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大前研一ニュースの視点

区分所有法 マンションの修繕決議、出席者過半数で可能に

地方都市開発 高層ビル開発、地方に波及
米グーグル ジェフリー・ヒントン氏が退社
AI研究開発 国際規格作りへ新戦略



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▼自治体が主導で解決していくべき問題
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日経新聞は1日、「マンションの修繕決議、出席者過半数で可能に」
と題する記事を掲載しました。

これは分譲マンションの修繕促進のため、
法制審議会が2024年度にも区分所有法の改正を目指す、と紹介しています。

現在は住民集会への欠席を反対とみなすため、
「所有者の過半数の賛成」とする要件が満たされず、決議できない場合がありますが、
これを「出席者の過半数の賛成」に改正することで、マンションの修繕を促し、
価値の低下や所有者離れを防ぐ狙いとしています。

修繕が必要な老朽マンションはここ10年で激増する見込みです。

現在、マンションの建て替え件数は増え続け、年間300戸以上になっていますが、
対して築30年以上のマンションは10年後には400万戸に到達すると算出されており、
これでは全く間に合いません。

住民集会で賛成決議を得られないことが、
修繕が進まない原因のひとつだと考えられるため、
今回その決議要件を緩和することで、
少しでも前に進めようとしています。

修繕が進まないもう一つの大きな要因としては、
住民が費用負担を嫌うというものもあります。

その対策として、韓国では隣接する二つのマンションを一つにまとめることで、
バラバラだった頃よりも容積率に余裕をもたせ、その分の部屋数を増やして
その部屋が産む利益で建て替え費用を賄うということをしています。

老朽マンションが放置されることは、地域の土地の価値を下げ、
住民の安全を脅かします。

私としては、この問題は自治体の問題とし、
自治体ごとにフレキシブルに制度をつくれるようにするのが良いと考えます。

自治体が工夫して、住民たちが修繕しようと思えるような仕組みをつくり、
改装中の住居は自治体が用意するなど動きやすい体制を整え、
自分たちの地域の価値を守るべきです。

実は私は20年以上前に老朽マンション問題を予見し、
そういう内容の法案を提出しましたが、当時から何も進んでいないようです。


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▼建てることは簡単だが、入居者を増やすことは難しい
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地方都市では高層ビルやタワーマンションなどの建設が相次いでいるようです。

これは、自治体ごとに定められている高さ制限や容積率の緩和で開発を促し、
企業誘致や人口増加につなげる狙いですが、こうした都市間競争は、
限られた人口の取り合いに終始する可能性もあり、
「国は競争を促すだけでなく、全体像を示すべき」
とする専門家の見方を紹介しています。

福岡の天神ビッグバンや大阪の北ヤードを見に行くと、
賑わっている印象があります。

少なくとも工事中は賑わいますので、
私は高さ制限や容積率の緩和には基本的には賛成です。

一方で、東京駅周辺については建設が過剰だと考えます。

このまま新しいビルに入居が始まれば、周辺のビルは入居者を奪われる形になり、
困るところが多数現れると見ています。

建てるのは簡単で、数年あれば完成します。問題は入居者が増えていないことです。

人口も増えていませんし、世界中から人が集まるような、
新しい企業も生まれていません。

こうした日本の状況下では、過剰な開発には注意が必要です。

需給バランスが大きく崩れ、しわ寄せを被る人が生じてしまいます。


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▼意見を言うために自由な立場を選んだヒントン氏の英断
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AI研究を牽引し、2013年から米国のグーグルでフェローなどを務めていた
ジェフリー・ヒントンさんが1日、グーグルを退職したことがわかりました。

AI技術の急速な発達を危惧するヒントン氏と、
生成AIの実用化を急ぐグーグルとの間で意見の相違があったとみられますが、
ヒントン氏はTwitterで「退職したことによりグーグルへの影響を気にせず、
AIの危険性に言及できるようになった」と説明しています。

ヒントン氏はこの領域の神様のような人で、
トロント大学でAIの研究をしているころから、
若い研究者が殺到していたような存在です。

グーグルは彼を雇って、AI研究をより一層推し進めようとしていました。

一方で、ヒントン氏はAIを核兵器より危険なものだと考え、
ルールを整備するまでは専門家の管理下に置くべきだという持論を持っていました。

しかし、OpenAIがマイクロソフトとパートナーシップを結んだことで、
グーグル経営陣はヒントン氏の考えに反し、
急いでBERTを公開せざるを得なくなってしまったのです。

ヒントン氏は、自由な立場から意見を言えるようになるために辞めた、
と強調しています。確かにAIの危険性については、
グーグルの役員としては言うべきではないこともありますし、
発言がBERTの方針や開発に関わるものだと曲解される恐れもあります。

その点では、グーグルと仲違いして批判のために辞めたわけではないという
説明にも納得できます。

今回の退職は、双方にとっても、AIの未来にとっても、良い選択だったと考えます。


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▼バイデン大統領のリーダーシップに期待
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米国のバイデン政権は4日、
先進技術の国際標準規格を主導する新たな戦略を発表しました。

これはAI、量子、半導体、
バイオ等について国際標準規格をまとめる非営利組織等を支援するほか、
専門人材の育成にも注力することなどが盛り込まれています。

一方で、バイデン大統領は同じ日、アルファベットやOpenAIなど4社のCEOと会談し、
AIをめぐる安全性確保の法的責任を負うように求めています。

量子コンピュータに関しても同じような動きがあるようです。

これらの新技術を、ルールを制定せずに放置しておくことは大変危険です。

なので、GAFAMなどと連携して規格やルールのたたき台を作ろうという今回の動きは、
非常に重要なことだと評価します。

バイデン政権には珍しい、イニシアティブを取りにいく行動です。

半導体やバイオについては、米国だけで規格作りができるのか疑問ですが、
AIについては可能だと考えます。

AIは米国が一番進んでいますし、今後も進めていくだけの資金があるのも米国だけ、
技術があるのも米国のいくつかの会社だけです。

同じような規格やルールをヨーロッパも作ろうとしていますが、
AIについてはこのまま米国がリードしていくことになるでしょう。

 

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