日銀マイナス金利を導入 (6)民間の資金を国が吸い上げるデフレ的政策
2019/01/28
日銀がマイナス金利を導入して1か月以上が経ちました。
導入のタイミングや方法については異論はありましたが、
マイナス金利そのものに私は反対していませんでした。
「まあ、何でもやってみたら?」という気持ちで観察していたのです。
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しかしこれはかなりデフレ的な政策ではないか、と思うようになりました。
というのもマイナス金利は国の負担を軽くする代わりに、銀行の負担が重くなります。
銀行はその負担を預金者や借り手に転嫁します。
結局、「民間の資金を国が吸い上げているだけ」のように思えるのです。
これではますます民間セクターが疲弊してしまいます。
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銀行はこれまで、日銀の当座預金にカネを預けると利息をもらえました。
この金利がマイナスになると逆にカネを取られるようになります。
銀行は日銀から兆単位のカネを押し付けられるのですが、
これを日銀に返して預かってもらうと「ブッ高い金庫代」を取られるようになるのです。
そこで銀行は国債を買って金庫代を節約するのですが、
みんなが争ってそれをやるために債券価格が上がり金利は下がります。
それで「ブッ高い金庫代」を払うのと変わらないぐらいのマイナス金利になってしまったのです。
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先にマイナス金利を導入した欧州では、収益源を減らされた銀行は
ATM手数料引き上げなどで穴埋めしたそうです。
つまり上昇したコストを顧客に転嫁した、ということ。
さらに銀行の収益源が減って体力がなくなれば、積極的にリスクを取れなくなります。
すると貸し倒れの可能性がある企業への貸し出しは行わず、国債ばかり買うようになるでしょう。
マイナス金利はその狙いとは裏腹に、民間への貸し出しは増えるどころか減るということです。
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さらに奇妙なことですが、マイナス金利により政府は「国債発行益」を得ることになります。
普通は額面100円の国債を発行するとき、国はそれ以下の価格で売って償還するときに100円で高く買い戻します。
しかし金利がマイナスということは、最初にたとえば110円で売って100円で安く買い戻せるのです。
その期間の利払い(クーポン)を入れても、国にはカネが残ります。
これが国債発行益と呼ばれます。
つまりマイナス金利で国が借金するとカネがもらえるということです。
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するとマイナス金利は結局、
国が金融機関からカネを吸い上げる → 金融機関が顧客からカネを吸い上げる
という構図になり、国が民間からカネを吸い上げていることになります。
日銀が銀行をしばき、銀行が顧客をしばく「連鎖SMプレイ」なのです。
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マイナス金利は景気回復につながりそうにありません。
これはむしろデフレ的政策で、日本も欧州も取りやめたほうが良いと思います。
私は最初からこれを指摘していたわけではないですから、日銀を責めたりしません。
「どうやら逆効果みたいだ」とわかれば、意地を張らずにやめてしまえば良いでしょう。
そこが自由主義国家の素晴らしいところです。
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