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大前研一ニュースの視点

パキスタン情勢 イムラン・カーン前首相を逮捕

パキスタン情勢 イムラン・カーン前首相を逮捕
トルコ大統領選 エルドアン氏が49.4%得票
タイ総選挙 革新系野党「前進党」が第一党
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▼経済も政治も混乱の極み
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パキスタンで昨年4月、
不信任案の可決により失職したイムラン・カーン前首相が
9日、在任中の汚職容疑で捜査当局に逮捕されました。

カーン氏は若者などから根強い人気があり、
各地で抗議活動が広がり、
治安当局と衝突する事態となりましたが、
パキスタンの最高裁判所は11日、
逮捕は違法との判断を下し、
12日に釈放されました。

パキスタンは政治的には
混乱の極みにあります。

ブットー氏、シャリフ氏、
軍人のムシャラフ氏、ギラーニ氏と、
様々なリーダーが登場しましたが、
うまくまとめることはできませんでした。

イムラン・カーン氏には期待しましたが、
やはり失脚してしまいました。

洪水などの自然災害にも見舞われましたが、
そもそもの経済がうまくいっていない状況です。

ここ20年で、債務残高は3倍以上に膨らみ、
インフレ率はたびたび20%を超え、
GDPは成長していません。
外貨準備高もほぼゼロです。

もともと同じ国だったバングラディシュは、
同じように貧しく災害にも見舞われてはいるものの、
政治的な分断や混乱がまだ小さい分、
治安などの面ではマシかもしれません。

貧しいうえに、多民族国家であり、
近年は一帯一路を目指す中国の思惑にも
晒されているパキスタンをまとめるのは、
相当難しいことだと言わざるを得ません。


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▼米国にも似た分断で結果はまったく読めず
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トルコの選挙管理委員会は15日、
前日に行われた大統領選挙の開票結果について、
現職のエルドアン大統領が49.4%、
野党統一候補のクルチダルオール氏が44.96%だったと
発表しました。

過半数を獲得した候補がいないため、
28日の決戦投票に進みます。

エルドアン氏が当選する確率が高いと見られる一方、
5%強を獲得した少数野党・オアン氏の
支持の行方にも注目が集まっています。

エルドアン氏がこれだけ票を集めたのは予想外でした。

クルチダルオール氏が勝ったエリアを見てみると、
アンカラ、イスタンブール、
地中海沿岸の豊かな地域、
およびクルド人地域です。

つまり、イスラム教の影響が根強い地方と
高齢者と貧しい地域はエルドアン氏、
そうでもない都市部と若者と
豊かな地域はクルチダルオール氏、と、
米国の民主党共和党のように
二分してしまっている状況です。

決選投票ではオアン氏の5%が勝負を決めますが、
どちらに流れるかは全く分かりません。

投票に行かない可能性も十分にあると思います。

個人的には、
そろそろエルドアン氏は退陣するべきだと考えています。

長期政権により強権化が進み、姑息な手段を用いて
専制を強めるようなこともしてきました。

クルチダルオール氏は
欧米とのつながりが強い人物ですが、
エルドアン氏は北大西洋条約機構(NATO)の
メンバーでありながらも
ロシアとのコネクションを保っています。

欧米諸国にとっても、
クルチダルオール氏の方が歓迎されると予想します。


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▼前近代的な悪習を排す歴史的前進に期待
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タイの選挙管理委員会が
15日発表した総選挙の開票結果によりますと、
軍の影響力排除などを掲げた革新系野党、
前進党が第一党、
タクシン元首相派の最大野党・タイ貢献党が
第二党となったことがわかりました。

これを受け、前進党は18日、
他の7つの野党と連立を組むことで合意したと
発表しましたが、
制度上、野党だけで首相を選出するには票が足りず、
連立与党・タイの誇り党を取り込めるかが焦点となります。

タクシン派が優勢と考えられていたため、
この結果はすべての人にとって
想定外だったと思われます。

前進党の躍進は何を意味するのかというと、
王室制度への批判です。

タイでは王室を批判すると逮捕され、
場合によっては死刑まであり得ます。

前進党はこれを改革しようとしています。

7月に議員による首班指名の投票がありますが、
野党だけでは首相選出に必要な375議席に届きません。

上院を握る軍は基本的に王室にはノータッチで、
中には個人的に改革に賛同している議員も
いるかもしれませんが、
表立って表明する人は出てきていません。

この首班指名選挙で、
前進党を中心にまとまれるのかどうかが
カギとなりますが、
党首は可能だと断言しています。

私としては、
前進党に勝ってもらって王室制度の改革を
進めてほしいと思っています。

今の王は先代と違って国民から尊敬されていません。

それを習慣だからと言って、
批判する人を刑務所にいれるような制度を
残すのは間違っています。

とはいえ、王室を全て廃止するのではなく、
ある程度の民主的な箍を嵌めることが
できればよいと考えます。

日本も英国も、王室を残したまま
次第に民主的な社会制度に移行した
結果として今があります。

いまこそタイ王室が同様の改革を遂げるべきですし、
前進党が成し遂げたなら
それはタイの歴史に残る革命的な出来事だと言えるでしょう。

一方の貢献党には、
王室制度改革に反対する理由はありません。

しかし、有罪判決を受けて亡命生活を
送っているタクシン元首相は、
恩赦を狙っていると言われています。

恩赦してもらって帰国するためには、
王の権威と命令が必要で、
その個人的な下心のために
歯切れが悪くなっているのを
国民には見透かされています。

タイの民衆は民主主義を望んでおり、
そのための下地も整っています。

王室制度改革が実現し、
タイの社会が一歩前進することに期待します。

 

 

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