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大前研一ニュースの視点

人口動態統計/消費増税/ベンチャー投資/デジタル課税 ~市場が利益を得られる「新しい枠組み」

・人口動態統計 1-7月の出生数51万8590人
・消費増税 キャッシュレス急拡大
・ベンチャー投資 官民ファンド、遠い累損解消
・デジタル課税 国際課税の枠組み案公表

 

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▼日本の人口減は構造的な問題
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厚生労働省の統計によると、
2019年1~7月の出生数は前年同期に比べて5.9%減り、
51万8590人となったことがわかりました。

2016年に100万人を下回ってからわずか3年で、
90万人を割る公算が大きくなっているもので、
第二次ベビーブーマーや団塊ジュニアと呼ばれる
世代の女性が45歳以上になったのに対し、
20代、30代の女性が減少していることなどが
要因と見られています。

 

これは日本にとって深刻な問題です。

2025年までに700万人の人口減が予想されていて、
これは埼玉県の人口に匹敵します。

2005年に死亡数が出生数を上回り、
それ以降も死亡数は増加を続け、
出生数は減少し続けています。

 

日本の人口減は物理的な現象と言えます。

また婚姻件数も減っていて、
出生年齢が上がっている点も心配な要素です。

 

母の年齢別出生数を見ると、
かつては25~29歳の年齢層が70万人を超える出生数で
トップでしたが、今では30万人弱まで大きく減っています。

現在は30~35歳の年齢層が最も多くなっています。

日本は戸籍の問題があり、事実婚を阻害しています。

日本の人口減は構造的な問題であり、
政府が正面から取り組む必要があると思います。

 

例えば、フランスは結婚しないで子供を生む女性が非常に多いです。

こうした状況を許容する少子化対策によって、
フランスは1994年には1.65まで下がっていた出生率を、
2010年には2人を超える水準まで改善させています。

日本でも、フランスと同じくらい
抜本的な対策を打つ必要があると思います。

 

 

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▼まだ日本はキャッシュレス化後進国の水準
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日経新聞は8日、
「キャッシュレス急拡大」と題する記事を掲載しました。

1日の消費増税にあわせて政府主導で始まった
キャッシュレス決済のポイント還元制度を追い風に、
現金を使わない決済が急増しています。

しかし、還元される時期が各社で異なるなど、
様々なキャンペーンが乱立して消費者にわかりにくいといった
課題もあり、定着には一段の周知が必要としています。

もちろんわかりやすく周知することは必要ですが、
それ以前の問題があります。

日本のキャッシュレスが6割増加したと言っても、
全体のわずか30%弱に過ぎず、まだまだ低いということです。

キャッシュレス決済が96%になっている韓国はもちろん、
いまだにインドより低い水準です。

まずこの認識を持って、もっとキャッシュレス決済の割合を
増加させていくことを考えるべきでしょう。

 

 

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▼官民ファンドの実態は「官」ファンド、成功するわけがない
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日経新聞は7日、
「官民ファンド、遠い累損解消」と題する記事を掲載しました。

スタートアップ企業などに投資して産業を振興する
官民ファンドで、コンテンツ分野や農林水産分野など
4機構の累積損失が膨らんでいて、2018年度末までの1年間だけで
6割増えて合計367億円になりました。

事業の実態を知らない役員が
出資先に無理な要求を突きつけているなどの問題も発覚しており、
官民ファンドが適度な利益を出していくためには
長期的に取り組む人材が欠かせないとしています。

 

経産省のクールジャパン機構は179億円、
農水省のA-FIVEは92億円の累積損失を計上しています。

彼らは予算を確保するのは上手かもしれませんが、
ビジネスセンスやビジネスの判断能力はありません。

だから、こんな累積損失を計上する結果を招くのだと私は思います。

産業革新機構にしても全く同じです。

官民ファンドなどと言われますが、
実際のところは「官」の力が強く、「民」の影響力はありません。

「官」主導になっているため、出資した値よりも安い場合には
上場させない、といったおかしなルールも適用されています。

 

私も彼らと関わった経験がありますが、
最後に助けてくれる味方なのか、それとも手を離して
見放す敵なのかわからない、といった印象があります。

最初は良い顔をしていても、
最終的に「恥をかきたくない」という行動が多いと感じます。

ベンチャー投資には、特にリスクがつきものです。

リスクを低減するには、選別能力や経営者を見極める
能力が必要ですが、彼らにはほとんどありません。

 

ゆえに、官民ファンドという名の
「ほぼ官ファンド」にベンチャー投資を任せること自体に、
大きな問題があると私は思います。

 

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▼デジタル課税=外形標準課税を世界的に合意すべき
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経済協力開発機構(OECD)は9日、
GAFAなど巨大IT企業を念頭に置いたデジタル課税について
国際ルールの原案を公表しました。

本社や工場などの拠点がなくても
利用者がいる国で一定の売上があれば、
それに応じて法人税を課せられるようにするもので、
来年1月に大枠合意し来年末までに正式合意を目指す考えです。

これは、外形標準課税という方法です。

サイバー企業は様々な国でサービスを展開します。

 

例えば、ウーバーなら、法人税率が低いオランダに
世界の事業を統括する本社を置き、それにタックス・ヘイブンの
バーミューダを組み合わせて節税しています。

それに対して外形標準課税では、日本で操業している
割合を算出し、それに比例して再配分をします。

つまり、操業の割合=外形として課税する、というわけです。

全てのビジネスはお客さんがいて成立するのだから、
それに比例して利益を払うべき、という考え方です。

 

GAFAなどの他のサイバー企業も、アイルランドと
オランダを組み合わせるなどして節税をしていますが、
同様の考え方を適用するべきだと私は思います。

利益を得る権利があるのは、市場です。

現在の状況では、サービスが提供されている市場ではなく、
税率が安い国が利益を得ています。

正しく市場が利益を得られるような
「新しい枠組み」を固めることは非常に重要ですし、
世界的に合意するべきことだと思います。

 

 

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