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大前研一ニュースの視点

イラン情勢/北朝鮮情勢/日中関係 ~強大になった中国との外交は独自路線を取るべき

・イラン情勢 拘束女性死亡への抗議デモ収束せず
・北朝鮮情勢 北朝鮮が弾道ミサイル発射
・日中関係 国交正常化50年でレセプション



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▼SNSが抗議デモを後押し
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イランでスカーフの被り方をめぐり
当局に拘束された女性が
死亡した問題で、
先月17日に発生した
抗議デモが各地で続いています。

国際人権団体の
アムネスティ・インターナショナルによると、
30日までに死者は52人、
負傷者は数百人に上ることが
わかりました。



警察による暴行を疑う見方が
SNSで拡散したことなどが要因で、
イスラム法の厳格な遵守を求める
保守強硬派のライシ政権が
対応に苦慮しています。
    
死亡した
マフサ・アミニさんに対しては
かなりの暴行があったと
言われており、
デモ隊と警察も
派手に衝突したようです。



もともと
サウジアラビアや
アラブ首長国連邦(UAE)の
一部の首長国に比べると、
イランは女性の服装について
そこまで厳格ではありませんでした。

しかし、
SNSでデモの様子が世界中に広がっており、
どのように収束を図るのかが
難しいところまで
エスカレートしているのが現状です。

 




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▼同じ対応を繰り返しても事態は改善しない
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韓国軍合同参謀本部は
先月29日、
北朝鮮が日本海に向けて
弾道ミサイル2発を発射したと
発表しました。

これについて浜田防衛相は、
いずれも最高高度約50km、飛距離は約350kmで、
日本の排他的経済水域(EEZ)の
外に落下したと推定。



2日連続の発射については
例がないとし、
「国際社会の平和と安全を脅かすもので
断じて容認できない」と
非難しました。
    
今年に入ってから
約2週間に一回のペースでの
ミサイル発射です。



そのたびに
緊急安全保障理事会を
開いていますが、
そろそろ対応を
変えるべきなのではないかと
考えます。

毎回「断じて容認できない」
というようなコメントを
出してはいますが、
状況は変わっていません。



報道に関しても、
NHKはミサイルと地震だけは
毎回テロップを出して
速報で報じますが、
ぼんやりと見ていた気分が
少し改まる以上の効果はありません。

無視する方向なのか、
米韓と協調して
なんらかの
厳しい措置をとる方向なのかは
わかりませんが、
何か対応の変化をつけるべきです。

 




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▼強大になった中国との外交は独自路線を取るべき
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日本と中国が国交正常化した
日中共同声明の調印から
50年となった先月29日、
都内のホテルで
記念のレセプションが
開かれました。

レセプションでは
林外務相、福田元首相、
孔鉉佑駐日中国大使が
挨拶したほか、
岸田総理と習近平国家主席が
メッセージを寄せ、
建設的かつ安定的な関係構築等を
呼びかけました。


    
50年前の
田中角栄と周恩来とのミーティングは
歴史的な出来事でした。

とはいえ、
国民党の中華民国・台湾を排除し、
共産党の中華人民共和国を
正統としたのは
間違いだったと私は考えます。



キッシンジャーとニクソンが
日本の頭越しに
中国と手を結んだ経緯がありましたが、
日本は焦って
追随するべきではありませんでした。

そもそも、
国連の常任理事国は
共産党の中華人民共和国ではなく、
国民党の中華民国・台湾でした。



第二次世界大戦の戦勝国は
中華民国だったからです。

それが共産党に追われ
台湾に逃れ、
ニクソンが中国と手を結んだ際に
国連からも追われるわけですが、
その時点で
共産党の中華人民共和国には
常任理事国を引き継ぐ正当性は
なかったはずです。



それを、
なんの正式な意思決定もなく
常任理事国としてしまったのも
間違いでした。

これは、
ソ連崩壊の際に
ロシアを常任理事国として
拒否権を持ったまま
残してしまったことも同じで、
そのせいで
ウクライナ侵攻や4州併合という
暴挙があっても
国連が機能しないという、
現在進行形の問題を生み出しています。



日中国交正常化の当時は
中国は貧しい国でした。

日本は台湾・中華民国に
戦後賠償という形で
支援していましたが、
中華人民共和国にも
支援をする必要が生まれたため、
二重の賠償にならない工夫が
求められました。



そこで採用されたのが
政府開発援助(ODA)という形で、
これが田中派の利権になったという
歴史があります。

日中のGDPについて、
1980年代には
日本が中国を大きく上回っていましたが、
2010年に逆転し、
いまでは中国のGDPは
日本の約2.5倍となっています。



広大な市場と廉価な労働力は
日本経済にとって必要不可欠なものになり、
時に政府から、
時に大衆から攻撃されながらも、
日本企業は中国進出を続けました。

今では中国にある日系企業の拠点数は
2018年の時点で3万拠点以上と、
米国の3倍以上となっています。



また、
中国が経済的に台頭するにつれ、
国家としてのパワーバランスも
変化しました。

日本の防衛費は
GDPの1%という制約があり、
かつGDPも成長していないため、
ずっと約500億ドルでした。



それを中国は
2000年代初頭に颯爽と抜き去り、
2020年には約3,000億ドル近くにまで
増加しています。

また、
尖閣諸島海域への中国公船の侵入も、
それに比例するように増加しています。
    
日中の2000年の歴史に及ぶ交流は
大切にするべきですし、
国交正常化50周年も
祝うべき記念だとは考えます。



ですが中国は
もうかつての貧しい中国ではなく、
予測不能で強大な隣国でもあります。

習近平の強権がさらに強まり、
プーチンのような独裁者になる可能性も
警戒しなくてはいけません。

今後の米中対立は避けられず、
そうなれば日本と米国との利害は
これまで以上に
一致しなくなるはずです。



いつまでも米国追従の中国外交では
日本に利はありません。

国交正常化50周年を機に、
独自の中国外交が
展開できるようになることを
期待します。

-大前研一ニュースの視点