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大前研一ニュースの視点

世界自動車大手/EU情勢~迷走する英国に残された選択肢

2019/03/28

・世界自動車大手 「合意なき離脱」なら英生産撤退の可能性
・EU情勢 「今こそ欧州ルネサンスの時」

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▼期日が迫る英国のEU離脱。英国が取れる選択肢は?
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トヨタ自動車は6日、英国のEU離脱が「合意なき離脱」になった場合、
2023年以降に英国の生産から撤退する可能性があることを示しました。

EU離脱でEUとの間で完成車や部品の取引に関税が発生し、
英国の競争力が低下するためです。

企業は自衛の姿勢を強めている現状です。

インドのタタ自動車の傘下にあるジャガー・ランドローバーは、
約4,500人の人員削減で大幅な縮小路線を示し、
日産はインフィニティ、BMWはMINIの生産中止を発表しています。

ホンダ、トヨタも追随する動きを見せており、
ボクスホールのみが残るという状況になりつつあります。

40~50万台の自動車を生産していた企業が、
次々と大規模な削減や撤退をするわけですから、
英国内は大変な状況になってしまうでしょう。

その原因になっているのは、もちろん英国のEU離脱問題です。

離脱までの期限が迫る中、英議会下院は14日、
EUからの離脱の延期をEUに求める政府動議を可決しました。

メイ首相の不人気な離脱案を20日までに承認し、6月30日までの
延期を経てEUを離脱するか、さもなければEUが設定する条件に従い、
長期の離脱延期を余儀なくされるか議会に選択を迫る内容です。

21日に始まるEU首脳会議の前に、依然として予断を許さない情勢です。

英国側は3月29日から6月30日までの延期を要請するとしていますが、
EU側からすれば、延期の明確な理由も示さずに
何を勝手なことを言っているのか、というところでしょう。

英国は議論の必要性を強調するかもしれません。

しかし、EUが合意できる内容は数年前に英国議会で否定されているので、
英国側の主張を鵜呑みにできないのも頷けます。

英国が取れる選択肢は2つあります。

1つは6月30日までの延期。

ただし、これにはEUの承認が必要です。

EUに承認されなければ、このまま3月29日がデッドラインに
なってしまいます。

もう1つの選択肢は離脱そのものを引き下げるというもの。

届け出そのものを引き下げれば、
英国民は落ち着いて再度話し合いをすることができます。

現在の状況からすると、野党を含め「再投票」に傾いており、
離脱ではなくEUに留まるという意見が約6割に達するのではないかと
見られています。

そのような結果になれば、以前の離脱合意の国民投票は
何だったのか、という意見もありますが、私に言わせれば、
2年半前のことであり、当時は議論が不十分だったと思います。

当時の英国民は、アイルランドの国境問題を筆頭に
EU離脱で生じる問題について十分に理解していたとは言えません。

ビジネスウィーク誌は、メイ首相は何とかEU離脱を
成し遂げるのではないかという論調の記事を掲載しているようですが、
私にはそうは思えません。

おそらく、一度EU離脱を引き下げる状況になり、
国民投票をすることになるでしょう。

そして、その状況になればメイ首相は辞表を出すしかないと思います。

私は当時から、再度国民投票をするしかない、と述べてきました。

3月29日の期限が迫り、いよいよ英国にはその道しか残されていないと
あらためて感じます。

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▼足元がおぼつかなくても、大胆な提案を繰り広げるマクロン大統領の二面性
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フランスのマクロン大統領は5日、EU加盟国の主要紙に寄稿し、
「今こそ欧州のルネサンス(再生)の時だ」と呼び掛けました。

5月の欧州議会選に向け、域内で勢いづく
右派ポピュリズム(大衆迎合主義)への警戒した内容で、
欧州の民主主義をサイバー攻撃や偽ニュースなどから守る
EU機関の新設などを提案しています。

以下が、マクロン大統領が提案している主な内容です。

・右派ポピュリズム(大衆迎合主義)への警戒
・シェンゲン協定(国境検閲無しで自由往来可能)の再検討
・欧州安全保障理事会の設置
・同一労働・同一賃金を保証するEU全体の社会的な盾の導入
・気候変動対策に融資する「欧州気候銀行」の創設
・デジタル巨人企業へのEUレベルでの監督体制の創設
・EU主要機関や加盟国、市民の代表者らが会する「欧州会議」を設置

「欧州会議」と「欧州議会(EU)」は何が違うのか?など、
個別に気になる点も多々ありますが、そもそもナポレオンの帽子をかぶって、
フランス大統領をやっているなどと揶揄されている人が、
よくこのようなことを提案できるものだと思います。

燃料税の導入だけでフランス国民にそっぽを向かれているなど、
足元がおぼつかない状況でも、このようなことを考える余裕があるというのは、
さすがに根っからの「エリート」なのだと感じます。

マクロン大統領の二面性がよく表れていると言えるでしょう。


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