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大前研一ニュースの視点

米イラン関係/北朝鮮情勢 ~選挙のことしか頭にないトランプ大統領

・米イラン関係 イラン・ソレイマニ司令官を殺害
・北朝鮮情勢 核・ICBM実験再開を宣言

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▼選挙のことしか頭にないトランプ大統領の愚行
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米国防総省は2日、イスラム革命防衛隊の
精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を
殺害したと発表しました。

 

イラクの首都バグダッドの国際空港を出たところで
司令官の車列を米軍のドローン機が空爆したもので、
これを受けてイスラム革命防衛隊は8日、
報復としてイラクの米軍駐留基地を
弾道ミサイルで攻撃しました。

 

今回の攻撃についてトランプ大統領は
補佐官がいくつか提示した案の中で
最も厳しいものを選び、
議会にも相談せずにツイッターで
攻撃命令を出したということです。

 

ツイッターの一言で
このような軍事行動が実行されるとは、
とんでもない事態だと思います。

 

トランプ大統領にとって意外だったのは、
今回の軍事行動に対して米国の世論が
ネガティブに反応したことです。

米国民は今さらイランとの直接交戦は
望まないということでしょう。

 

トランプ大統領の頭の中にあるのは
選挙のことだけですから、
「世論がネガティブに反応するなら…」
ということで、急に身を引く姿勢を
示しはじめました。

 

一方のイラン側も
そのような米国側の身を引く姿勢を受けて、
ヒートアップせずに収束させようとしました。

それにより、この2~3日で急激に
この問題はクールダウンしていく
様相を見せています。

 

今後イランがどのような反撃をするのかという
懸念もありますが、現在のところ、
米国もイランもお互いに自制する方向で
動いています。

 

イランは中東において
非常に大きな影響力を持っている国です。

石油の埋蔵量は世界トップクラスを誇り、
国土は日本の約4倍。

人口は8,000万人ほどで
シーア派のイスラム系の人たちが
大半を占めています。

今回殺害されたソレイマニ氏は
イスラム革命防衛隊の司令官です。

 

イスラム革命防衛隊は、
正規のイラン軍とは別組織で、
陸上10万人、海上2万人、さらに航空部隊、
民兵部隊60万人を抱えています。

 

イラン軍が正規軍であるのに対し、
イスラム革命防衛隊は、正規軍を牽制し、
イランの革命を維持するための軍事組織という
位置づけです。

 

そんなイスラム教シーア派のイランと
中東で激しく対立しているのが、
スンニ派の大国サウジアラビアです。

 

サダム・フセイン政権下で、
イラクもスンニ派が体制の主流であったため、
イランと激しく対立し戦争にまで発展しましたが、
米国によってスンニ派トップのサダム・フセインが
排斥され、イラクも人口的に多数派である
シーア派が台頭することになりました。

 

その他の国に目を向けると、
シリアはイランと親密で、
イエメンでは、同国政府とその後ろ盾であるサウジアラビアの
両方と対立する武装組織が勢力を拡大し、
レバノンはイスラエルと対立する、など、
各国で複雑な関係性が築かれています。

 

今週のニューズウィーク誌では、
このような中東情勢において
「もしイランの指導層をひっくり返したら、
どのようなことが起こるのか?」という
特集記事が掲載されていましたが、
その結論は「イスラム国(IS)が復活する」
というものでした。

 

イスラム国(IS)はスンニ派の過激派組織であり、
シーア派の撲滅を目指しています。

シーア派の盟主として君臨している
イランの体制が崩壊すれば、
イスラム国(IS)が復活してくることは
間違いない、と私も思います。

 

そうなってくると、米国は今まで中東において
何のために10年以上も苦労してきたのか?という
疑問が残りますし、ニューズウィーク誌が
そのように指摘をするのも当然でしょう。

 

トランプ大統領は選挙のことしか頭にありませんから、
そこまで考えが及ばずにやってしまったのでしょうが、
何とも情けない話です。

 

 

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▼強気の姿勢を見せていた金正恩委員長が受けた大きな衝撃
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朝鮮中央通信が報じたところによると、金正恩委員長が
核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験の
一時停止を撤回したことがわかりました。

 

金正恩委員長は党中央委員会総会で、
「公約に我々が一方的に縛られている根拠がなくなった」
と述べるとともに、
「世界は遠からず朝鮮民主主義人民共和国が
保有することになる新たな戦略兵器を目撃するだろう」
と語ったとのことです。

 

金正恩委員長は、昨年末に4日連続で大会を開いて、
何度も「正面突破」という単語を連呼し、
威勢のよい強気の姿勢を示し続けました。

「今後は自分たちだけが
制裁を受けるのを受け入れない」と。

 

ところが、イランのソレイマニ司令官が
米国のドローン攻撃であっさりと殺害されてしまい、
今はすでに雲隠れしている状況になっています。

韓国の新聞でも、金正恩委員長が
よほど衝撃を受けたのだろうと報じられています。

 

今回のソレイマニ司令官の殺害を見ると、
米国は各国の要人がどこにいるかを
つぶさにチェックしていることが伺えます。

そして、(金正恩委員長を暗殺する)「斬首作戦」を
実行する機会というのは、
あまりにも身近だと言えるでしょう。

しかも、今回のように近い距離から
ドローンを飛ばしてターゲットを狙う場合には、
かなりの精度で本人を確認することができるようです。

 

今回のドローン攻撃では、
イラク側の政府の要人が一緒にいるときには
攻撃をしないように命令がされていたようです。

きちんと、イラクの要人がいないことを
確かめてから攻撃を実行したということです。

 

北朝鮮の体制の保証を主張してきた
金正恩委員長に対して、
米国のボルトン前大統領補佐官は、
「斬首作戦もあり得る」と述べてきました。

その言葉の意味と重みを、
金正恩委員長は今寒気とともに
痛感していることでしょう。

米国は対立するイランと北朝鮮とに対して、
両面作戦は避けたいという思惑があると
言われてきました。

 

金正恩委員長の頭の中にも、
そのような算段はあったかもしれません。

しかし、今回のようにドローンを飛ばして
殺害するくらいであれば、負担も少ないため
「両面作戦」を展開することも十分に可能でしょう。

 

米軍によるソレイマニ司令官の殺害を、
金正恩委員長はそうした米国側の
強いメッセージとして受け取ったのだと
私は思います。

 

 

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