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大前研一ニュースの視点

国内百貨店大手/伊藤忠商事 ~日本の百貨店ビジネルモデルの限界

・国内百貨店大手 タイMBKセンター店を閉鎖
・伊藤忠商事 異例人事のウラにある2大案件のリスク

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▼すでに時代遅れとなった、日本の百貨店ビジネルモデルの限界
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東急百貨店は先月31日、
タイの首都バンコクの店舗を閉鎖しました。

この店舗の来店客は約5割が外国人観光客であり、
新型コロナの感染拡大で
タイ政府が入国を制限したことで
売上が激減したとのことです。

 

今後は、食品や化粧品の小型専門店の出店など
国内に経営資源を集中する考えです。

また三越伊勢丹グループのシンガポール子会社も、
商業の中心地にあるビルの持ち分売却も
検討していることを明らかにしました。

 

新型コロナ感染拡大を閉店の理由としていますが、
実際には違うと私は思います。

日本の百貨店独特の経営能力が衰えた、
というのが本当の理由です。

日本の百貨店の特徴は、化粧品やアパレルなど
幅広い商品と様々なブランドを
取り揃えるというものです。

 

しかし、仕入れやブランド誘致に
特別なノウハウやルートがあるわけでもなく、
肝はロケーションだけでした。

良い立地にあり、
集客さえできれば上手くいくという
ビジネスモデルです。

 

それだけに頼り切ってしまい、
新しいものを提案し提供する力が
衰えてしまったから、
日本の百貨店は利益が出なくなったのです。

かつて伊勢丹にいた業界の有名人が、
シンガポールの一等地に
大きな百貨店を作り上げたときには
話題になりましたが、
もはや「そういう時代」では
なくなってしまったということです。

 

問題は日本の百貨店の経営力ですから、
タイやシンガポールなどの店舗を
現地企業が買い取って上手く経営すれば、
利益を出すことも十分に可能だと思います。

日本の百貨店に経営力が足らないという問題は、
日本国内でも当てはまります。

 

典型例が松坂屋銀座店でしょう。

あれだけ最高のロケーションにありながら、
ギンザシックスに生まれ変わったものの
全くパッとしません。

以前にも増して色々なものを取り扱いすぎて
統一感もなく、
一体何を提供している店舗なのか
わかりづらくなりました。

 

「ギンザシックスで何を売っているか?」
と聞かれて、
明確に答えられる人は
ほとんどいないでしょう。

私はギンザシックスのオープン初日に
足を運んでみましたが、
買い物をしている人はほとんどおらず、
見学している人ばかりでした。

 

LVMH系企業も出資するなど、
オープン前は華やかでしたが、
「こんな状態ではうまくいかないだろう」
と思った通りになりました。

ロケーションに依存し、
飲食店の料金がバカ高いのも
時代遅れだと私は思います。

 

味もメニューも同じなのに、
場所代が高いから
値段が何倍にも高くなっているのです。

こんなやり方はすでに時代遅れで通用しない、
ということにすら気づいていないのでしょう。

 

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▼全体的な業績は好調なのに、岡藤会長の独裁色が強まる伊藤忠の懸念
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プレジデントオンラインは4日、
「『なぜ伊藤忠の社長は3年で辞めたのか』
異例人事のウラにある2大案件のリスク」
と題する記事を掲載しました。

 

伊藤忠商事の岡藤会長兼CEOが
純利益、株価、時価総額で
国内商社トップになるのを機に
一線を退くと見られていたところ、
今年1月鈴木善久社長を交代させると同時に
自身の続投を決定したと紹介。

6000億円を投じた
中国中信(CITIC)との提携案件と
グループの核である
ファミリーマートの不振が要因で、
「三冠王」の今後の展開に
注目が集まるとしています。

 

伊藤忠は他の商社に比べると
アパレルなどコンシューマー系に強く、
新型コロナ感染拡大の影響を受けても、
売上、利益などが安定していました。

他の商社はどちらかと言えば
資源系への依存が大きく、
新型コロナ感染拡大の影響を大きく受けました。

 

それゆえ、伊藤忠はここにきて、
純利益、株価、時価総額で
業界トップに躍り出る勢いを見せています。

ところが好調だった一方で、
問題が発生しています。

 

それは、
岡藤会長自身が立ち上げた
プロジェクトに関わるもので、
いわば「自分で蒔いた種」です。

1つが中国中信(CITIC)との提携案件です。

 

伊藤忠は2015年、
タイ財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループと
共同でCITICに10%ずつを出資し、
日中タイ連合の枠組みを作りました。

しかしこのプロジェクトが全く上手くいっておらず、
おそらく特別損失を計上する状況に
陥っていると私は見ています。

 

そもそもこの三社が共同で
プロジェクトを進めると聞いた時から、
私は三社が集まってやっても
うまくいかないだろうと話をしていました。

というのは、中国のCITICという企業は
「良い案件があれば自分だけでやる」
という体質の会社だからです。

 

つまり、自社だけでやるには
リスクが高い案件のみ
伊藤忠など他社と一緒にやろうとする、
ということです。

それぞれの国の
エキスパートが集まったなどと言いながら、
実態としては自社だけでは手に余る
リスクの高い案件だけを
持ち寄る形になっているのですから、
成功するはずがありません。

 

タイのチャロン・ポカパンは
伊藤忠にとって非常に重要な会社です。

もし三社合弁を解消することになると、
チャロン・ポカパンとの関係性に
悪影響が出てしまう可能性があり、
その点は重要な懸念事項だと思います。

 

もう1つの問題案件が
業績不振に陥っているファミリーマートです。

TOBによって完全子会社化したことが、
完全に裏目に出てしまったと言えるでしょう。

自らの責任で推し進めたプロジェクトなのに、
岡藤会長は続投し、
鈴木社長に八つ当たりをして社長を交代させる、
というのはいかがなものかと私は感じます。

 

岡藤会長の独裁色だけが
強まっている非常に嫌なパターンです。

新型コロナ感染拡大の影響を受けても、
せっかく他の商社に比べると
小さい傷のまま乗り越えられそうなのに、
非常にもったいないと思います。

岡藤会長は自らが蒔いた種について
課題・問題点を明確にして、
次の人にバトンを譲った方が潔いと私は思います。

 

 

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