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大前研一ニュースの視点

セブン&アイHD/西武HD/ソニー/日立製作所/ニコン ~ハードウェアからの脱却を図る日立

・セブン&アイHD そごう・西武を売却へ
・西武HD シンガポールのGICに施設売却へ
・ソニー 米バンジーを買収
・日立製作所 小島啓二社長がCEO兼務
・ニコン 連結最終利益390億円見通し



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▼セブン&アイHDでも立て直せなかった百貨店事業
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セブン&アイHDが、
傘下の百貨店大手のそごう・西武を
売却する方向で
最終調整に入ったことがわかりました。

セブン&アイは2006年に
当時のミレニアムリテイリングを
約2,000億円で子会社化しましたが、
その後はネット通販の台頭や
コロナ禍の影響で客足が遠のき、
不振が続いていました。



百貨店は軒並み苦労していますが、
結局セブン&アイも
百貨店事業を大きくすることができず、
売却することに
なってしまいました。

全国の百貨店の売上高(前年比)を見ても、
ごくまれに
神風が吹いたように
回復することはありますが、
全体的には非常に厳しい現状が伺えます。



セブン&アイHDの
セグメント別業績を見ると、
大型買収なども手掛けている
「海外コンビニ」の営業収益は
2兆円を超えており、
営業利益も約900億円になっています。

次いで「スーパー」の営業収益も
1.8兆円ほどと大きくなっていますが、
営業利益は200億円ほどに留まっています。



セグメント全体の中で
やはり「国内コンビニ」の
存在感は抜群です。

約9,000億円の営業収益で
約2,500億円の営業利益ですから、
圧倒的な利益率を誇っています。



一方、百貨店は、
4,000~5,000億円の営業収益があるものの
今期赤字に転落しているという
厳しい状況です。

こうした状況を見ると、
百貨店事業を手放してしまうのも
致し方ないかもしれません。

 



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▼プリンスホテルの経営課題はコンテンツにあり
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西武HDが
プリンスホテルなど約30の施設を、
シンガポールの政府系投資ファンドGICに
売却する方向で調整しています。

売却額は1,500億円規模となる見通しで、
新型コロナウイルス感染症の影響で
鉄道やホテルの利用が低迷する中、
資産を圧縮して経営効率を高める考えです。



GICは巨大な政府系ファンドで
資金も潤沢に持っていますが、
今回の買収にあたり、
私は
「本当にプリンスホテルの
経営課題を理解しているのか?」
と疑問です。

今回の買収では、
ホテルの経営はそのまま
プリンスホテルに
委託することになっています。



GIC自身に
ホテルの経営ノウハウが
ないからでしょうが、
それではプリンスホテルを
買収する意味はないと
私は思います。

というのは、
私に言わせればプリンスの問題は、
ロケーションでも施設でもなく
コンテンツだからです。



ロケーションも最高、施設も最高、
しかしコンテンツだけが
お粗末なので、
今のように苦労する状況になっています。

経営課題が
ホテルのコンテンツにあるのに、
今のままプリンスホテルに
経営を任せても
上手くいくはずがありません。



巨大な資金を持っていても
GICも単なる不動産屋であり、
プリンスホテルの経営の中身まで
理解しきれていないのだろうと思います。

 




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▼世界的に大型買収が続くゲーム業界
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ソニーインタラクティブエンタテインメントは
先月末、
米ゲーム会社・バンジーを
買収すると発表しました。

買収額は約36億ドル(約4,100億円)で、
ゲーム業界の有力作品と
人材の獲得競争が
さらに加速する見通しです。



ゲーム関連の売上高世界トップは
断トツでテンセントです。

ソニーは2位で、次いでアップル、
マイクロソフト、グーグルとなっています。

ソニーのセグメント別業績を見ると、
各事業で売上も利益も堅調です。



最近のゲーム業界では
大型買収が続いています。

2021年には米マイクロソフトが
米ベセスダの親会社を
約75億ドルで買収、
米エレクトロニック・アーツが
米グル・モバイルを
約21億ドルで買収しています。



また、今年に入ってからも、
すでに米テイクツー・インタラクティブが
米ジンガを
約127億ドルで買収すると発表、
さらにマイクロソフトは
アクティビジョン・ブリザードを
約687億ドルもの価格で
買収すると発表しています。



今回のソニーによる
米バンジー買収(36億ドル)は
規模から見ると、
比較的小さいと言えるでしょう。

世の中の流れとして
コンテンツの重要性が
ますます高まっています。



今、誰もが躍起になって、
コンテンツの獲得に走っています。

逆に言うと、
今何かしらの
コンテンツ事業をやっていれば、
どこか大きな会社が
買収してくれるチャンスが
あるという状況だと思います。

 



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▼ハードウェアからの脱却を図る日立
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日立製作所は
4月1日から小島啓二社長が
CEOを兼務すると発表しました。

小島氏が昨年掲げた
営業利益を1兆円に増やす目標は
今期7割まで達成できる見通しの一方、
成長の柱とする
IoT関連の売上高比率は
1割に留まる見通しで、
ITに精通した小島氏に
権限を集中するとのことです。



日立のセグメント別業績を見ると
それほど悪くありませんが、
常に高利益のシーメンスと
比較される立場にあり、
収益力が劣ると指摘されます。

それゆえ、
収益力を強化するために
ITコンテンツにシフトし、
ハードウェアの会社から
脱皮しようとしているのでしょう。



日立は2020年に
スイスABBの
送配電網(パワーグリッド)事業を買収し、
送配電事業も強化しました。

この事業も
活かし方はいくらでもあるので、
これから先が楽しみです。

 




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▼ミラーレス需要がずっと続くとは思えない
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ニコンは3日、
2022年3月期の連結最終損益が
390億円の黒字となる見通しを
明らかにしました。

従来予想から100億円上方修正したもので、
半導体などの部品供給問題で
販売台数は減少する一方、
ミラーレスカメラなど
高単価商品の販売が好調とのことです。



このニコンの最終利益の見通しには
正直私も驚きました。

半導体関連の業績が
上向いたものと推測しましたが、
それに加えてカメラ事業が
大きく利益を上げていました。

高価格帯のミラーレスカメラが
売れているというのですから、
本当に驚きです。



私も、今や大半は
スマートフォンで
撮影してしまいますし、
周りを見渡してみても
スマートフォンで
撮影している人ばかりで、
ミラーレスのカメラを使っている人は
見かけません。

一体どんな人たちが
ミラーレスカメラの需要を支えているのか、
私には見当がつきません。



セグメント別業績を見ると
半導体関連の精機事業は
営業利益約6億円の赤字から
約250億円の黒字へ回復し、
映像事業も
約360億円の赤字から
約200億円の黒字に大きく回復しています。

こうした数字を見ると
大きく期待してしまいそうですが、
どのくらい今の状況が続くのか
私は懸念しています。



この先もずっと
高価格帯のミラーレスカメラが
売れ続けるとは思えません。

ニコンやキャノンは
今の状況がずっと続くと考えると
危険かも知れません。

 

 

-大前研一ニュースの視点