そこが知りたい情報チャンネル

このブログは、自分にとって参考になったことや活用できると思った記事をUPしていきます。

大前研一ニュースの視点

物価対策/独エネルギー情勢/ロシア産原油/ウクライナ穀物輸出 ~食料危機解決のためにリスクを取る決断

・物価対策 電気代の負担軽減策決定
・独エネルギー情勢 「ノルドストリーム」がガス供給停止
・ロシア産原油 インドで原油洗浄の可能性
・ウクライナ穀物輸出 黒海航路の安全確保で合意



─────────────────────────
▼お金を配って解決するようなやり方は王道ではない
─────────────────────────
政府は15日、
物価・賃金・生活総合対策本部の会合を開き、
新たな電気代の負担軽減策を
決定しました。

電力小売り各社が導入する
節電プログラムに登録した家庭に
2,000円相当のポイントを付与し、
さらに秋以降は
電力不足が懸念される場合に、
1ヵ月あたり5%節電すれば
2,000円相当のポイントを
追加付与する方針です。



これについて岸田首相は
「物価上昇のほとんどを占める
エネルギーや食料に集中して
対策を講じる」と強調しました。

目の前に人参をぶら下げて
馬を走らせるように、
数千円のお金をちらつかせて
国民を動かそうとするやり方は
とても評価できません。



本来であれば
まずは電気の供給を万全にすることが第一で、
それでも電力がひっ迫した緊急時には
産業界の電力消費を
強制力をもって抑制するというのが筋です。

国民に2,000円払って
協力してもらうような解決策は、
私に言わせれば
さもしいお金の使い方です。



とはいえ、
さもしい日本人は応募して
ちまちまと数千円ずつ
もらいに行ってしまうのでしょう。

 




─────────────────────────
▼経済での戦いではロシアが有利
─────────────────────────
ロシアとドイツをつなぐ
天然ガスのパイプライン
「ノルドストリーム」が11日、
定期検査のため
ガスの供給を停止しました。

これは毎年行われる定期検査で、
21日ごろまで続く予定ですが、
ロシア側が
経済制裁やウクライナへの武器供与を理由に
供給停止を続ける恐れがあり、
ドイツ政府は
供給確保へ向けた対応を急いでいます。



ノルドストリームは
ロシア西端のフィンランド湾から
バルト海を通り、
ドイツ北東部に至るパイプラインです。

ここの天然ガス供給が
止まったままになった場合、
ドイツは
深刻なエネルギー不足に陥ります。



液化したままの天然ガスを
備蓄しておく設備もなく、
現在建造中の設備も間に合わないため、
エネルギー不足に陥った場合は
チェコやオーストリア、
フランスなどに
天然ガスや電力を
融通してもらうしかありません。



残念なことですが
こうしたエネルギー危機を迎え、
ドイツの世論は
ロシアへの制裁を
止めようという方向に
傾かないか懸念されます。

「ウクライナ支援疲れ」と
言われることもありますが、
支援自体への反対意見は
多くありません。



実態としては
ロシアによる
エネルギーや穀物などの
供給を絞る攻撃に
耐えきれなくなってきている
という状況です。

プーチン大統領は
KGB時代に
ドイツでスパイをしていた
ドイツ通です。



当然、
ドイツの世論や泣き所は分かったうえで
経済的に締め上げています。

このままノルドストリームを
止め続ける可能性も
十分考えられます。

 




─────────────────────────
▼「死の商人」インドがロシアを支える
─────────────────────────
日経新聞は14日、
インドがロシア産原油の
中継地点になっている可能性があると
報じました。

5月と6月にインドに到着した
ロシア産原油の量は
それぞれ前年同月比で
およそ8倍、4倍と急増しており、
インド国内で消費するだけでなく
石油製品に精製して
欧米に輸出しており、
制裁の抜け穴になっている懸念が
浮上しているとのことです。



現在もロシアから
原油を買っている国は
中国とインドが挙げられます。

中国が国内で
燃料として使っている一方で、
インドは原材料として加工し
石油製品が不足している
ヨーロッパに転売しているようです。



戦争を終わらせるための
取り組みを無効化し、
逆に利用して儲けるという
いわば「死の商人」のような立ち回りが
露骨になってきました。

安くしているとはいえ、
インドが原油を買っている限り
ロシアへの経済制裁は
機能しません。



一方で
ドイツは資源不足に悩まされ、
ロシアへの経済制裁を緩める可能性も
考えられます。

経済という分野での戦いは
資源を持っているロシアに
強みがあると
言わざるを得ないでしょう。

 



─────────────────────────
▼食料危機解決のためにリスクを取る決断
─────────────────────────
13日、
ウクライナとロシア、
国連、トルコの各代表団は、
ウクライナの穀物輸出再開に向けた協議を
トルコのイスタンブールで開き、
輸出航路の安全確保などで
合意しました。

ウクライナからの穀物の輸出が滞り
世界に食糧危機が広がっているのを受けて、
トルコが国連と連携し
交渉を後押しした形です。



黒海のオデッサ付近には
ウクライナ・ロシア両国が
敷設した機雷が多く、
航行が大変危険な海域となっています。

今回の協議では
リスクをとってこの海域の航路を確保し、
オデッサで留め置かれている
穀物を運び出そうというプランが
合意されました。



日本は掃海艇を持っているので
航路の安全確保に
貢献すべきだとは思いますが、
あまり目立ちすぎると
ロシアからの
恨みを買う恐れもあります。

一方で、
ウクライナ西部から
陸路でルーマニアに運び、
ドナウ川を下って
コンスタンツァから
黒海に抜けるルートの
稼働も始まりました。

このルートなら
機雷が多く危険な海域を避けられるため、
実現すれば
穀物輸出のリスクも半減すると
考えられます。

 

 

-大前研一ニュースの視点