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大前研一ニュースの視点

ウクライナ・ザポリージャ原発/欧州ガスパイプライン/日中関係 ~新パイプラインは天然ガス不足の救世主になり得る

・ウクライナ・ザポリージャ原発 IAEA調査団派遣にルートを指定
・欧州ガスパイプライン 8~9か月で稼働可能
・日中関係 台湾問題など約7時間協議



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▼危機回避のためにはロシアの妥協案に乗るべき
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国際原子力機関(IAEA)が
ウクライナ南部・ザポリージャ原発の
調査を求めている問題で、
ロシア外務省高官は、
ロシア側が指定するルートで
現地に入るよう求めました。



IAEAは
ウクライナの首都キーウ経由で
調査団を派遣する計画ですが、
ロシア高官は
「ウクライナ側から原発に入れば
困惑を引き起こす」と
警告しました。
    
プーチン大統領は当初
この問題に強硬な態度でしたが、
ここ数日で態度が軟化し、
第三者の介入に
前向きになってきました。



ここはロシア側の妥協案に乗って、
まずはIAEAの調査を
優先するべきだと
私は考えます。

そこからIAEAや国連が間に立って、
ロシアの占領を
辞めさせるところまでやらないと
危険なままです。



ウクライナへの電力供給を
止めることができるというだけでも
ロシア側に
原発占領のメリットはありますが、
それ以上に、
ウクライナ側からの反撃を防ぐ
「核の盾」としての
利用価値があります。

「核の盾」として使われると、
常に核災害の
大きなリスクがある場所として
残り続けることになります。



また、今のロシア軍では、
なんらかの理由で原発を損傷させたり、
管理しきれずに
事故を起こしたりする
可能性もあります。

ロシア軍がいる限り
何が起こるかわからないというのが、
ザポリージャ原発の現状です。



原発の運営自体は
まだウクライナがやっていますので、
IAEAは視察をしたうえで
安全な運営ができる人に管理を任せ、
ロシア軍には占領を解いてもらう。

そこまでしてはじめて、
ザポリージャ原発の危機的状況は
解決します。

 




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▼新パイプラインは天然ガス不足の救世主になり得る
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スペインのリベラエネルギー担当相は12日、
スペインとフランスをつなぐ
新たなガスパイプラインについて、
ヨーロッパ諸国が同意すれば
8~9か月で稼働できるとの
見方を示しました。

スペイン東部と
フランス南部のピレネー山脈を貫いて結ぶ
およそ200キロメートルの
パイプラインとなる計画で、
ドイツのショルツ首相も
「現在の天然ガス供給状況が
大幅に改善される」と述べ、
スペインやポルトガルなどに
構想の実現を持ちかけたことを
明らかにしました。


    
天然ガス不足の解決策として、
この新パイプラインは盲点でした。

アルジェリアには
大きな液化天然ガス(LNG)基地があり、
スペインやフランスへの
パイプラインが敷かれています。



スペイン・フランス国境の
ピレネー山脈を貫く
パイプラインが完成すれば、
アルジェリアからスペイン経由で
ドイツまで届く形になります。

ドイツは
今までロシアやノルウェーに
天然ガスを依存していたため、
ロシアへの経済制裁で
エネルギーの
深刻な供給不足に陥りました。



しかし、
アルジェリアにも
供給源を分散出来るようになれば、
状況は大きく改善します。

埋蔵量は
これから検証するようですが、
一年以内に新パイプラインができて
埋蔵量も十分あれば、
大きな福音になるでしょう。



ロシアにエネルギーを依存する際は
カントリーリスクが
少なからず存在していましたが、
今回のウクライナ侵攻で
それが顕在化しました。

日本もサハリン2の問題で
被害を受けていますが、
既に動き出しているビジネスに関しては、
無理にロシアを排除せずに
柔軟に対応するのが得策だと
私は考えます。



シェルをはじめとする
外国の企業がことごとく撤退した今、
資源を買う客としての地位を
保っているだけでも
利はあります。

サハリン2は
今までと同じ資本比率で
話が進んでいますが、
これまでに出した資本の扱いが
はっきりしていません。



そのまま新体制の資本として
使えればいいのですが、
新たにゼロから負担しないと
いけないのであれば、
コストとリターンを鑑みて
撤退を考えてもいいと思います。

いずれにせよ、
おそらく来週にはこのあたりの条件が
提示されるはずです。

 




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▼米国への盲従より歴史に立脚した国際関係構築を目指せ
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秋葉国家安全保障局長と
中国共産党の楊潔篪政治局員は
17日、
中国の天津で
およそ7時間にわたって
会談をしました。

その中で秋葉氏が、
中国が日本近海に弾道ミサイルを
落下させたことなどについて
抗議したのに対し、
楊氏は「台湾問題は、
中日関係の政治的基礎と
両国間の基本的な信義に関わる」として
日本側に釘を刺しました。



一方、
昨年10月の日中首脳協議で一致した
「建設的かつ安定的な関係の構築」
については、
双方の努力で実現していくとの認識で
一致したということです。    

日本と中国は
1972年に国交正常化をしましたが、
最近は関係が
おかしくなってきています。



楊潔篪氏は王毅外相より序列が上の、
信頼できる人物です。

その楊氏が、
秋葉国家安全保障局長と
7時間にも及ぶ
協議をしたというのは、
重要な出来事です。



日中の2000年に及ぶ
歴史的な交流があるにもかかわらず、
200年足らずの交流しかない
米国に追従し、
中国との関係を
軽視してほしくないというのが
楊氏の主張で、
私はこの考え方に大賛成です。



遣隋使や遣唐使の頃から
日中の交流はありましたが、
国交が「正常」であった時期でも
両国間の軋轢・衝突は
多々ありました。

一方で非公式・民間ベースでは、
国交がないとされる
時代であっても、
円滑で活発な交易や学問交流が
行われています。



歴史的に「不即不離」の距離感で
安定した関係を築いてきました。

他方、
米国の現状を見てみると、
必ずしも国際秩序の安定に
寄与しているとは言えません。



宣戦布告なしでイラクに派兵した
ジョージ・W・ブッシュ、
ビンラディンが
潜んでいると思い込んで
アフガニスタンに派兵したオバマ、
環太平洋パートナーシップ(TPP)や
北米自由貿易協定(NAFTA)など
今までの国際的な公約を反故にし、
北朝鮮との関係を
いたずらに混乱させたトランプなど、
とても追従することが
得策とは思えない大統領が
大勢います。



さらに、
その横暴なトランプ元大統領が
再度勢力を
取り戻しつつあるという
惨状です。

トップが頻繁に交代し
右往左往する米国に
ただ追従するのではなく、
歴史的な大局観をもって
日中関係、台湾問題を捉える視点。



これを
日本の政治家や官僚も持つべきだと
私は考えます。

王毅外相は
習近平の代理人のような立場ゆえに
強硬な印象を打ち出していますが、
元々は日本大使館にいた日本通で、
こうした歴史観を持っている人物です。



楊潔篪氏は
王毅外相の知性や能力に加えて、
卓越した温かみ、丸みをもった
傑物ですので、
今回その楊氏と
長時間の協議の場を持てたということは、
日本にとって良いことだと評価します。

 

 

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