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大前研一ニュースの視点

地方創生/経済対策/規制改革/少子化問題 ~新規性に乏しく、実現可能性にも疑問が残る「骨太の方針」

・地方創生 「デジタル田園都市国家構想」実現へ基本方針案公表
・経済対策 「骨太の方針」原案を公表
・規制改革 アナログ規制の一括見直しプラン決定
・少子化問題 合計特殊出生率1.30



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▼美辞麗句が並ぶも内容は混乱の極み
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政府は1日、
デジタル化で地方創生を促す
「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けた
基本方針を公表しました。

これは政府と地方自治体が
データを共有する基盤整備を
国が主導するほか、
デジタル機器の取り扱いが不慣れな
高齢者などを支援する
「デジタル推進委員」を増やすことなどを
明記したものです。



政府は基本方針を近く決定し、
年内に総合戦略を作る考えです。

「地方創生」が
「デジタル田園都市国家構想」と
名前が変わりましたが、
何をやりたいのかが不明瞭な印象です。

日本国のデジタル化なのか、
田園都市に人が住むようにしたいのか、
IT人材が沢山住むようにしたいのか、
よくわかりません。



地方のデジタル化を進める
「デジタル推進委員」を
どうにかして20,000人集めようと
美辞麗句を並べていますが、
そもそもIT人材が
田舎に移住するということは
まずありません。

30年ほど前にアメリカで
「ノマド」と呼ばれる人たちが現れました。



ニューヨークで
金融関係の仕事をしていた人などが
コロラドの田舎に移住し、
午前中だけ仕事をして
午後は自然の中で優雅に過ごすという
ライフスタイルで話題になりましたが、
一時的な現象でした。

シリコンバレーも当初は田舎でしたが、
今では大都会になって土地が足りず
サンフランシスコにまで
拡充しているくらいです。



私に言わせれば
「地方創生」と「デジタル」は
非常に関係性が薄いものです。

良さそうな言葉ばかりが並んでいますが、
中身はまったく整理されていない
混乱の極みだと言わざるを得ません。

 




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▼新規性に乏しく、実現可能性にも疑問が残る
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政府は先月31日、
岸田内閣として初めて取りまとめる
経済財政運営の指針である
「骨太の方針」の原案を公表しました。

これは岸田首相が掲げる
「新しい資本主義」の実現に向け、
個人投資家向けの
優遇税制や小額投資優遇制度(NISA)を
抜本的に拡充することや、
子育て支援、防衛力強化、脱炭素投資などを
盛り込んだものとなっています。



財源については、
企業を含む社会全体での
費用負担の在り方を検討すると述べるに
とどめています。

従来から言われていたことを
ただ並べただけで、
とても骨太と言えるものではないと
私は考えます。



一番空虚なのは、
財政の健全化目標を
「堅持」から「取り組む」に
後退させた点です。

そもそも3年後の2025年までに
財政を健全化するのは不可能なので、
堅持から取り組むに変更することは
当たり前です。



ですが、
何にどれくらいの期間取り組めば
現在年間40兆円程のマイナス財政が
健全化するのかが全く示されていません。

再就職支援や能力開発をするという
「人への投資」でも、
方向性は間違っていません。



産業構造がこれだけ大きく変わった今、
ドイツのシュレーダー首相が取り組んだ
経済改革のように
時代に合わないスキルしかない人材を解雇して
再教育する大鉈を振るう必要があります。

しかし、
そのための具体的なプランは
示されていません。



「貯蓄から投資へ」という方針にしても、
一般の国民が
長期的な投資を行うのに適した
具体的な商品はありません。

そもそも国民が
本当に貯蓄を投資に向けてしまったら、
ほとんど金利を払わずに
国民の貯蓄を運用できている金融機関が
深刻な経営危機に陥ることは
考慮されているのかも疑問です。



脱炭素は3.11の記憶が鮮明なうちは
原子力の活用が不可能。

スタートアップは投資したところで人材がいない。

量子・AI・バイオを国家戦略にしたところで、
政府内には
これらの分野に精通している人がいない。



唯一前進しそうなものは、
ウクライナ侵攻で予算が増える見通しの
安全保障関連だけです。

立派に見える方針だけは盛りだくさんな状態で、
飾りつけだけは立派な
クリスマスツリーのようになっている
「骨太の方針」ですが、
幹も貧弱で栄養も足りていません。

このままでは上のほうばかりが重くなって、
倒れてしまう未来が待っています。

 




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▼時代に合わせた規制の見直しをもっともっと進めるべき
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政府のデジタル臨時行政委員会は3日、
法律や政令などで義務付けられている
対面や目視による点検などの規制を
一括で見直す方針を決定しました。

これはやるべきことですが、
まだまだ足りていません。



目視が義務付けられていたところを
ドローンでも可としたり、
自動化を許可したりした点などは評価できます。

しかし今回盛り込まれなかった項目も
1,000項目ほどありますので、
これらの見直しも進めてほしいところです。



ちなみに私としては、
こんな細かいことまで
法律で規制しているということ自体が驚きです。

最近では医療関係の規制で
コロナ対策が合理的にできないという問題が
生じたわけですが、
患者と医師は
同じ部屋にいなければならないなどの規制は
そのままになっています。

デジタル技術活用のためには
医師法の書き直しも急ぐ必要がありますが、
こちらも大変な作業になると思います。

 




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▼勝ち筋は見えずともチャレンジを繰り返すしかない
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厚生労働省は3日、
一人の女性が生涯に産む子供の数を示す
合計特殊出生率が
2021年は1.30になったと発表しました。

6年連続の低下で、
出生数も過去最少となっています。



人口を維持するためには
2.06から2.07が必要とされ、
1.5未満が超少子化、
1.3未満はさらに深刻な区分となり、
少子化対策が急務の現状です。

外国の合計特殊出生率を比較すると、
日本以上に深刻なのが韓国です。

フランスやドイツ、スウェーデンなどは
なんとか低下を食い止めています。



日本でも制度上は
男性の育児休暇も取れるようになっていますが、
実際には取っていない人が多く、
充分には機能していません。

夫婦単位で何日分という形で
強制的に休ませる方法も考えられますが、
日本の場合は
両親にベビーシッターをお願いして
早く職場復帰したいという人もいます。



祖父母世代が子育てに関わらない
欧米とも状況は異なりますし、
日本国内でも人によって
事情は異なりますので、
成功例を参考にしながら
日本の実情にあった方法を
考えることが必要です。

近年はコロナで
結婚自体が大きく減ったうえ、
さらに2026年は「丙午」の年で
出生数が大きく減ると予想されます。

少子化対策はこれからしばらくの間、
解決が難しい課題を
なんとか解決しないといけないという
地獄のような状況が続きます。

 

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