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大前研一ニュースの視点

岸田内閣/電力供給/教員採用/AI契約審査 ~既得権益層による改革の妨害

・岸田内閣 萩生田経産相がGX実行推進担当相を兼務
・電力供給 電力会社に休止火力の再稼働求め
・教員採用 教職、進まぬ民間起用
・AI契約審査 契約書のAI審査VS弁護士法



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▼大臣の看板を増やしているだけで実効性には疑問
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岸田首相は先月27日、
萩生田経済産業相に
GX(グリーントランスフォーメーション)
実行推進担当大臣を
兼務させる人事を発令しました。



2050年までに
温室効果ガスの排出量を0にする
カーボンニュートラルを実現するため、
官民連携のもと
経済社会産業構造の変革を
推進する役割を担います。
    
大臣の看板を
いたずらに増やしているだけのように
見えます。



野田聖子氏なども、
多くの大臣を兼務していて、
何の担当なのか
よくわからなくなっています。

そもそも、
グリーントランスフォーメーションは
経済産業相ではなく、
環境相がやるべきだと
私は考えます。



経産相は、
環境負荷を増やしながら成長してきた
多くの従来型の産業を
管轄する立場です。

脱炭素を目指すのなら、
それを第一に優先できる
環境相が担当するというのが
筋です。



一方で、
スタートアップ担当大臣に
山際経済財政政策担当大臣が
任命されたことも疑問です。

スタートアップは
経済産業省の管轄なので、
経産相が兼務すべきだと考えます。



政治家の力で
スタートアップがうまくいくとは
思えないという点は
棚上げしても、
米国と比べると
日本のスタートアップの環境には
大きな問題があります。

まず、
スタートアップへの投資額は
両国ともここ10年で
かなり増加していますが、
金額で見ると
日本が年間8,000億円に対して
米国は3,500億ドル(約46兆円)と
大きな差があります。



投資する主体も、
米国が財団や企業年金、大学と
リスクを取ることに
前向きな機関であるのに対し、
日本はリスクどころか
抵当を要求する銀行が主体です。

日本のスタートアップを
活性化するためには、
こうした環境から変える必要があると
私は考えます。

 




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▼休止中の火力発電所よりも、認可済み原発の稼働に注力すべき
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経済産業省は先月20日、
総合資源エネルギー調査会の
小委員会を開き、
休止している火力発電所の再稼働を
電力会社に求める方針を
確認しました。

今年の冬は、
夏よりも電力不足が深刻と
予想されることを受けたもので、
東日本で170万キロワット、
西日本で190万キロワット分の確保を
目指す考えです。


    
政府は休止している
古い火力発電所を
再稼働する方針ですが、
それにはリスクが伴います。

止まっていたタービンは
急にフル回転できるものではないため、
慣らし運転をしながら
再稼働するのですが、
その過程で不具合が生じることが
過去多くありました。



目標の170万キロワットは
だいたい原子力発電所2基分の発電量なので、
CO2の問題を考慮するうえでも、
認可済みの原発2基を
早急に立ち上げることに
注力すべきだと
私は考えます。

いずれにせよ大前提として、
電力は圧倒的に足りていません。



目標としているワット数では
足りないと感じます。

この冬を乗り切るために、
全国から東電管内に
電気を融通してもらうことに
なるでしょう。

 





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▼原因は教員側の縄張り意識と妨害
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日経新聞は先月19日、
「教職、進まぬ民間起用」と
題する記事を掲載しました。

教職課程を経ていない人を
学校に迎える
特別免許の
2020年度の授与件数は237件と、
一般の教員免許の0.1%に
とどまります。



経験不足を不安視する
教育委員会の姿勢が
壁となっているものですが、
不足するデジタル人材の育成に向け
民間の知見を
生かす必要があるとしています。

せっかく制度ができたのに
活用できていないのは、
本末転倒だと考えます。



たとえば
子育てについては
実際に子育てを経験した方に、
デジタルについては
富士通やNECの方に
授業をしてもらった方が良いのは
当然です。

特に、
新しい時代の新しい技術は、
教育業界よりも企業や産業界の方が
早く身につけるので、
教員だけに
教育を任せるべきではありません。



安全に関する授業に関しても、
警察や消防の方に
授業をお願いしたほうが
効果的です。

教育は社会が
総動員で行う必要があるのです。

私はこうした主張を何度も書いており、
ようやく制度はできましたが、
実際に使われたのは
たったの237件だったということには
呆れるしかありません。



結局は、
教員免許を持っている側に
教育は自分たちの縄張りであるという
意識が強く、
都道府県の教育委員会が
それを慮って
抵抗しているということです。

既得権益層による
改革の妨害と言っていいでしょう。

 



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▼既得権益にしがみつかず、創造性を発揮できる人材を目指すべき
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6月、
政府のグレーゾーン解消制度で
「AIを使った契約書の
審査サービスについて
違法の可能性がある」との
照会結果が公表され、
企業に動揺が広がりました。



弁護士法で
弁護士以外には禁じている業務に
該当する可能性を
指摘したものですが、
同様のサービスは
既に国内企業のおよそ1割が
導入しており、
明確な線引きが遅れれば
企業の競争力にも
影響しかねないとしています。

弁護士の既得権益を守るための動きです。



そもそも、
新しい技術を活用したサービスが
規制に抵触するのは、
古い法律に当てはめている以上
当たり前です。

弁護士たるもの
旧態依然とした法を盾に
既得権益を守るのではなく、
新しい社会に生じた問題に
法をどう当てはめるかを考える
クリエイティブな専門家を
目指してほしいと思います。



AIは、
判例のチェックなどは人間よりも得意で、
膨大な事例を
一瞬で正確に検索できます。

カナダや米国では、
法や判例を当てはめるだけの仕事は
AIを用いるのがもう当たり前で、
リーガルフォースも
そうした土壌から生まれました。



情報技術に詳しい若い弁護士が活躍し、
弁護士の世界でも
技術が重要視されました。

ですが、
前例がない事件や問題は
現在も常に生じています。



経験豊富なベテラン弁護士は、
こうしたAIが解決できない分野にこそ
活躍のチャンスがあるはずです。

一刻も早くこうした状況を脱し、
AIにできることは
AIに任せられるようにすべきです。



人間は
人間にしかできない仕事をするという
考え方になれば、
AIと競合せず、
シンギュラリティ後の世界でも
必要とされる人材になれるはずです。



ですが、
資格が必要な専門家の世界は
どうもデジタル化・自動化への抵抗が
大きいと感じられます。

会計士はだいぶ進んでいるようですが、
医療・法曹は
かなり既得権益層が強い印象です。

 

 

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