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大前研一ニュースの視点

三越伊勢丹・東芝・情報通信機器 ~百貨店業界が生き残るには?GINZA SIXが示す新しい方向性

2019/01/29

  • 三越伊勢丹HD 大西洋社長が辞任へ
  • 東芝 LNGでもリスク・・最大1兆円損失
  • 情報通信機器 かつての「電線御三家」、なぜ今絶好調なのか

百貨店業界が生き残るには?GINZA SIXが示す新しい方向性

三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長が3月末で辞任することがわかりました。

大西氏は2012年に社長に就任。

消費者との接点を広げる小型店の積極出店や事業の多角化を
目指した外部企業との提携も推進してきましたが、
消費者の百貨店離れが進むなか成果を挙げられなかった責任を取るとのことです。

私は大西氏が進めていた方向性そのものは正しかったと感じています。

結果が出なかったのは残念です。

1980年代のクーデター劇で有名な三越ですから、
「またお家騒動か」という印象です。

大西氏が辞任したところで、百貨店業界が置かれた状況は変わりません。

百貨店事業という本業だけで回復するのは難しいはずです。

今後も大西氏と同じ方向性で進む以外には道はないでしょう。

伊勢丹新宿本店の売上推移を見ても、「爆買い」で一時的にバブルがきたものの、
百貨店事業は横ばい、下降傾向にあるのは明らかです。

純利益も決して安心できるものではありません。

それでも百貨店事業で利益は出ていますが、
将来それを補える他の事業が育ってきていません。

一方、阪急阪神や高島屋は、百貨店事業以外の多角化に取り組み成果を上げています。

高島屋の定的な利益は、タイムズスクエアを始め不動産業が強いことにあります。

また、三越伊勢丹は百貨店のメイン店がターミナル店ではないのが、
阪急や高島屋と大きく異なる点です。

阪急の梅田や高島屋の名古屋などは大きな利益を上げていますが、
それらに匹敵する店舗が三越伊勢丹にはありません。

ターミナル店ではない店舗の参考事例になりそうなのが、
4月20日オープン予定のGINZA SIXです。

松坂屋跡地にできる銀座エリア最大級となる商業施設で、
早くも銀座の顔になるのでは?と言われています。

今後、GINZA SIXのような店舗が百貨店業界の(ターミナル店ではない)
スタンダードになる可能性は大いにあると思います。

実際、どのようなお店になっているのか、
自分自身で足を運んで見ておくとよいでしょう。

東芝の「底」は見えない。管理体制の甘さが露呈。

毎日新聞は8日、「LNGでもリスク…最大1兆円損失」と題する記事を掲載しました。

これは2013年に当時割安だった米国産LNGを仕入れる契約を結んだものの、
販売先探しが難航していると紹介。

原油価格の高騰などで米国産LNGの価格競争力が失われたためで、
販売先が見つからなければ2019年3月期から損失を計上する必要があり、
経営危機に陥っている東芝への追い打ちになるとしています。

東芝は奈落の底へ突き進み続けています。

1兆円規模で次々と、このようなものが発覚しています。

2兆円の価値はあると言われている半導体事業も売却予定とのことで、
もはや東芝に残るのは、エレベーター事業くらいしかありません。

今回のLNG事業の損失は、東芝の管理体制の甘さを指摘せざるを得ないと思います。

一体、誰が責任をとるのか?全く不明だからです。

東芝にはLNG事業部すらありません。

この状況事態が異常です。

こうした緩さは、銅取引で巨額の損失を出した住友商事に似ているところがあります。

東芝は旧三井銀行系ということで、三井住友銀行が資金提供するようです。

2兆円くらいまでなら耐えられると思いますが、今の東芝の状況を見ていると
「いくらまで貸すべきなのか?」見当もつかないでしょう。

先行きがあまりに不透明なら、三井住友銀行内でも、
旧住友系からの反発が出て来る可能性もあります。

おそらく半導体事業を2兆円で売却しても、
それだけでは間に合わないほど、東芝の底は想像以上に深いと感じます。

日本勢が光ファイバー事業への転換に成功した理由

東洋経済オンラインは8日、
『かつての「電線御三家」、なぜ今絶好調なのか』と題する記事を掲載しました。

古河電気工業、住友電気工業、フジクラの3社が
光ファイバーなどの需要拡大で業績が好調です。

中国勢が安値攻勢をかけているものの、
大容量通信などの主要部品では日本勢が世界シェアトップで、
来年度まで「作れば売れる」状況が続くだろうと紹介しています。

光ファイバー事業の大手と言えば、
世界一のコーニングを筆頭に元々ガラス製品を作っていた企業がほとんどです。

日本ではこの流れと異なり、古河電気工業、住友電気工業、
フジクラなど電線事業社が、光ファイバーへ上手に乗り換えることに成功しました。

光ファイバーはコネクター部分などの細かい技術の難易度が高く、
日本勢が強みを発揮しています。

世界を見ると、ほとんどの電線事業社は時代の波に飲まれてしまい、
光ファイバーへの転換に失敗しました。

その中で、なぜ日本勢だけは成功できたのか?
なぜ世界の企業はうまくいかなかったのか?
これは非常に重要な経営のテーマの1つです。

世界の電線事業社は、カルテル行為をやっていたからだと私は見ています。

かつて電線業界では、世界的にカルテル行為が繰り返されていました。

このために「外に目を向ける」ことができなかったのだと思います。

光ファイバーの波がきていても、業界内ではカルテルによって仕事が回ってきますから、
それをいち早く感じて対応することができなかったのです。

その中で日本勢は上手く世界化し、技術力を活かすことにも成功しました。

これは日本企業として誇れるテーマであり、とても明るい話題だと思います。

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