですが、
私としてはやりすぎだと考えています。

中国もサプライチェーンの一部であり、
中国の半導体を輸入して日本でモジュールを作り、
中国に輸出しているような日本企業も沢山あります。

中国製の半導体の生産・流通が阻害されると、
そうした日本企業が打撃を受けることになるのです。

輸出規制が、
天に向かって唾するような状況に
既になっていると言えるでしょう。


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▼次世代電池の主流がどれになるかに注目
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日経新聞が
過去10年間の電池関連の特許を
国別で集計したところ、
首位は中国の5486件で世界全体の5割を
占めたことがわかりました。

特にリチウムイオン電池の
後継とされるナトリウムイオン電池については、
特許の数や、他の特許に引用された質を含めた指数でも、
米国や日本の2、3倍の評価だとのことです。

次世代の電池として、
リチウムイオン電池を改善していくのか、
より普遍的に存在するナトリウムをつかった
ナトリウムイオン電池が主流になるのか、
全固体電池が主流になるのかが問題です。

ナトリウムイオン電池が主流になれば、
中国が主導権を握ることになりそうですが、
まだ決定的な動向は現れていないので
パニックになる必要はありません。

日本は全固電池に注力していて、
関連する特許数はトップのトヨタが
2位を大きく引き離しています。

2位以下も、パナソニック、
出光興産、サムスン、村田製作所という顔ぶれで、
世界ベスト5の中の4社が日本企業です。

全固電池が主流になれば、
安全性がかなり高まるうえに、
日本企業が世界をリードしていく形になります。


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▼日本も使った政治的摩擦の中での米国進出の秘策
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日経新聞は9日、
「中国企業、米国市場に秋波」と
題する記事を掲載しました。

これは米中関係の悪化にもかかわらず、
米国進出や生産能力の拡大を模索する
中国企業が増えていると紹介しています。

政治的な緊張により、
米国の取引先が供給網から寸断されるリスクを
避ける狙いですが、
中国政府の政策が予測できないことや、
中国での製造コストの上昇及び企業への
規制が増えていることなども要因とのことです。

中国を排斥するような動きが目立つ米国ですが、
中国は日米貿易戦争の頃の日本企業のやり方を
模倣しているようです。

日本も当時は中央政府から冷遇されていましたが、
州知事や市長のところに赴いて
雇用と経済効果をアピールすると
歓迎されることが多々ありました。

中央政府と地方とで方針が違うことは
中国でも見られますが、
米国の場合は顕著です。

中国もそれに気づき、
州や市のレベルで協力しようとしているようです。

このやり方についてはちょうどいま、
YKKの吉田忠裕相談役が「私の履歴書」で
書いています。

ジョージア州に進出するために、
当時州知事だったカーター元大統領と
交渉を重ねたそうです。

当初は軋轢もあったようですが、
今では富山のご自宅を訪ねてくるほどに
いい関係を築いたというエピソードが綴られています。

カーター氏はピーナッツ農家で、
ジョージア州は繊維の街でした。

対日貿易政策においても、
カーター氏は日米繊維交渉に取り組み、
また日本のピーナッツ市場を
解放させた人でもあります。

その結果、
日本市場には米国産ではなく
中国産のピーナッツが大量に流入し、
しかし、結局は千葉産のピーナッツが
競争に勝ち残ったという経緯があります。

カーター氏はYKKの米国進出には
多大な貢献をしましたが、
ピーナッツ産業に関しては
フォローが足りなかったようです。


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▼夢敗れた日本を尻目に躍進
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航空機世界3位のブラジルの
エンブラエルのゴメスネト最高経営責任者(CEO)が
日経新聞のインタビューで、
150席以下の小型旅客機について、
2025年をめどに年間100機の納入体制を整える方針を
明らかにしました。

また、最新機種については、
中国当局から型式証明を取得し、
中国での販売拡大の下地を整えているほか、
納入実績のないインドでも航空会社と
商談を進めているとのことです。

一方で、
日本が誇る三菱重工の
三菱リージョナルジェット(MRJ)は、
同じクラスで航空機を開発して
惨敗してしまいました。

米国での型式証明すらもとれませんでした。

エンブラエルは実績もあり、さすがの強さです。

日本がまさにやりたくてできなかったことを
順調に進めており、私としては悔しさが募っています。

 

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