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大前研一ニュースの視点

エイチ・アイ・エス/ポイント経済圏/SBI新生銀行/NTTグループ ~NTTの今後に注目すべき取り組み

・エイチ・アイ・エス 澤田秀雄会長が退任
・ポイント経済圏 資本・業務提携で合意
・SBI新生銀行 コンビニATMの出金手数料を無料に
・NTTグループ システムなどの弱点報告者に報奨金



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▼海外旅行ブームを支えた辣腕経営者
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旅行大手のエイチ・アイ・エスは
先月26日、
創業者の澤田秀雄会長が
2月1日付で退任し、
取締役最高顧問に就任すると
発表しました。

新型コロナ禍で
主力の海外旅行事業が打撃を受ける中、
ハウステンボスの売却等の
構造改革で
一定の成果が出たと判断したもので、
矢田素史社長が続投し、
澤田氏が兼務してきたグループCEO
を引き継ぐとのことです。

澤田氏は、
航空会社が独占していた海外旅行業界に
メスを入れた方です。

安い航空チケットを販売し、
航空会社からは
目の敵にされた時代もありました。

しかし、
やがて主導権は
エイチ・アイ・エス側に移り、
我々は安い値段で
海外に行けるようになったという
経緯があります。

例えば、
かつて宮崎はハワイ気分を味わえるとして
新婚旅行に大人気だったのですが、
エイチ・アイ・エスが主導権を握った後は
実際にハワイに行った方が
安いという現象まで
起こりました。

私も向研会では大変お世話になりました。

新型コロナ禍で
主力の海外旅行、
いわゆるアウトバウンドが
大打撃を受けました。

ハウステンボスも中途半端な形で
ファンドに売却してしまいました。

「自分がやった事業は
失敗したことがない」が
口癖の方でしたが、
最後は感染症の大流行で
会長職を退く形になりました。




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▼「人を集める天才」は時代の変化にも強かった
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先月27日、
三井住友フィナンシャルグループと
カルチュア・コンビニエンス・クラブは
資本業務提携で合意しました。

両者のVポイントとTポイントを
2024年春に統合するとのことで、
ポイント経済圏の競争が激化する中、
知名度と決済という両者の強みを融合し
楽天グループ等に対抗する考えです。

カルチュア・コンビニエンス・クラブの
創業者の増田宗昭氏は、
エイチ・アイ・エスの澤田氏と共に、
立教大学の野田一夫教授の下で
ベンチャー経営を学んだ人です。

米国のタワーレコードをはじめ、
ビデオレンタルの事業には
逆風が吹き荒れていますが、
増田氏は書店に軸足を移しながら
耐えています。

増田氏の強みは、
人を集める天才であることです。

例えばベルコモンズという
青山にあった
女性服飾のショッピングセンターは、
増田氏が鈴屋の社員時代に
プロジェクトメンバーとして
手掛けたもので、
私も大好きな中華料理店を
テナントに入れるなど、
人を集める工夫を凝らして
大成功しています。

蔦屋書店も、
本質は人を集める仕組みであり、
その才によって今、
同門の澤田氏と
明暗が分かれたような形になりました。

とはいえ、
書店の将来性は薄く、
最後に残った武器が
Tポイントだったと分析します。

その武器も銀行と組むことによって、
生き残りの道を
探すしかないという状況だと
考えられます。




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▼預金獲得の王道だが長続きはしない
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SBI新生銀行は先月24日、
コンビニエンスストアに設置されている
現金自動預け払い機(ATM)の
出金手数料を、
2月6日から
無料にすると発表しました。

同行は去年6月から
定期金利を
これまでの10倍に引き上げるなどの
リテール戦略の転換を図っていますが、
将来の日銀の利上げを見込み、
積極的な預金獲得戦略を
継続する考えです。

高い金利で預金を集めるやり方は、
かつて新生銀行やあおぞら銀行も
採用した戦術ではあります。

しかし長続きはせず、
新生銀行はSBIの傘下に入りました。

そのSBIもまた、
同じ戦術を繰り返そうとしています。

高金利を謳う銀行の中では、
ソニー銀行などは
実店舗を持たないといった
高金利にできる仕掛けを持っています。

しかし、
そうした仕掛けのない
SBI新生銀行では、
手数料無料や高金利は
長続きしないと考えます。

SBIはお得感を打ち出して
顧客を集めることに
長けていますが、
集めるだけ集めたら
値上げをためらわない
企業文化もありますので、
そのうちに
手数料は有料になるし、
金利も下げてしまうと
予想します。

とはいえ、
実際に預金は集まると予想されます。

将来手数料や金利が
元に戻ったとしても、
預金者としては
元が取れていれば
満足できるのかもしれません。




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▼制度の運用・リスク管理にも注目すべき取り組み
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NTTグループが、
システムやセキュリティーの
弱点を見つけた報告者に対し、
報奨金を支払う
バグバウンティと呼ばれる制度を
社員向けに導入することが
わかりました。

副業として
業務委託契約を結び、
1報告あたり
最大数十万円の報奨金を
支払うとのことで、
意欲ある人材の発掘や、
サイバー防衛スキルの育成にも
つなげる考えです。

私もゲーム会社で働いていた際、
バグを発見する作業には
苦労しました。

従業員から
バグはもう無いと報告を受けても、
いざ発売する時になって
大量のバグが見つかる事態が多発し、
サラリーマンは
デバッグに向いていないと
痛感しました。

そこで、
発売1か月前くらいに
500人くらいの学生を集めて、
ひたすら遊ばせるという方法を
とったところ、
チェック作業では見つからないバグが
次々に発見されたという
経験があります。

副業として
バグを探してもらう仕組みは、
マイクロソフトやグーグルで
採用されている
有効な手法ではありますが、
大きなリスクも存在します。

悪質な開発者が
バグに気づきながら放置したり
故意に埋め込んだりしたものを、
仲間に発見させて
報奨金をだまし取る
社内犯罪を誘発する可能性があります。

そのため海外では、
抜き打ち検査や
アクセス履歴のチェックなどの
性悪説にもとづいた
厳しい管理の元で導入されています。

NTTは管理体制も整っている会社なので
心配はしていませんが、
他社が模倣しようとするときには
注意が必要です。

リスク管理の手法も含め、
どれだけデバッグ作業を
効率化することができるのか、
今後に注目すべき取り組みです。

 

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