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大前研一ニュースの視点

国の借金/原子力政策/国立大学 ~日本の借金がどれだけ異常な状況か、改めて認識すべき

・国の借金 6月末時点で1,255兆1,932億円
・原子力政策 次世代原発の工程表まとめ
・国立大学 統合へ向け協議開始


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▼政治家は自らを犠牲にしてでも解決すべき異常事態
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財務省は10日、
国債と借入金、政府短期証券を合計した
いわゆる国の借金が、
6月末時点で
1,255兆1,932億円だったと
発表しました。

3月末から13.9兆円増加し、
過去最多を更新。



国民一人当たりに換算すると、
初めて1,000万円を超えました。

日本が参考にすべき人物として、
ニュージーランドの財政を健全化した
デビッド・ロンギ元首相がいます。

郵政民営化や、
ウッドワンの中本社長が買った
国有林の民営化をはじめ、
様々な国営の事業を売却することで
財政赤字を解消し、
一時は黒字化まで成し遂げました。



しかし、
急激な改革によって
反対派の台頭を招き、
最後は石を投げられるようにして
辞任しています。

私はロンギ氏を高く評価していて、
オークランドにまで
会いに行ったこともあります。



その時にロンギ氏は
「国民は財政健全化のありがたみを
分かってくれていない」と
こぼしていました。

私はロンギ氏の功績をたたえ、
日本にとっても
参考になるということを
伝えましたが、
肝心の日本政府は
まったく参考にしていないようです。



ロンギ氏は選挙の際に、
「今、生まれてきたオリビアは、
生まれながらに
500万円の十字架(借金)を
背負っている」という
コピーを打ち出し、
それを健全化することを約束して
当選しました。

一方で、
今、日本では
子どもが1,000万円の借金を背負って
生まれてくる状況です。

どれだけ異常な状況か、
改めて認識すべきです。

 





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▼安全で安定的なエネルギーのために西村経産相に期待
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経済産業省の審議会は9日、
次世代原発の技術開発に関する
工程表案をまとめました。

既存の原発より安全性を高めた
改良型軽水炉の開発に
最優先で取り組み、
商業運転開始の目標を
2030年代とするほか、
小型で安全性が高いとされる
SMR(小型モジュール炉)は
実証炉を2040年代に
運転することなどを盛り込んでいます。



実現には政治判断が必要な一方、
政府与党内では
原発の利用拡大を求める声が高まっており、
今後の議論の土台となる見通しです。

西村康稔氏が経済産業相になったことで、
少し加速するかもしれないと
期待しています。



次世代原発の種類はいくつかあり、
他の種類の計画では、
核融合の実証炉運転は2050年以降、
高温ガス炉は2030年代に実証炉を運転開始、
高速炉は2040年代の実証炉運転開始を
目指しているとのことです。

核融合に関しては
期待しないほうがいいでしょう。



私が学生だった1960年代からずっと
実用化まで20年と言われていて、
今回も目標が先延ばしされていることから
わかるように、
実用化に向けた具体的な目途は
立っていません。

高温ガス炉については、
三菱重工がここから
水素を取り出すことも研究していて、
目標達成の見通しも明るいと
考えられます。



また、
フランスと共同で推進している
高速炉も実現可能性は十分。

SMRに関しては、
世界中で推進されている流れに
乗り遅れないよう、
スケジュールを組んで
着実に目標達成できるよう
進めていくべきです。



改良型軽水炉は、
ウェスティングハウスが開発した
PWR(加圧水型原子炉)の
AP1000という炉を
中国が数多く作っています。

日本も早くこのタイプの炉を建造し、
少なくとも技術的な後れを
取らないようにする
必要があります。



日本は現在、
長期間使用してきた原子炉の
使用年数を伸ばすような方向にも
動いていますが、
その方向性には賛同できません。

古い原子炉を延命するより、
最初から高い安全性が期待できる
新しいタイプの
PWR、SMR、高温ガス炉の
実用化を目指していくべきだと
私は考えます。

 



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▼統合だけでは異分野融合研究の活発化は期待できない
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国立の東京医科歯科大学と東京工業大学は
9日、
統合に向けた協議を開始すると
発表しました。

互いに強みを持つ医療、工学など
異分野融合の先端研究を展開し、
政府が年間数百億円を支援する
国際卓越研究大学に
選ばれることを目指すものです。



今後合同会議を設置し、
運営法人の傘下に
2つの大学を置くのか、
あるいは1つの大学とするかなど、
具体的な方針を
決定するということです。

統合の成果がでるかどうかは、
お互いの活かし方次第だと考えます。



大学統合の先例は多くあり、
最近では
慶應義塾大学と共立薬科大学が
統合しました。

ですが、
共同研究が活発化したという話は
特に聞きません。

私は東京工業大学の出身ですが、
学部が違う機械工学と
原子力や電子工学などとは、
同じ大学内であっても
全然協力していませんでした。



「組織に横串を刺す」ことを
目指すリーダーは
企業にもたくさんいますが、
上手くいくケースは
ほとんどありません。

大学も同じです。

逆に、
量子コンピュータ分野の優れた博士は、
他大学からの
共同研究の依頼がくることはもちろん、
カナダなど外国の大学とも連携して
研究を進めていました。



私もMIT(マサチューセッツ工科大学)で
研究していた経験がありますが、
研究者からすれば
共同研究の相手は
どこの国のどこの大学でも、
どこの企業の研究所でも
構わないというのが本音です。

それを踏まえれば、
統合前の時点で
東京医科歯科大学と東京工業大学との
優れた共同研究の話を聞かない時点で、
あまり期待できないのではないでしょうか。



統合の目的が
国際卓越研究大学に選ばれることなら、
他にも研究を活発化できるような
アイデアを実行する必要があります。

仮に、
ただ統合しただけで
要件のようなものを満たし、
国から支援金を
もらえるというのであれば、
制度に不備があると
言わざるを得ないでしょう。

見る目がない政府の下では、
科学技術の振興も
空回りするばかりという
実例になってしまいます。

 

 

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