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大前研一ニュースの視点

日台関係/香港情勢 ~香港の民主化を止めた中国を、欧米式で批判しても逆効果

・日台関係 自民、強まる台湾重視
・香港情勢 香港民主化の歩みに幕

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▼米国に流されて台湾を重視する日本の姿勢には疑問
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日経新聞は5日、
「自民、強まる台湾重視」
と題する記事を掲載しました。

自民党内で台湾との関係を重視する動きが
強まってきました。

 

米国のバイデン政権を始めとする
国際社会と連携し中国に対抗する一環で、
外交部会は台湾情勢を議論する
プロジェクトチームを2月に新設し、
台湾との経済や議員交流の在り方を
検討しているとのことです。

 

やり過ぎると
中国との緊張感が高まる結果を招くので、
これは非常に難しい問題だと思います。

今の米国はその「加減」を
わかっていないように感じます。

 

法律的に見ると台湾を守るということに
大義名分はありますが、
この数十年間、
自民党や外務省はどちらかと言えば、
台湾と距離を置き
中国寄りの姿勢を示してきました。

 

田中角栄氏以降の
日本の政治家の多くは中国寄りで、
二階幹事長はその代表格と言えるでしょう。

長年逆の立場をとってきたのに、
急に方針を転換しているという印象です。

 

外務省の役人にとっても
台湾はそれほど重視する対象ではありません。

外務省の役人の夢は「大使」になることですが、
台湾には大使が存在しないからです。

結局、彼らは中国大使になることを目指します。

 

チャイナスクールの人は必要以上に中国寄りで、
極端に言えば、日本の国を守るよりも、
中国の重要人物に寄り添うことを
重視している人が多いとさえ感じます。

この数十年の台湾を見てきて感じるのは、
台湾は政治的には「空き地」のような
存在であるということです。

 

かつての中華民国総統で
「台湾民主化の父」と称された李登輝氏が、
来日を強く希望していたことがありました。

私は台湾の経済アドバイザーを
務めていたこともあり、
何とか実現しようと手を尽くしました。

 

当時から知り合いだった
小渕恵三氏に依頼してみたり、
私個人の友人として遊びに来るという
形式をとってみたり、
あるいは京都大学の同窓会に参加するという
名目を作ってみたり、
さんざん手を尽くしましたが、
いずれも外務省から承諾を得られませんでした。

 

そんな台湾に対して、
米国が台湾寄りに動き始めたことを受けて、
急に日本も体制の整備を進めています。

台湾は重要な国ですから、
今の方向性自体を私は悪いとは思いません。

 

しかし、歴史的な流れを考えると、
自民党が今このタイミングで
台湾に寄り添うような動きを見せるのは、
米国に悪乗りしているだけ
という気がしてなりません。

 

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▼香港の民主化を止めた中国を、欧米式で批判しても逆効果
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日経新聞は5日、
「香港民主化の歩みに幕」と題する記事を掲載しました。

中国で開幕した全人代で
香港の選挙制度の見直しが議論されます。

 

愛国者による統治を旗印に
中国共産党に反対する民主派の排除を
狙ったものですが、
民意を反映しない政治システムは
国際金融都市からの
人材流出を招きかねないとしています。

中国はこっそりと様々なことを準備し、
一気に実行に移すメンタリティーを持っています。

 

香港についても、
「どのみち50年経ったら
中国になるのであれば20年省略してしまおう」
というのが習近平国家主席の考えであり、
それを今回一気に推し進めました。

中国共産党の愛国者でないと
立候補できないとなると、
香港の民主化運動に参加した履歴がある人などは
一切ダメになります。

 

「一国二制度」「選挙」などというのは
全く意味をなさない言葉になってしまいました。

そもそも中国には選挙がないわけですから、
選挙そのものに対する考え方が
根本から異なるのだと思います。

 

1997年に英国との間に締結した
二国間での協定も完全に無視する形です。

二国間での協定で規定されていた
「香港の高度な自治権」なども夢と消えました。

 

50年の約束を27年残して
強引に破棄されてしまったのですから、
結果だけを見れば
上手く英国が中国に乗せられてしまった
ということになるでしょう。

こうした中国のやり方に対して、
特に欧米からの批判が相次いでいます。

 

しかし、欧米型の締め上げ方では、
中国の反発を助長するばかりで、
逆に中国は隙を見せまいと身構えてしまいます。

中国の指導部は必ずしも一枚岩ではないので、
中国国内でも様々な意見が出ている話題について、
議論を進めるほうが効果的であり、
習近平国家主席の示す
「強さ一点張り」ではない部分に
くさびを打ち込むことができると私は思います。

 

 

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