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大前研一ニュースの視点

人材育成/賃上げ政策/行政デジタル化 ~企業への賃上げ政策は、愚策中の愚策

・人材育成 「教育未来創造会議」初会合
・賃上げ政策 賃上げ企業、入札で優遇
・行政デジタル化 法令4万件、AI検証



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▼真の人材育成のためには、文科省による「支配」からの脱却が必要
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政府は先月27日、
教育未来創造会議の初会合を開きました。

その中で岸田首相は
「人への投資は成長の源泉。
誰もが夢や希望を持てる未来を創造できるように
教育や人材育成に
政府一丸となって取り組んでいく」
と表明。



遠隔授業で取得できる単位数の上限緩和や,
大学の学部再編で
文系、理系の枠を超えた人材育成に
取り組む考えを示しました。

「人への投資は成長の源泉」という趣旨には
賛成ですが、
具体的な取り組み内容には全く賛成できません。



私に言わせれば、
文科省そのものを廃止すべきだと思います。

文科省が定めているルールや指導要綱には
今の時代に合わないものが
たくさんあります。

そして、
そのルールに適した学校が
補助金などで優遇されるというのも
おかしいと思います。



極端な言い方になりますが、
今の制度は
文科省が「お金で支配する」仕組みだと
感じます。

もっと公平にすべきで、
教育を受ける人に
直接的にお金などを渡せば良いですし、
その意味では私立公立の差も
なくすべきです。



一人ひとりの個性が
大事になっている時代において、
これからは学校もそれぞれに
個性を持つことが重要になってきます。

「教育未来創造会議」のメンバーを見ましたが、
個性的な学校を創り
人材を育成できるのかと言うと、
率直に言って全く期待できません。



この人たちには
人材を育成してきた経験があるのでしょうか。

文科省の言うことを聞く人間を
お金で支配するようなやり方は、
絶対にやめるべきです。

私は20年以上前から、
この構造に憤りを感じています。

 



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▼DX人材の活用は、アウトソーシングと育成を使い分ける
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昨今、
特に「DX人材の不足」という問題を抱えていて、
その育成を考えている企業も多いでしょうが、
自社で育成することに執着せず、
アウトソーシングと使い分けることが
重要だと私は思います。

そのためには
DX人材のスキルによって
分けて考えると良いでしょう。



すなわち、
ITシステムなどを構築する際に必要なスキルと、
その後システムをメンテナンスするスキルは
違うものであり、
それぞれの人材について
分けて考えるということです。

世界を見渡せば、
非常に高いスキルを持ったDX人材に
仕事を依頼することができます。



例えば、
コンサルタントなどに
彼らと交渉してもらいます。

そして、
ITシステム開発を
世界中の極めて高いスキルを持った人材に
一時的に手伝ってもらって
システムを構築します。

その後のメンテナンスは
社内で抱えたDX人材で
対応していくということも
十分可能です。



全ての人材を
社内で育てるというのは無理があり、
特にシステム構築系の優れたスキルを持つDX人材は
会社に所属しても
なかなか上手くいかないこともあります。

文系で理屈ばかりの上司の下について、
「ガラスの天井」に
ぶつかってしまうのです。


今の時代に合わせて、
アウトソーシングと人材育成を
上手に使い分けることが
重要だと思います。

 




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▼企業への賃上げ政策は、愚策中の愚策
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日経新聞は先月28日、
「賃上げ企業、入札で優遇」
と題する記事を掲載しました。

2022年4月以降の政府調達の入札で
賃上げを表明した企業を
優遇する方針だと紹介。



先に決定した2022年度税制改正大綱にも
賃上げ企業の控除率引き上げなど
優遇税制が盛り込まれており、
政府が企業の賃上げ実現に向けた対応を
強化するとしています。

岸田首相とその取り巻きの人たちには
呆れるばかりです。



企業が単に賃上げをしても、
生産性を改善していなければ
収益は悪化します。

こんな基本的なことすら
理解していないから
大手を振って
賃上げを要求するのでしょうが、
呆れて物が言えません。



さらには、
賃上げ企業には
入札で優遇するとのことですが、
優遇措置のためのお金は
誰のお金でしょうか。

もちろん税金でしょう。



国家の財政を使って
賃上げさえすれば
企業を優遇するということですから、
とんでもない話です。

これは国家権力の濫用であり、
こんなことが新聞に出ても
誰も批判しないというのも
おかしい事態だと思います。

 




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▼デジタル時代に合わせて、法の精神を根本から見直すべき
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日経新聞は先月30日、
「法令4万件、AI検証 改正急ぐ」
と題する記事を掲載しました。

岸田首相が
書面や対面手続きの原則廃止へ向けて
法令4万件を見直すと表明したのを受けて、
政府がリーガルテック企業と連携し、
改正すべき箇所を
AIで抽出する作業に入ったと紹介。



現在は職員が条文をキーワードで検索して
該当箇所を探すなどしていますが、
AIの活用により
作業の効率化を図るとのことです。

法令4万件の検証よりも、
法律そのものを書き直す必要があると
私は思います。



実際、私はマレーシアで、
約25年前に
法律を全て書き直すという作業を
やったことがあります。

今回、AI検証の対象となった4万件は
「文章を残す必要がある」
「添付書類が必要」など
特定の部分について
電子的な対応でも可とするように
改めるもので、
要するに部分的な書き直しに過ぎません。



そうではなく、
法の精神・考え方そのものを
デジタルに合わせて組み直す必要があると
私は思います。

そうすることで
抜本的に解決される問題が
たくさんあるはずです。



例えば、
医師会はオンライン診療などに
反対していますが、
オンライン診療の診療報酬の方が高くなれば
一気に風向きは変わると思います。

あるいは、
CADシステムで入力したデータを元に
建築可能かどうかを判断できるよう
建築基準法を改正すれば、
大半は電子的な作業のみで完結します。



今のように分厚い書類も不要ですし、
審査も数秒で終わるはずです。

実際にこのようなことを
実現している国もあります。

ところが日本では、
構造計算書偽造問題となった姉歯事件後、
さらに第三者による見直しが必要となり、
納期が大きく遅れる事態を招きました。



21世紀になったのに
石器時代に戻ってしまったレベルの話だと思います。

今のデジタルの時代に合わせて、
ぜひ法の精神・考え方から
根本的に見直すべきです。

 

 

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