LIXILグループ/TKP/日本電産~TKPとリージャスのシナジー効果は期待できるか
・LIXILグループ 創業家・潮田氏が全役職辞任へ
・TKP 日本リージャスHDを買収
・日本電産 オムロンオートモーティブを買収
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▼LIXILグループの経営は、誰がやるにしても非常にむずかしい
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LIXILグループは先月18日、
潮田洋一郎会長兼CEOが、5月末に取締役を辞任し、
6月の定時株主総会を経て、会長とCEOからも退くと発表しました。
会見で潮田氏は、2019年3月期の連結業績が赤字に転落する要因は、
前CEO瀬戸氏の業務執行にあると強調。
自身が全役職から退くことで
瀬戸氏を任命した責任をとるとしています。
今期約500億円の赤字を計上した原因は、瀬戸氏を招く前にあり、
全てを瀬戸氏の責任とするのは間違いだと私は思います。
潮田氏は、自身の38年間の取締役人生の中で、
最大の失敗は瀬戸氏を招いたことだと述べています。
しかし、潮田氏が手がけたイタリアの
Permasteelisa S.p.A社の大型買収も結果として大失敗でしたし、
やはり瀬戸氏だけをクローズアップするのは違和感があります。
機関投資家はLIXILの経営状況に鑑み、
臨時株主総会を要求していましたが、
潮田氏・山梨氏の取締役退任が決まったので、
定時株主総会だけで収まるかもしれません。
ただし、大株主の状況を見ると、
アクティビストファンドが臨時株主総会を要求し、
潮田氏を追求する可能性もあると思います。
ちなみに、潮田氏の信託財産を扱う野村信託銀行の持分比率は
約3%に過ぎませんから、プロキシーファイトになった場合、
ほとんど力を持っていないと言えます。
また従業員持ち株会の2%も、
潮田氏を支持する可能性も低いと私は思います。
このような状況を受けて、
潮田氏は本社の移転やシンガポールの企業による買収など、
色々と画策しているという報道もあります。
しかし、今の状況で潮田氏や山梨氏が
状況を打開することは難しいと感じます。
とは言え、瀬戸氏が返り咲いたとしても、
この会社を経営できるのか?というと疑問が残ります。
LIXILは「ヤマタノオロチ」に例えられます。
頭がたくさんあって、制御不能ということです。
国内企業の合併だけでも未だにしっくり来ていないのに、
縁もゆかりもないグローエなども買収し、
グループ全体としてのまとまりがありません。
この会社の経営は非常に難しく、
まともに経営できる人はほとんどいないと思います。
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▼TKPのリージャス買収に、本当にシナジー効果はあるのか?
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ティーケーピー(TKP)は先月15日、
スイスのIWG傘下の日本リージャスHDを買収すると発表しました。
5月末までに発行済み株式の1万3700株を467億円で取得し、
完全子会社化とするものです。
TKPはレンタルオフィス市場での展開を加速する考えです。
TKPは売上も営業利益も驚くほど伸びています。
その状況からも、買収はもちろん可能ですが、
私はやや懸念しています。
というのは、TKPとリージャスではビジネスモデルが異なるため、
シナジー効果が本当に期待できるのかわからないからです。
TKPは貸会議室を展開しています。
料飲・ケータリングや宿泊などオプションをつけて
付加価値を提供しているのが秀逸ですが、
ビジネスモデルの根幹は会議室を貸すことです。
一方、リージャスのビジネスモデルは
WeWorkと同様にレンタルオフィスです。
一括して不動産を借りておき、
煩雑な不動産契約などを省き、それを貸し出します。
ネットで簡単に申し込めて非常に手軽で、特にスタートアップ企業や
フリーランスなどにはありがたいサービスです。
しかし今、レンタルオフィス市場の代表的な存在である
WeWorkに対して、三井不動産、住友不動産、森ビルなどが
大いに警戒していて対抗する動きを見せています。
乱戦模様になってきていて、今後も今までと同じような収益が
見込めるのか疑わしい状況になりつつあります。
また、TKPの売上が約300億円ですから、
リージャスはほぼ同程度の規模と言えます。
シナジー効果は一部あるにしても、
この点からもややリスクが高い買収だと感じます。
貸し会議室市場は、TKPがユニークに開発してきた市場ですが、
レンタルオフィス市場はそうではありません。
伝統的な企業がひしめきあうなど競合が非常に多い市場です。
今回のリージャスの買収も吉と出るか凶と出るか、わかりません。
それほど簡単にシナジー効果を期待できる状況ではないと
私は見ています。
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▼1000億円の買収額は高すぎる。永守氏には何か秘策があるのか?
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日本電産は先月16日、オムロンの子会社で、車載電装部品を手がける
オムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収すると発表しました。
買収価格は約1000億円を見込み、
これにより日本電産は重点成長事業と位置づける
車載事業を強化する考えです。
100社以上の企業買収で1つも失敗したことがない、という
日本電産の永守氏ですから、今回の買収も問題ないのだと思います。
しかし、単純計算すると買収額を回収するまでに数十年かかるので、
この点をどのように見ているのか、正直私には理解できません。
日本電産は売上高2兆円を目指して成長していますが、
本業の精密小型モーターが伸び悩んでいます。
そこで、M&Aで特に成長著しい車載などの事業に1000億円を投資し、
さらに大きく伸ばしていこう、ということでしょう。
オムロンオートモーティブの利益は30~40億円程度です。
永守氏が経営するとなると、さらに利益を出せるのかもしれませんし、
あるいは永守氏には外から見えない別の秘策があるのかもしれません。
また、逆にオムロンの立場から見ても、
私には売却した理由がピンときません。
これから先、IoTが進み、自動車そのものがサイバー化していく
時代において、今回のオートモーティブが持つ技術や資産は
重要になってくると思います。
なぜ、その事業を今手離してしまうのでしょうか。
永守氏の狙いもオムロンの売却理由も、現時点で理解できませんが、
今後どのような展開を見せてくれるのか注目したいと思います。