自民党総裁選/日本の政治家 ~岸田氏が一歩前へ出た総裁選の行方は?
・自民党総裁選 岸田文雄氏が立候補表明
・日本の政治家 政治家に必要な要素とは
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▼岸田氏が一歩前へ出た総裁選の行方は?
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自民党の岸田文雄前政調会長は、
先月26日、
菅首相の任期満了に伴う
総裁選に立候補すると表明しました。
岸田氏は会見で
「国民の間には
政治が現場の声に応えてくれないという
切実な声が溢れている」として、
立候補の理由を説明。
総裁選には菅氏、岸田氏のほか、
高市早苗前総務相も
意欲を示しており、
9月29日の投開票に向けて
論戦が繰り広げられることになります。
岸田氏の派閥・宏池会には
40人以上所属していますから、
総裁選の出馬条件となっている
20人の推薦人を確保するのは
簡単でしょう。
一方、前回の総裁選で
野田聖子氏が20人の推薦人を集められずに
出馬を断念したように、
高市氏については
同様の心配があると私は見ています。
岸田氏と同様、
推薦人の確保には全く心配がないのが
石破氏です。
しかし、この期に及んでも
出馬を逡巡しているというのは、
2回も総裁選に出馬した経験者なのに
情けないと私は感じます。
岸田氏はいち早く手を挙げたことで、
国民からの視認性が上がっていて、
やや有利に動いているかもしれません。
まだ態度を決めかねている
派閥も多いでしょうが、
現時点においては
菅氏と岸田氏が有力候補です。
二階氏は菅首相の続投で良いという
見解を示しており、
二階派は菅氏を推すと考えられます。
本来、二階氏の思惑は
小池都知事を担ぐことだったと
言われています。
解散総選挙を受けて、
小池氏が都知事を辞任し、
衆議院選挙で当選したあかつきには
二階派のトップに就き、
一気に総裁選に出馬するという
シナリオです。
ところが、諸般の事情で
総裁選と解散総選挙の順序が
逆になったので、
このシナリオは使えなくなりました。
前回の総裁選では議員票が多かったのですが、
今回は党員票が多いので、
その点ではどのような展開になるのか
面白みが増していると思います。
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▼強い志を持ち、シングルイシューで取り組む政治家が、今の日本にはいない
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総裁選を控え、あらためて、
構想力があって
リーダーに成り得る政治家が
これからの日本には
どれほど出てくるのか、
そういう政治家になりたいという
若者がどのくらいいるか、
と考えると
懸念を抱かざるを得ません。
こうした状況を生み出した
一つの要因は、
新聞だと私は思います。
かつては各新聞が
独自の世界観を持っていましたが、
今や失われています。
政治担当、経済担当などが
バラバラに分かれているのも
問題だと思います。
また、政治家のなり手の面で、
米国などでは、
若いうちに会社を上場させて
多額の資産を得た人が、
将来的に政治の世界へ乗り出す
という場合もありますが、
今の日本にはこういうルートから
政治家を志す人をほとんど見かけません。
若い頃から大きなビジョンを持ち、
高い志があった政治家といえば、
中曽根元首相を思い出します。
若い頃から首相になりたいという
強い願望を持っていましたが、
当初は自分に派閥がなく、
首相になる道のりなど
全く見えなかったはずです。
しかし、諦めることなく、
首相公選制を呼びかけ
「首相を選挙で選ぼう」と
自らが首相をなれる道を
切り拓こうとしました。
私は数年間、
中曽根元首相のアドバイザーを務めましたが、
まさに「強い志」を
持った人物だったと思います。
今の日本を見ていると、
こういう人物が出てくる可能性は
極めて低いと感じます。
今の日本の制度では、
推薦人20人という条件などが
障壁となって、
実力や実績がある人でも
首相になれるとは
限らないという状況です。
今回の総裁選にあたっても、
茂木外務大臣は能力的に見ても、
今までの実績を見ても、
総裁選に出馬しても
全くおかしくない人物だと
私は思います。
しかし、誰も彼を推薦していません。
当然、20人の推薦人を
確保できないので、
出馬すらできないでしょう。
首相公選制を呼びかけて
状況を打開しようとした
中曽根元首相のように、
こういう状況においても、
一貫したビジョンや志を持つことは
重要だと思います。
三公社五現業の民営化を掲げた
中曽根元首相、
郵政民営化を掲げた小泉元首相。
2人とも若い頃から
これらの問題を提起し、
「シングルイシュー」として
集中して取り組み、
最終的に成果を上げました。
小泉元首相が郵政民営化を
成し遂げたときには、
最終的に自民党議員からも
支持をされない中で、
解散総選挙に持ち込んで
数々の刺客を放って
選挙に勝ち、
実現にこぎつけました。
私は2人ともよく知っていますが、
首相になってからも
「殺気立っている」と思うほど、
自らが取り組んでいる問題への意欲は、
人並み外れて高かったと思います。
今の日本を見渡しても、
こういう人はなかなか見つかりません。
枝葉末節にこだわるばかりで、
政権を取りたいなどと発言している
野党の政治家を見ていると、
情けなくなります。