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大前研一ニュースの視点

高齢ドライバー/デジタル課税~高齢ドライバーの交通事故割合が高いわけではない

・高齢ドライバー 高齢者専用の免許創設を検討
・デジタル課税 法人税、どこに消えた

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▼高齢ドライバーの交通事故割合は、若者と変わらない
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政府が今月下旬に閣議決定する成長戦略に、
高齢ドライバー専用の新たな運転免許を創設する見通しが
明らかになりました。

75歳以上を対象に自動ブレーキなどの安全機能がついた車種のみ
運転することができることなどを検討するもので、
高齢ドライバーによる事故が相次ぐ中、対応を急ぐ考えです。

高齢ドライバー用の制度に強制力はない予定なので、
全体として「緩い」ものになると思います。

こうした高齢ドライバー向けの対策は早く実施すべきですが、
過度に高齢ドライバーの事故だけを問題視するのではなく、
全体像を理解することが大事です。

まず年齢別の運転免許保有比率は、75歳以上は6.8%に過ぎません。

そして、年齢別の交通事故件数・割合を見ると、
75歳以上の数字は25~29歳とほぼ変わりません。

日本の人口で高齢者の人数が増えているので、
高齢ドライバーの事故が目立つだけで、
事故割合そのものは大きく増えていません。

また、20~24歳、16~19歳という若い年代の方が
事故件数・割合は多いですし、飲酒運転・無免許運転など
無謀なものも多くなっているので、高齢ドライバーだけに
焦点を当てて問題視するのは少々違う、と私は思います。

高齢ドライバーの交通事故は、
いずれ自動運転が普及すれば解決する問題でしょう。

現状の対策で言えば、一律に高齢ドライバーを対象にするよりも、
「注意すべき人」を確認するべきです。

私も高齢ドライバーとして免許更新の際に
試験を受けた経験がありますが、一緒に試験を受けている人の中に
明らかに「この人の運転は危ないな」と感じる方がいます。

普段から周囲の人が見ていても、
こうした人の運転の危うさには気づけるはずなので、
そのときに忠告することができれば良いと思います。

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▼世界で公平に法人税を課税するためには?
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日経新聞は9日、「法人税、どこに消えた」と題する記事を
掲載しました。

これは2000年代までは、
企業の利益に比例して法人税の負担額が増えていたのに対し、
2010年以降はその比率が低下していると紹介。

多くの企業が知的財産権を税率の低い国に移しているのに加え、
経済のデジタル化でサービスの利用やお金の流れが
見えにくくなっていることが要因としています。

最近、日経新聞はデータをもとに
問題提起する記事を掲載していますが、
この記事は非常に良い分析をしていると思います。

政治家が企業人を喜ばせるために、法人税率を引き下げ、
本社機能を移してもらう動きが続いています。

日本でも、2007年から2018年で税引前利益は若干増加したのに、
企業の税負担額は減少するという事態が起きています。

かつて企業の税負担額は30%を超えていましたが、
今では20%程度に下がっています。

世界的にも法人税の減税競争は激しさを増しています。

製薬会社など多くの企業が本社機能を置いている
アイルランドが12.5%と低い水準になっていて、
スイスは20%、英国、チェコも20%を下回る水準で
企業を呼び込もうとしています。

かつて40%を超えていた米国と日本も30%を下回る水準まで落とし、
イタリアも同様に30%以下になっています。

また以前は50%を超えていたドイツでさえ、
30%程度に落とさざるを得ない状況になっています。

欧州の企業では、法人税率が高いドイツから
本社機能をスイスやオランダに移しているところが多く、
米国の企業はアイルランドへ向かうところが
比較的多くなっています。

その中でもGAFAは、オランダとアイルランドで
税法上の仕掛けを利用して、実質的に税金がかからないような
体制をとっています。

また、ウーバーは本国で利益を出さないようにして、
オペレーションをオランダに移し、
さらにタックスヘイブンの国を利用しています。

創業したときから、税金をなるべく支払わない
仕掛けを作っています。

このように「ちょっとしたテクニック」を使うだけで、
ある国には税金が納められないとなると、
不公平であり大きな問題です。

これを解消するためには、本社機能がある場所・国に関係なく、
全世界の利益に対してオペレーションの大きさで比例配分して
課税する方法しかありません。

たとえば、Amazonなら全世界における
日本のオペレーションの割合を算出し、
全世界の利益からその割合に応じて、日本で納税してもらいます。

これを「外形標準課税」と言います。

先日開催された、G20の財務相・中央銀行総裁会議でも
この問題はテーマになりました。

結論は出ていませんが、世界的に解決すべき
大きな課題であることは間違いないでしょう。


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