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大前研一ニュースの視点

参院選/医療改革/芸術振興 ~政策立案能力のない連合と自民党が馴れ合っている残念な状況

・参院選 7月10日投票へ選挙戦開始
・医療改革 医療制度、サービス改革へ最終報告まとめ
・芸術振興 「パーセント・フォー・アート」を推進


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▼結果が目に見えている選挙
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第26回参議院選挙が22日に公示され、
7月10日の投票日に向けて
18日間の選挙戦に入りました。

選挙には全国で545人が立候補。



新聞各社の世論調査によると、
自民公明の与党が
改選過半数の63議席に達するほか、
非改選を含めた定数の過半数である
125議席も上回る勢いだということです。

私としては
残念な結果になりそうな見通しです。



自民党、公明党、
国民民主党、維新の会が
憲法改正賛成でまとまり、
社民党と共産党が反対に回る。

政党ごとの違いもほとんどなくなり、
代り映えのしない面々による
結果が目に見えている選挙になりそうです。



ただ、
物価高に対しての不満は
かなり高まってきているので、
与党の圧勝とは
いかないかもしれません。

自民党は
ノイジーマイノリティの寄せ集めであり、
サイレントマジョリティのための
国づくりをしようという気が
ありません。



これまで私は何度も
サイレントマジョリティの
重要性を主張し、
そのための政策集を書いてきました。

一時は民主党が
実現にむけて
取り組んでくれていましたが、
今では政策立案能力のない連合と
自民党が馴れ合っている
残念な状況になっています。



今回の参院選には間に合いませんが、
私の政策提言を年内にまとめて
出版したいと考えています。

「平成維新」の時には
100人以上の政治家が賛同してくれましたが、
その時の83法案は
ほとんど実現していません。



現状を鑑み、
いま一度私の提言をまとめて
世に問うことで、
志を共にしてくれる人たちが再び集まり
動き出せたらと思っています。

また、
投票率の低さについても、
何かしらの対策を検討すべきでしょう。



オーストラリアやシンガポールのように
投票しなかった場合は
罰金や出頭を命じる手もありますし、
最近政府が多用しているポイント制度を
投票時のインセンティブとして
付与する方法もあります。

コロナワクチンのように、
投票していない人には
移動の制限を課すなども
有効かもしれません。



いずれにせよ、
なんらかのゲーム性があれば
投票率は改善するはずです。

 



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▼医療制度の問題に鋭い提言
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日経新聞社と日本経済研究センターが、
医療改革のための提言を盛り込んだ
最終報告をまとめました。

デジタル技術を医療改革に生かす
ヘルスケアトランスフォーメーションをテコに、
岩盤規制を撤廃し
患者本位の医療に転換することなどを
政府に求めたものです。



医療提供体制の再構築や
医療イノベーションを
国家戦略に据えることの必要性などを
訴えているということです。

非常によくできたレポートだと評価します。

新型コロナの流行で
医療の人的資源が足りなくなる問題が生じ、
米国では薬剤師まで注射が打てるようにした今、
「看護師にも医療行為ができるようにする」と
提言することは有意義でしょう。



また、
コロナワクチンを
すべて輸入に依存した現状を鑑みれば、
国家安全保障の視点から
医療イノベーションを
国家戦略に据えることは
必要不可欠です。

特に重要なのが
大きく膨らんだ医療費と社会保障費を
抑制する提言です。



土建国家とまで言われた
日本の公共事業関係費は
2022年で歳出の6.1%にとどまる一方、
社会保障費は36.3%を占めています。

日本の債務残高は1,000兆円を超えており、
また対GDP比では
英米は100%前後なのに対し
日本は250%程度と抜きん出て世界一です。



もはや軽微な不調や、
自分の選択に起因する病気やけがに
社会保障費を充てる余裕はありません。

その点で、
私が以前から
「健康保険の適用範囲を定義する」
と提言してきたことと
今回の
「患者側にも節度を求める」という提言は
通ずるものがあります。



加えて、
健康保険の負担者と受益者との
不平等を考えれば、
年齢より
能力に応じた負担に変えることは
当たり前にやるべきことです。

惜しむらくは、
日経新聞がこうしたレポートを
社としての立場や意見として
明確に打ち出していない点です。



日本経済研究センターが
レポートとしてまとめたところで
日本は変わらないですし、
日本医師会も馬耳東風です。

せっかくポイントを突いた
良いレポートになっているので、
日経新聞はこれを元に紙面構成を工夫し、
日本を良い方向に改革する
後押しをしてほしいと私は考えます。

 




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▼自治体議員の新たな利権になると危惧
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経済産業省が
「パーセント・フォー・アート」と
呼ばれる活動を
広げる見通しが明らかになりました。

地方自治体や企業に対し、
公共建築等の建設費の1%ほどを
公園や病院などの
アート作品に振り向けてもらうことを
目指すものとなっています。



ヨーロッパでは
歴史的建築物などが公共の資金で整備され、
美しい街並みと芸術を
市民に提供していますので、
日本でも同様の取り組みを
していこうという考え方は
理解できます。

しかし、
日本の政治風土の下で
同じことが出来るかどうかは疑問です。



日本でこれをやろうとすると、
必ずギャラリーと結託した
自治体の議員が暗躍します。

以前美術館で
5億円程度の美術品を所蔵する際に、
購入プロセスが疑問視されたことがあり、
1億円を超える作品の購入は
説明と開示が必要だという
透明性確保のルールが制定されました。



すると今度は、
所蔵品が1億円ギリギリの
作品ばかりになったのです。

アートに限らず
日本の公共施設は
一事が万事この調子で、
自動販売機ひとつに至るまで
利権の温床となっています。



私に言わせれば、
「パーセント・フォー・アート」のような
取り組みをするなら、
自治体議員が蠢く
利権政治の風土を改革するのが先です。

設置する作品は
複数の市民代表や
もしくは利害関係のない
複数のキュレーターに選んでもらうなど、
利権の入り込む余地のない制度設計も
必要でしょう。



さもなければ、
その1%は議員と政商の懐に収まり、
価値が定かではない絵画や
意味不明な彫刻が設置されるだけです。

建築物を管轄する国土交通省でも
自治体を管轄する総務省でもなく、
経済産業省が主導しているあたり、
そもそも利権のために
推進しているのではないかと
邪推すらしてしまいます。

 

 

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