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大前研一ニュースの視点

東芝/米ゼネラル・エレクトリック/独シーメンス ~東芝の事業3分割が成功しない理由とは

・東芝 事業別に3分割を検討
・米ゼネラル・エレクトリック 3事業への分割を発表
・独シーメンス 純利益約8060億円


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▼東芝の事業3分割が成功しない理由とは?
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東芝が会社全体を
主要な事業ごとに3つに分割します。

本体とグループで手掛ける事業を
インフラ、デバイス、半導体メモリーの
3つの会社に再編し
それぞれが上場する計画で、
収益構造や成長戦略が異なる事業を独立させ、
各事業の価値を
わかりやすくするとのことです。



事業を分割して
再上場を目指すのは良いと思いますが、
分割の仕方に問題があると私は思います。

ただ3分割しただけでは
「戦略」とはとても呼べません。

もっと個別の事業において、
「勝てる」ように
差別化要因を見極める必要があります。



そもそも3事業のうち
可能性を感じるのは
インフラ事業の一部のみです。

残り2事業は
全体としてアップサイドが
ほとんど見込めない状況ですし、
半導体メモリー事業にいたっては
本社がキオクシアの株を
保有しているに過ぎず
上場するなど夢の話です。



インフラ事業についても
ざっくりとまとめるのではなく、
1つ1つの事業で
「勝てる」状況を作る必要があります。

例えばPOSシステムや複合機で
一時代を築いた東芝テック。

米スクエア社などが登場し、
マイクロソフト製品やiPadを使えば
簡単に代替できるようになり、
今や危機的な状況に陥っています。



そんな東芝テックの事業を
立て直すつもりなら、
他の事業と一緒にして曖昧にするのではなく
単体勝負するべきです。

本気で米スクエア社に立ち向かって
勝てる戦略を
考えなければいけないと思います。

日立は配送電システムを強化するために
スイス重電大手ABBの送配電事業を
買収しました。



今のところ東芝には
このような動きが全く見られません。

上下水道システムは
ほとんど事業にならないレベルですし、
鉄道交通システムも
日立に比べて
圧倒的に弱いと言わざるを得ません。

今回発表された3つの事業分割のままでは、
勝てる見通しは
ほとんどないと私は感じています。

 




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▼GEも東芝もシーメンスをお手本として、事業の管理・整理を
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米ゼネラル・エレクトリックは9日、
会社全体を
航空エンジン、医療機器、電力の3事業に
分割すると発表しました。

GEの場合は
この3事業で勝負することは
東芝とは異なり
十分可能だと思います。



航空エンジン事業は
ロールスロイス、レイセオン・テクノロジーズと並び
世界3強の1つですし、
医療事業についても
シーメンスとフィリップスなどと
並んでいます。

電力事業は
今のところほとんど利益は出ていませんが、
それでも東芝とは違い
1つの事業に絞っていますから、
今後の戦略次第では
勝てる可能性はあるでしょう。



東芝と比較すると、
自分たちが勝負できる領域を
きちんと見極めていると感じます。

そんなGEや東芝にとって
良い事例となるのがシーメンスです。

11日に独シーメンスが発表した
2021年9月期通期決算は、
純利益が継続事業ベースで
前期比53%増の
61億6100万ユーロ(約8060億円)でした。



事業再開を急ぐ顧客からの
工場のデジタル化需要が
旺盛だったことが寄与したとのことです。

シーメンスは
収益が出なくなった原子力事業に
早々に見切りをつけて、
デジタルインダストリー事業
(ファクトリーオートメーションなど)、
スマートインフラ事業(電力、ビル)、
モビリティ事業(鉄道)などを
管理・整理してきました。



その結果、各事業において
全世界で勝負できる体制を
作り上げてきました。

今はいずれの事業も利益を出しており
増収傾向です。

シーメンスのやり方は
この業界の成功事例として
1つの指針になると思います。

 




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▼証券アナリストも、事業価値を見極める目を持つべき
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東芝やGEのような
巨大コングロマリットの企業が
分社化する動きを見せていて、
結果として
コングロマリットディスカウントの状況が
生まれています。

これは企業側の問題だけでなく、
証券アナリストの怠慢も問題だと
私は思います。



1つ1つの事業価値を正しく見極めていれば、
本来であれば分割・分社化したからといって
大幅に企業価値が向上すると考えるのは
おかしいはずです。

もちろん企業側のIR活動に
怠慢があるからとも言えますが、
それでも証券アナリストには
もっと厳格かつ的確な見極めを
してほしいと思います。



例えば、
今回発表された東芝の事業分割において
少なくとも半導体メモリー事業については
厳しいコメントを出して然るべきでしょう。

上述したように、
本社がキオクシア株を
40%程度保有しているに
過ぎないのですから、
上場する見込みなど絶望的です。



変化の早い時代なのだから
事業分割するのは正しいという
一般論だけで解釈していては
話になりません。

分割が良いのかどうか
正しく評価できる目を持ってほしいと思います。

 

 

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