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週末だけのグローバル投資コラム

やはり米中協議は物別れに (9)平和の儀式が終わり、また交渉が始まる

G20と米中首脳会談は穏やかに終わりました。

結果は「米国は関税引き上げを一時ストップし米中交渉を再開する」
というもの。

香港・南シナ海人工島軍事化・尖閣・北朝鮮非核化・拉致などは
ほとんど議題になりませんでした。

「習近平さん、ホントに来るの?」
と言い続けていた弊社の予測は外れたことになります。

私が考えるよりもG20は儀式的な場であり、
議論や問題解決の場ではなかったようです。

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ただし米中貿易戦争を「一時休戦」と評価するのは誤りです。

今回は第四弾の追加関税3000億ドル(約33兆円)が停止されただけ。

第三弾の2000億ドル(約22兆円)に対する25%の関税は生きているのです。

つまり米国が制裁を続けた状態で交渉が再開されるということ。

ここで時間稼ぎやちゃぶ台返しをすれば、
すぐにでも第四弾が発動するでしょう。

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「華為(ファーウェイ)に対する制裁を解除」という報道も誤り。

これは中国が会談終了前に報道し、
親中派が一斉拡散したので誤解した人も多いでしょう。

トランプ大統領は「エンティティリスト(EL)から除外するか商務省が数日中に協議する」と答えただけです。

また「安全保障に関係ない部分は除外する」という条件も、
以前から変わっていません。

現に東芝は5月、華為への出荷をいったん停止した後に
条件を確認して再開しています。

つまりG20前と何も変わっておらず、
トランプ大統領は譲歩も妥協もしていないということです。

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仮に米国が華為への制裁をこのタイミングで解除したらどうなるでしょうか?

「だったら最初からやるなよ」とみな思いますし、
根拠そのものが疑われてしまいます。

米国の要請にすぐ応えた民間企業は取引先を失い、
中国政府から報復されるという恐怖だけが残ります。

いつ梯子を外されるかわからないのでは、
米国が同盟国に共同歩調を呼び掛けても効果は薄いでしょう。

面従腹背で足並みが乱れること必至です。

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しかし制裁が拡大される可能性こそあれ、解除される可能性はほぼゼロです。

中国企業に対する技術流出は少なくとも2007年から問題視されており、
議論を尽くした上で始めたことだからです。

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ファーウェイ疑惑、10年以上前から
古森義久 Japan In-deapth 2019/1/2
https://japan-indepth.jp/?p=43530
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(略)アメリカ側では政府も議会も実はファーウェイに対しては長年、
脅威を受けてきたのだ。

私自身がワシントン駐在の産経新聞記者としてその一端をなんといまから
10年以上も前の2007年10月に報道していたのだ。(略)

米通信企業 中国大手が合併 軍事技術の流出懸念 特別審査へ
2007-10-13・東京朝刊・国際2面

米中通信企業合併「安全保障脅かす」米下院に反対決議案
2007-10-17・東京朝刊・国際2面

中国国有企業 米、広がる警戒「軍事技術盗む」
2012-02-17・東京朝刊・国際面

「対米スパイ工作関与」米下院委、中国通信大手名指し
2012-10-10・東京朝刊・総合1面
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この件に関してはトランプ大統領よりも米議会のほうが強硬です。

親中のイメージが強い米民主党ですら「トランプ大統領は甘い」
と責め立てています。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員はツイッターですかさず釘を刺しています。

「もしトランプ大統領が華為への制裁をひっくり返すなら、
それは破滅的なミスである。

これによって政権は信用を失い、この企業(華為)による脅威を警告しても誰もまともに受け取らなくなる。」

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Marco Rubio
7:34 - 2019年6月29日
https://twitter.com/marcorubio/status/1144977483101593601
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If President Trump has agreed to reverse recent sanctions against 
#Huawei he has made a catastrophic mistake.

It will destroy the credibility of his administrations warnings about 
the threat posed by the company,no one will ever again take them seriously.
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逆に中国側の情報戦はまずまずの戦果です。

シンパを使って「貿易戦争は休戦」「華為制裁は解除」と功績を誇っています。

G20では安倍首相が香港・東トルキスタン・東シナ海のことに言及した以外、
人権や軍事のことで何も言わせませんでした。

代表として日本がそれを言ったことにして、
他国には言わせないように「握った」のかもしれません。

習近平氏のG20参加が日中会談のわずか4日前までずれ込んだのは、
そのあたりを交渉していたからではないかと推測します。

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習近平氏、27〜29日に大阪訪問 G20、米中首脳会談へ
産経新聞 2019.6.23 18:50
https://www.sankei.com/world/news/190623/wor1906230013-n1.html
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中国外務省は23日、習近平国家主席が20カ国・地域(G20)首脳会議に
出席するため、27〜29日の日程で大阪を訪問すると正式に発表した。

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日中首脳会談の要旨
日経新聞 2019/6/27 21:07
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46674680X20C19A6PP8000/
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【海洋安全保障】
首相は東シナ海、沖縄県・尖閣諸島周辺での中国公船の活動に自制を要求。

首相が南シナ海の非軍事化の重要性を指摘。

【香港】
香港政府の「逃亡犯条例」改正案を巡る問題で、首相は「一国二制度」の下で
自由で開かれた香港の繁栄が重要だとの認識を伝達。

新疆ウイグル自治区での人権問題も念頭に、
人権の尊重や法の支配など普遍的価値の重要性を指摘。
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また米国からの圧力が強まる中で、
安倍政権と仲良しアピールができたことは大きなポイント。

安倍首相が習近平氏を国賓として招けば、
次はお返しとして天皇陛下訪中の道筋が開けるでしょう。

そうなれば六四天安門事件と同じパターンで制裁を逃れることができます。

米国から見れば裏切り行為に見えるはずで、
うまく日米離間・日米対立へと誘い込んでいます。

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日中首脳、「正常な軌道」確認へ 習近平氏の来春訪日巡り協議
中日新聞 2019年6月27日(木)
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019062701001504.html

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「トランプ大統領が日米同盟を破棄したがっている」
という報道もその作戦の一環。

ひとつの報道機関が25日に記事にすると、中国シンパが世界に拡散しました。

日本では菅官房長官が、
米国では国務省がそれぞれ否定しなければなりませんでした。

G20前の日米離間策としては大成功だったでしょう。

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確かにトランプ大統領が不満を持っていることは事実で、
それは以前から知られてします。

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- 米国は日本を助ける義務があるが、逆の義務はない(片務契約)

- それなのに費用をあまり負担してくれない(と米国側は感じている)
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しかし同時に、日米同盟を解消するつもりもないとも言っています。

これらを総合すると、「米国が戦う時には自動的に味方になる相互防衛にまで
発展させたい」ということになります。

つまり報道とは真逆で、日米同盟をさらに強化したいのです。

安倍首相はこれに応え、参院選で「改憲」を打ち出すと考えます。

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トランプ大統領は今日、金正恩氏と会って北朝鮮へ足を踏み入れた
初めての現職大統領となりました。

それで何か進展するわけでもないですが、
「仲良しセレモニー」の締め括りとしてはふさわしいのかもしれません。

そして明日からは、議会や軍に突き上げられながらの交渉が再開します。

利益を得た人も、損をした人も、
損したことにすら気付かない人も現実に引き戻されるのです。

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