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大前研一ニュースの視点

建設業統計問題/デジタル政策/医療制度改革 ~日本のオンライン診療、米国や中国に遅れるばかり

・建設業統計問題 統計データで不適切な取り扱い
・デジタル政策 デジタル化重点計画を閣議決定
・医療制度改革 オンライン診療で応酬



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▼建設業統計問題は正しいルールを定めてやり直すしかない
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国土交通省は先月15日、
建設業の毎月の受注動向などを示す
建設工事受注動態統計で、
データの不適切な取り扱いがあったことを
明らかにしました。



データは事業者から毎月集めていますが、
国交省は都道府県の担当者に対して、
事業者から期限に遅れて
複数の月の報告がされた場合、
直近の1ヶ月の受注額に
合算する形で書き換えるよう
指示していたとのことで、
国交省は他の統計への影響を
検証する方針を明らかにしました。



会計原則で言えば、
売上が計上されたタイミングで
コストも計上されます。

しかし建設工事は
会計年度をまたぐ
長期間に及ぶことが多いため、
この原則をそのまま適用すると、
最初の数年間は何もデータがないまま
最後に一気に売上とコストが
計上されるという形になってしまいます。



実態に近い形になるよう、
例えば4分の1の想定収入とコストを
それぞれ算出して計上するという
ルールを定めます。

本来なら、
財務省がこういったルールを定めて
方針を提示するべきです。



何も計上するものがないという報告や、
数年分の売上を一気に報告するというのは、
おそらく意図的にやっていたことだと
私は思います。

忖度する立場の人たちからすると、
思うがままに数字を調整しやすく、
またとにかく大きな数字として報告するため
二重三重に報告してきたのだと思います。



岸田首相は相違分について
国内総生産(GDP)を
再計算すると言っていますが、
建設工事のデータは1年半で消去されるため、
実際のところ再構築できません。

新しくルールをきちんと定めて、
これからは正しく計上するしかありません。

 




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▼デジタル化重点計画に集まった人材のレベルが低すぎる
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政府は先月24日、
デジタル社会実現のための重点計画を
閣議決定しました。

デジタル化による成長戦略、
地域の活性化、デジタル人材の育成・確保など
6つの分野の取り組みの方向性を示したもので、
現在、税、社会保障、災害の3分野に限っている
マイナンバーの利用対象拡大や
書面、対面の全面的な見直しを
盛り込んだものになっています。



ついでのデジタル化ではなく、
全ての書類について
一から十まで
デジタルで完結させるというものであり、
本当に実現できるなら
非常に良いことだと思います。

しかし、
生体認証すら
取り入れる予定がないというのは
今の時代においてリスクが高すぎますし、
4種類あるパスワードを
あらためて整理する必要があるなどと
言っている状態ですから、
実現性が高いとは思えません。



率直に言って、
このプロジェクトに関わっている人の
レベルが低すぎて、
このままでは
全く成功できるイメージが湧きません。

国が重点計画として定めるというのは
非常に良いことだと思いますが、
そうであれば
もっとレベルが高い人材を集めるべきです。



デジタル庁の求人の中には
「任期1年、稼働日数は週3日~5日」という
非常に甘い条件が提示されているポジションもあり、
本腰を入れて取り組めるのか疑問です。

10年~20年先を見据えて
真剣に取り組むのであれば、
フルタイムで配属するか、
あるいは世界で最高レベルの人たちを
集めるべきです。



本気ではないパートタイムでの雇用、
しかも自ら所属する団体の
利益代表のような人たちを
600人集めたところで、
最初から機能しないでしょう。

こんなプロジェクトに
国の重点計画として
お金を使うのは無駄だと思います。

 




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▼オンライン診療、日本は米国や中国に遅れるばかり
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日経新聞は先月23日、
「オンライン診療で応酬」
と題する記事を掲載しました。

政府の規制改革推進会議がまとめた報告書で、
オンライン診療の普及拡大に向けて
対面より低い診療報酬の見直しや
診療上の優位性を、
厚生労働省の指針に
明記するように求めたとのことです。



一方で日本医師会は
顔色や匂いなど
対面診療でなければ得られない情報があると
主張するなど
オンライン診療の拡大に慎重で、
医療のオンライン化をめぐる鞘当てが
続くとしています。

オンライン診療の推進にあたり、
医師会が反対の立場を取っているのは
昔から分かっていることですが、
医師会側もせめて
「こういう条件なら許可できる」とか
「医師会もここまでの準備ならできる」
といった反応を示すべきだと思います。



兎にも角にも
反対意見を先に言うだけでは
全く建設的ではありません。

医師会は
オンラインでは十分な診療が行えず
正しい判断ができないと主張していますが、
海外に目を向けると
米国や中国などでは既に実現しています。



特に中国では
携帯・スマートフォンで
医師に24時間アクセスでき、
緊急事態なら専門家を紹介するという
非常に優れた仕掛けが機能しています。

私に言わせれば、
日本だけが中国や米国などに比べて
著しく遅れている状況です。



今は新型コロナの問題もあって
通院が怖いという人も多いでしょうから、
オンライン診療を進める絶好の機会です。

実際、診療のオンライン化について
一般の人たちに聞くと
「忙しい人や遠方に通院している人に有用」などと
ポジティブな意見もあります。



一方、診療のオンライン化に
医師はおしなべて
一般人より
ネガティブな意識を持っています。

そのような医師の意見を聞くよりも、
米国や中国のやり方を研究して
「彼らはこうやって実現しているけれども、
日本ではどうすればいいのか?」
というような
建設的な議論を交わすべきでしょう。



少なくとも携帯・スマートフォンで
24時間医師にアクセスして相談できるだけでも
まずは十分ではないでしょうか。

それすらも実現できず
ずっと今のままでは、
日本は世界から遅れるばかりです。

 

 

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