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大前研一ニュースの視点

国内経済/日本生命保険/農林中央金庫/新薬開発

▼国内経済 GDP成長率が年率2%減
給料は上がっても国民が買えるものは変わらない

内閣府が16日に発表した1月から3月期のGDP成長率は、
物価変動の影響を除いた実質が前期比で年率換算2%減少したことが分かりました。

認証不正に伴いダイハツ工業が自動車の生産、
出荷を停止したことなどから、GDPの半分以上を占める個人消費や
設備投資が落ち込んだことなどが響いたということです。

岸田氏は選挙前にいいことを言いたいでしょうが、経済状況は厳しい状況です。

 

 

▼日本生命保険 米コアブリッジに出資
保険加入人口の減少で、国内生命保険会社は今後の方向性を模索

日本生命保険は16日、アメリカの同業、
コアブリッジ・ファイナンシャルにおよそ6000億円を出資すると発表しました。

コアブリッジの発行済み株式、およそ20%を取得し、
持分法適用会社とするもので、
国内市場が先細る中、成長が続くアメリカ市場を取り込む考えです。

日本では生命保険に入ってくれる人口は減少しています。

日本生命はアメリカの同業を取り込み、
ベネフィット・ワンを買収した第一生命は法人福祉事業に注力、
国内の他の生命保険会社よりも優位に立つための対策を行っています。

日本生命は純資産が約10兆円規模(2023年度末)の会社であり、
今回の出資額は10分の1にも満たない金額です。

かろうじて持分法適用会社とはなりましたが、
どうせならば全てを買えばよかったと私は思いますが、
AIGが売ってくれなかったのでしょう。

 

 

▼農林中央金庫 1兆2000億円の資本増強検討
外債運用失敗の他にも、重要事業の利益マイナスなど問題は山積み

農林中央金庫は22日、
総額1兆2000億円の資本増強を実施すると発表しました。

金利上昇に伴い、米国債が含み損を抱え、
運用収支が悪化しているのを受けたもので、損失処理に伴い、
2025年3月期は5000億円超の最終赤字に転落する見通しです。

農林中央金庫によるこのような事態は、二度目です。

農林中金は農業従事者からお金を預かり、
本来なら何もしなければよいのですが、
これだけのお金を持っているのに何もしなければ批判が起こり、
しかし何かをすれば失敗を繰り返します。

そして、その何かとして農林中金はリスクを伴う外債を買いました。

農林中金にはクレバーな人がいないからなのか、
うまい話を持ってくる悪い人に引っ掛かってしまうのでしょう。

それが問題の一つではないかと思います。

農林中金の有価証券評価損益について、株式はプラス方向ですが、
債券はどんどん落ちています。

また農林中金の市場資産運用割合では、
資産のリスク別内訳は海外債券と海外クレジットが多くを占めており、
そして通貨別内訳は約半数を米ドルが占めて、円は約4分の1しかありません。

農協の部門別業績によると、
信用事業で他事業の原資を稼ごうという話なのでしょうが、
税引前当期利益はメイン事業である農業関連がマイナスで、
営農指導については300億円の収入に対して900億円のロスが出ています。

当然のことながら農協にとっては営農指導は重要な事業であるため、
この原資を稼がなくてはなりません。

ちなみに農協には、いかさまと言えるような事案があります。

今、農協の正組合員数は大幅に減っており、
対して農業以外に仕事を持っている准組合員数は
正組合員の数をはるかに超えています。

農協の准組合員になれば金融サービスやガソリン等の物販で
JAの競合サービスよりも有利な条件で利用できる傾向があります。

准組合員となる条件は様々ですが、
基本的に農協の地区内に住所があれば可能です。

 

 

▼新薬開発 新薬届かぬ「治験後進国」日本
汚名返上には、トラウマの乗り越えが必至

日経新聞は先月29日、
「新薬届かぬ『治験後進国』日本」と題する記事を掲載しました。

これは2020年までの5年間に欧米で承認された新薬のうち、
72%が日本で未承認だったと紹介。

日本は多くの被験者を集めて治験を進める環境が十分整っていないため、
国際共同治験の対象国から外されるケースが多いことなどが要因で、
日本は個人の医療費負担が比較的軽い一方、欧米は保険の未加入者が多く、
治験は高度医療を無料で受けるための手段と見なされていることなども
背景にあるということです。

この問題は、サリドマイド事件も一因だと考えられます。

ヨーロッパで承認されたサリドマイドを、
日本で十分な安全性の検証をせずに認可し、
後にヨーロッパで被害が多数報告された後も日本では回収が遅れ、
多くの薬害被害者を出した事件です。

厚生大臣となった菅直人氏が謝罪した薬害エイズ事件にも通底する事件でした。

厚労省は欧米で認められたからと日本で認可すれば、
サリドマイドの二の舞になると考え、
それ故に「治験後進国」となっているのです。

しかし人種を問わず妊婦への投与が問題だったサリドマイドの事件を清算し、
欧米であってもこの国による認可であれば日本で治験を行わずともOKとするなど、
方針を変えていかなければ、とても間に合わないと私は思います。

特殊な疾患がある病気では被験者を見つけるだけでも大変であり、
協力してくれた大学の医師へのお礼も必要となるなど、
余計な時間や手間、費用がかかります。

われわれが理解でき、確かなところがOKを出しているものについては、
日本でも即時に使ってもよいとすべきなのです。

そして、さらなる問題としては、
新薬にどのくらいの点数を付けるのかなど保険適用の壁があります。

これについては海外の事例を見ながら決めていく、
AI利用を行うなどとすればよいと思います。

厚労省は今、治験後進国という状況を打開するために、
サリドマイドの記憶を乗り越えなければなりません。

-大前研一ニュースの視点