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大前研一ニュースの視点

消費支出・マイナス金利・不動産市場~経済の「膨らみ」を作ることが大切

2016/09/25

消費支出:2015年実質消費支出 前年比2.3%減
マイナス金利:当座預金10~30兆円対象 市場反応読みづらく
不動産市場:不動産融資、26年ぶり最高

経済の「膨らみ」を作ることが大切

総務省が16日発表した2015年の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は
月平均28万7373円となり、前年に比べて2.3%減少しました。

2年連続のマイナスで、2014年4月の消費増税以降、
消費の手控えムードが長引いている現状が改めて示されました。

先日も「200円カレーが東京に上陸」という話題がありましたが、
他にもガストなどローエンド商品が好調な様子を見せています。

安倍首相は賃金が上がったと主張していますが、実際には消費に結びついておらず、
再びデフレに戻っているというのが実態でしょう。

消費支出の推移からも、実質消費支出は冷え込んでいるのは一目瞭然です。

内訳を見ると、衣服、教養・娯楽などが落ち込んでいます。

国民が「身構えている」のがわかります。

その上、今の日本はお金を使わなくてもいいように、様々な低価格サービスが充実しています。

私もCoCo壱番屋のカレーを食べますが、600円そこそこで食べられる
「あさりカレー」など十分な味だと思います。

このような店が他にもたくさんあります。

だからこそ重要なのは、「ドーンとお金を使いたくなるもの」だと私は思います。

欧米では「大きなお金を使うもの」があります。

米国の場合、セカンドハウスです。

部課長クラスの人なら、引退後に過ごすセカンドハウスを南の地域に買います。

働いている間は貸し出して、年間2回ほど使い、引退後は今の家を売却し、
セカンドハウスへ移ります。これは非常に大きなお金が動きます。

欧州では「バケーション・旅行」が同じ役割を果たしています。

かつてはバケーションを取らないと言われたドイツ人も、今は夏2週間、
冬1週間のバケーションが普通になりました。

イタリア人など、収入の1/3をバケーションに使うと言われています。

やはり、これも非常に大きなお金が動きます。

日本の課題は、「経済の膨らみ」の部分がないことです。

カレーやハンバーガーで少々高級なものが出まわっても、
日本全体から見れば誤差に過ぎません。

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デフレは構造的なものですから、それ以外の部分で経済を膨らませる仕掛けを作らないと、
1700兆円の個人金融資産は市場に出てきません。

倹約する部分ははっきりしていますから、それとは別に人間の「高欲望」を
刺激するようなものを作ることが非常に重要だと思います。

政府・日銀は相変わらず、今の日本人に「お金を使おう」というメンタリティがないという課題を
理解していません。

先日、日経新聞が「当座預金の10~30兆円対象 市場反応読みづらく」と題する記事を掲載しました。

金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に年0.1%のマイナス金利を導入することで、
日銀は世の中の様々な金利を押し下げる狙いと紹介。

しかしその経路は複雑で、実際に市場金利が円滑に下がるかどうかは不透明としています。

こんなニュースを見れば、暗くなるのは当然ですし、お金を使おうというメンタリティが育つわけもありません。

便乗値下げも横行し、何をやっているのかと思います。

 

すでに不動産市場のピークは過ぎている

日経新聞は「不動産融資 26年ぶり最高」と題する記事を掲載しました。

これは、2015年の不動産業向け新規貸し出しは10兆6730億円となり、
前年比6.1%増になったと紹介。

低金利を背景に住宅やオフィスビルの需要が底堅く、日銀の異次元緩和でマネーが
不動産市場に流れ込んでいることが要因としています。

銀行の不動産向け新規貸出額の推移を見ると、確かに今80年代の水準に近い数値になっていますが、
私の肌感覚では不動産市場は昨年11月がピークだったと感じています。

市場が冷え込んでいるとまでは言いませんが、急速に不動産の値上がりがとまった印象があります。

中国人のお金持ちが、国外にお金を持ち出すことができず滞留しているということも影響していると思います。

今はすでにそれほど売りやすいタイミングではなく、このニュースは2ヶ月ほど遅れていると感じます。



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