日本電産/日野自動車/オリンパス ~祖業への愛着より成長の機会を選んだオリンパス
・日本電産 関潤社長兼COOが退任へ
・日野自動車 小型トラックのエンジン性能試験で不正
・オリンパス 科学事業売却交渉で米ベイン軸に調整
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▼創業メンバーの強権ゆえに後継者選びが迷走
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日本電産の社長兼COOである関潤氏が
退任する見通しが明らかになりました。
関氏は2021年6月に
永守氏からCEOを引き継ぎましたが、
株価低迷などを理由に
今年4月に永守氏が復帰。
関氏の後任には
副会長で創業メンバーである
小部博志氏が就任するとのことです。
日本電産の取締役会は
11名中6名が社外独立役員で、
組織図上は
監査等委員会が取締役会を
監査監督する形になっていますが、
永守氏の強権を制御するという点では
うまく機能していないようです。
以前株主総会で
永守氏が関氏を
紹介していたことがありましたが、
あたかも自分の意志に従えば
上手くいくと言わんばかりでした。
そして今回は
「関は経営力が低い」と評するなど、
とても後継者に対する敬意があるとは
感じられません。
そもそも、
同社全体の売上・利益は
この3年右肩上がりで、
関氏の経営手腕が
問題視される理由はありません。
関氏が担当している
車載事業の営業利益が
3年連続で落ちているのも、
自動車業界が
苦境にあることが理由であって、
関氏の問題ではありません。
永守氏が
自動車業界の現状や車載事業との関連を
知らないはずはないので、
不可解な評価だと私は考えます。
日本電産の後継者と目された最高幹部が
退任するのはこれで4人目です。
GEキャピタルで活躍された呉文精氏や
日産自動車で功績を残した吉本浩之氏、
シャープの液晶開発主任から
社長まで務めた片山幹雄氏などの
素晴らしい人材を引っ張ってきては、
すぐに辞めさせてしまうという傾向が
見受けられます。
私も以前、
今回の関氏も
長続きしないのではないかと
発言したことがありましたが、
予想通りになってしまいました。
次の社長は
創業メンバーでもある小部氏とのことで、
結局は身内から
後継者を選んだ形になりました。
それなら最初から
外部から招聘なんて
しなければよかったのではないかと
思ってしまう人事です。
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▼親会社のトヨタは日野自動車を見捨てていない
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日野自動車は先月22日、
小型トラックのエンジン性能試験で
不正があったと発表しました。
排ガスの測定が
国交省の定める回数よりも
少なかったということで、
これを受けて日野自動車は
3月の不正発覚で
既に出荷を停止している
大型中型トラクターだけでなく
小型トラックの出荷も停止しました。
組織ぐるみの不正だと
考えざるを得ません。
日野自動車は
いすゞ自動車と
大中型貨物車メーカーの
トップを争う会社で、
現在は販売台数首位です。
日本の4大トラックメーカーのうち、
三菱ふそうとUDトラックスは
外資の傘下にあるので、
国産純資本の会社は
日野といすゞだけです。
小型の貨物車に関しても
ゴミ収集車で大きなシェアを持ち、
まさに日本が誇る
素晴らしい貨物車メーカーであり、
私も日野の4トントラックを
愛用しているので、
この組織ぐるみの不正は
とても残念に思います。
親会社であるトヨタは
共同出資会社である
Commercial Japan Partnership Technologies株式会社(CJPT)から
日野自動車を除名することで
怒りを表明しようとしているようですが、
私には単に
ポーズをとっているだけに見えています。
技術開発のための会社である
CJPTから除名されたところで、
日野自動車に
大きなダメージはありません。
本当に不正を許さないという
強い意志があるのなら、
トヨタは日野自動車の株を
手放すはずなので、
今回の件に関するトヨタの本気度は
そこまで至っていないと考えられます。
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▼祖業への愛着より成長の機会を選んだオリンパス
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オリンパスが
生物顕微鏡などを手がける
科学事業の売却交渉で、
米国のベインキャピタルを軸に
調整に入ったことがわかりました。
科学事業はオリンパスの祖業ですが、
主力の内視鏡など
医療機器事業に経営資源を集中させ、
売却資金も
成長投資に充てるとみられます。
注目すべきは4,000億円という金額です。
科学事業の営業損益は
2023年予想で265億円とされており、
これを4,000億円で売ると
EV/EBITDA倍率は
かなりの高水準となります。
オリンパスの
セグメント別業績を見てみると、
内視鏡が収益の柱で、
次に治療機器が続き、
3番目にこの科学事業が来ています。
4,000億円という
高値で売れるのならば、
3番目の科学事業は手放してでも、
主力事業に投資することで
さらなる成長が見込めるという
算段だと考えます。
顕微鏡はオリンパスの祖業であり、
かつては一世を風靡した
事業でもあります。
その事業を手放すことには
寂寥感もありますが、
高額の売却価格を鑑みた
冷静で合理的な経営判断だと思います。