そこが知りたい情報チャンネル

このブログは、自分にとって参考になったことや活用できると思った記事をUPしていきます。

大前研一ニュースの視点

新しい資本主義/マイナンバーカード/キャッシュレス決済/次世代クレジットカード ~ようやく動き出した金融分野の改革

・新しい資本主義 「人への投資」を3本柱で推進
・マイナンバーカード 現行の健康保険証廃止へ
・キャッシュレス決済 「ことら」がサービス開始
・次世代クレジットカード ナッジと資本業務提携



─────────────────────────
▼「人への投資」に必要な2つが欠けている
─────────────────────────
岸田首相は12日、
5年間で1兆円を投じる
「人への投資」について、
3本柱で進める方針を示しました。

これは転職者や副業をする人を
受け入れる企業への支援制度を
新設することや、
働き手のリスキリング(学び直し)に
取り組む企業への助成を
拡大することなどを
打ち出したものです。



労働移動の円滑化により、
賃金とやりがいを高めて
生産性を向上させ、
さらなる賃金上昇に繋げる考えです。

この施策が功を奏するためには
2つのことが必要なのですが、
どうも理解されていないように
思います。



ひとつは、
労働移動に政府が責任を持つことです。

企業が本気で生産性を改善したら、
労働力が余るのは必然ですから、
余剰人員の責任は
政府が持たなければ、
企業は本気で取り組んでくれません。



ドイツのシュレーダー首相が行った
アジェンダ2010という改革は、
就業意識向上や雇用の柔軟化など
労働制改革も目指したものです。

日本は企業に
雇用の維持を押し付けたままで、
企業の中で
リスキリングをさせようとするので、
企業の生産性向上も人材の開発も
うまくいかないでしょう。



もうひとつは、
21世紀に通用するスキルを
身につけさせることです。

ハローワークの公的な職業訓練では、
溶接や左官、板金など、
いまだに明治時代と変わらない労働者像で
用意しているとしか思えないメニューが
そろっています。



また、
経済雑誌が提案するような
リスキリングの内容も、
20世紀後半から進歩していません。

当時はプロフェッショナルが
必要とされた時代で、
「学び直す」と言えば
建築士や司法書士などの
「資格を取る」ということでした。



ですが、21世紀はAIの時代です。

資格を持った人材の価値は、
法律を知っていて
正しく判断、適用できることですが、
このような正解がある仕事は
どんどんAIに
置き換えられつつあります。



既に宅建などは
資格を所持していても
月給が数千円上がるだけの価値に
暴落しています。

努力して取った資格が
二束三文の価値しかないのなら、
リスキリングは失敗と
言わざるを得ません。



政府が人材の放出に
責任を持つこと、
21世紀に必要とされるスキルを
学ばせること。

この二つが
成功のカギとなるわけですが、
そこで問題になるのが
「何が21世紀に必要とされるのか」
という点です。

BBT大学はまさに
そのようなスキルを学ぶための
大学です。

 




─────────────────────────
▼「普及しない理由」を無視した勇み足
─────────────────────────
政府は2024年秋をめどに、
現行の健康保険証を
原則廃止する調整に入りました。

政府は2021年10月に
マイナンバーカードを
保険証として利用する
「マイナ保険証」を導入しており、
紙の保険証の廃止後は
そちらに一本化する考えです。



これは残念ながら
上手くいかないと考えます。

河野太郎デジタル相は
決めるべきことはきっぱりと断言して
進めてくれるので、
私が好きなタイプの
政治家ではあるのですが、
今回の動きは勉強不足のため、
パフォーマンスで
終わってしまうでしょう。



マイナンバーカードに
一本化するメリットは
たくさんありますが、
なぜ普及が進まないのかを理解し、
課題を修正してから
一本化を行うべきでした。

マイナンバーカードの普及が
進まない理由は、
手続きの煩雑さにあります。



わざわざ役所に行って取得しても、
生体認証がないため、
5年ごとに
更新する必要があります。

現在サポートが必要な高齢者の
マイナンバーカードの取得が難しいことは
もちろんですが、
現状は問題なくても
5年後には更新が難しくなる方が
毎年発生します。



健康保険証が廃止されると、
認知症で
マイナンバーカードを
更新していなかった方などの保険診療は
断らざるを得ません。

そんなことをすれば、
マスコミはこぞって
「人情に欠けるお役所仕事だ」と
お涙頂戴のキャンペーンを張り、
結局従来の健康保険証も使えるよう
妥協するしかなくなります。



また、過渡期の問題もあります。

マイナンバーカードに
保険証を一本化した場合、
医療機関側に読み取り機が
必要になります。

もし一本化までに
読み取り機を用意できなかった場合も、
従来の保険証を使わざるを得ません。



他国の共通番号モデルを見ても、
行政・民間で
共通の番号を使うところから、
プライバシー侵害を理由に
導入していないところまで様々です。

ですが、
日本では一本化を進めていく方向で
決まりました。



ならば少なくとも
生体認証で更新の必要を無くすなど、
利便性を高めた設計をするべきでした。

河野デジタル相の決断で
一本化は進むと思いますが、
必ず流れに乗らない層、
乗れない層が現れます。

彼らを切り捨てられるのならば
それも一つの形ですが、
日本という国は
そこまでの強硬策は取れず、
結局後戻りしてしまうと考えます。

 





─────────────────────────
▼ようやく動き出した金融分野の改革
─────────────────────────
3メガバンクやりそな銀行などが出資する
小額決済インフラ「ことら」が
11日にサービスを開始しました。

「ことら」に対応した銀行間であれば、
10万円以下の個人間送金が
手数料無料、
もしくは小額で送金できるサービスで、
口座番号だけではなく
携帯電話番号やメールアドレスでも
送金できるとのことです。



また、
伊藤忠商事は12日、
次世代型クレジットカードサービスを手がける
ナッジと資本業務提携したと
発表しました。

「ナッジ」は独自の審査方法により、
アプリのみで
クレジットカードを発行できるほか、
決済を通じて
好きなスポーツチームやアーティストを
支援する仕組みなどがあり、
若年層を中心に
利用者が拡大しているとのことです。



金融関連の改革も
ようやくここまできました。

ここから更にフィンテックで
経済を活性化するためには、
クレジットカードの
手数料を引き下げる必要があると
考えます。

現在は3~4%が手数料として
クレジットカード会社に
支払われていますが、
これを0.3~0.4%にまで
引き下げられれば理想です。



米国は
銀行主導のクレジットカード社会なので、
手数料は日本と同程度のパーセンテージですが、
中国では既に手数料が0.4%程度の水準にまで
引き下げられています。

アントフィナンシャルなどの
巨大なフィンテック企業があるから
できることですが、
日本もこの水準を
目指してほしいと思います。

 

 

-大前研一ニュースの視点