訪日外国人客・ホテル稼働率・ファーストリテイリング・しまむら~政府は数字遊びではない現実的な問題解決を考えよ
2016/09/25
訪日外国人客:2020年に4000万人目標
ホテル稼働率:都市部シティホテルの稼働率 全国平均79.9%
ホテルの容積率:建物の容積率緩和を検討
ファーストリテイリング:3月の国内既存店客数前年同月比8.6%減
しまむら:V字回復の理由は「値上げ」にあった
訪日外国人数増加。数字遊びではなく、現実的な問題解決を。
政府は30日、訪日外国人数を2020年に現在の2倍の4000万人、
30年には同3倍の6000万人に増やす新しい目標を決めたとのことです。
政府は数字を「言うだけ」ですから簡単ですが、これは現状から考えれば不可能な数字です。
まず何よりも宿泊インフラが足りません。
現在、訪日外国人数が2000万人で国内のホテルは埋まっています。
都市部にあるシティホテルの2015年の稼働率は全国平均で79.9%となっています。
宮崎県など一部の県は低下する一方で、大都市圏は上昇し、
稼働率は約9割に達しています。
シティホテルの稼働率も然ることながら、
東京に出張できないほどビジネスホテルの稼働率も上昇しています。
博多に4000人の観光客を乗せたクルーズ船が到着すると、
バス100台ほどで対応する必要があります。
そのバスも調達できない状況があります。
いすゞ自動車などは3000台ずつ年間生産台数を増加させていますが、
万一、状況が変化した時のことを考えると、かつてのバス不況のような
事態を招いてしまいますから油断はできません。
訪日外国人観光客数の推移を見ると、特に去年からの上昇率が凄まじいので、
大きな期待を抱いてしまうのでしょう。
私に言わせれば、10年かけて追加で1000万人をこなせるようになったら、
それだけでも日本は笑いが止まらないでしょう。
2020年までに2000万人、2030年までに6000万人となればフランス並みですから、
まず不可能な数字です。
このあたりの現実をもう少し冷静に見る必要があると思います。
旅行消費額は今後減少するから、現状のまま楽観視できませんし、
その他にも細かい点で色々な問題が想定されます。
外国人観光客を案内する通訳案内士の数も足りません。
これに対して観光庁は「通訳案内士」の国家資格がなくても
外国人相手に有料観光案内ができるよう、法改正を検討する方針を
示しているそうですが「無資格」はあり得ないと私は思います。
通訳案内士は、地理・歴史・法律など問われる知識が広範囲に渡るので、
若干緩和したとしても、ジュニアコース、ビギナーコースなどを設けて対応すべきだと思います。
最大の問題である宿泊インフラについても、国土交通省が、
ホテルの新築や建て替えをする際、同じ敷地面積でもこれまでより
大きなホテルを建てられるよう、建物の容積率を緩和する方針を固めたそうですが、
全く見当違いな施策です。
こんなことをしても、ホテルを建設して、
その他事務所ビルを併設すれば儲かるという事態を招くでしょう。
政府は数字に躍らされることなく、もう少し現実的に物事を捉えて欲しいと思います。
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値上げ戦略に失敗したユニクロ、値上げ戦略で成功したしまむら
ファーストリテイリングが4日発表したカジュアル衣料品店「ユニクロ」の
3月の国内既存店客数は前年同月比8.6%減。
売上高も0.3%減と前年実績を3カ月ぶりに下回りました。
ファーストリテイリングはこれまでにも、数々の困難を乗り越えてきているので、
今回も対処していくと思いますが、なかなか厳しい状況です。
「値段が安くて良いモノ」というのがユニクロのウリでしたが、
それを値上げしてしまったことが裏目に出ました。
その後、値下げしましたが、思うようにお客が戻ってこない状況です。
ユニクロのように「値段が安い」というブランドイメージが定着している場合には、
あまり値段をいじらないほうが良く、逆に、ユニクロほどイメージが定着していないなら、
値上げが上手くいくケースもあります。
東洋経済オンラインは6日「しまむら、V字回復の理由は「値上げ」にあった」と
題する記事を掲載しました。
2015年の秋冬シーズンに売り出しヒットした「裏地あったかパンツ」は、
同社にしては高価格帯にも関わらずヒットし、3年ぶりの営業増益を牽引したとのことです。
ユニクロは対前年比でマイナスになることが多いですが、しまむらは対前年比マイナスが非常に少なくなっています。
同じように値上げ戦略をとりながら対照的な結果になっているユニクロとしまむら。
この違いに注目することが大切だと思います。