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大前研一ニュースの視点

携帯電話大手/賃金問題/ニコン/クボタ ~KDDIの大規模障害は、今後に向けた警鐘

・携帯電話大手 緊急時のローミング「重要な課題」
・賃金問題 中小企業の数減らす必要性
・ニコン 一眼レフカメラの開発停止
・クボタ 米国、インドに新工場建設



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▼KDDIの大規模障害は、今後に向けた警鐘
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金子総務相は12日、
携帯電話会社が緊急時に
他社の通信網を借りる
「ローミング」(相互乗り入れ)について、
重要な課題との認識を示しました。

KDDIで大規模な通信障害が発生し、
全面復旧までに
約3日半を要したため、
119番などの通報が
長時間できない事態に陥ったことを
受けたものです。



法令上の問題などを整理し、
緊急時の通信手段確保を
急ぐ考えです。

緊急時の
通信手段確保の問題もありますが、
もし自動車の自動運転などが
携帯電話のパケット通信などを使う形で
実現されていたら、
今回のような大規模通信障害は
大変な事態を
引き起こしていたはずです。



ローミングの環境整備も重要ですが、
併せて
「SIMカードを
咄嗟に入れ替えられるようにする」
ということも
提案したいと思います。

ユーザー側、端末側で
対応できるようにするという発想です。

モバイル通信網は
今後ますます重要な
社会インフラになっていきます。



今回の通信障害は
よい警鐘となったのでは
ないでしょうか。

総務省に
通信関連の担当部署が
あるはずなので、
早急に対策を検討し、
即実行してほしいと思います。

 



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▼大企業の高い生産性を支えているのは中小企業
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経済同友会の桜田謙悟代表幹事が
日本テレビのインタビューに応じ、
日本の平均賃金の低さを解消するには、
中小企業の数を
減らす必要があるとの考えを
示しました。



「生産性や利益率の低さから
目を逸したまま、
賃上げを実施するのは困難」と
指摘したもので、
利益率の低い企業の廃業を促すための
優遇税制や、
働き手がより給与の高い企業に
転職できるよう
学び直しの機会の必要性などを
訴えました。

大企業の中で偉くなって、
中小企業の経営や
現場に関わったことがない人物による
問題発言です。



たしかに中小企業の生産性は
大企業の約半分と低く、
改善傾向も現時点ではみられません。

しかし、
だからといって
「中小企業をつぶしてしまえ」というのは
乱暴な結論です。

日本の強さは中小企業が担ってきました。



中小企業がまとまって
大企業を支えているからこそ、
大企業は高い生産性を
実現できているのです。

経済同友会は経団連などと違い、
会社ではなく個人の集まりです。



発言内容の社会的責任も、
組織人としての発言に比べて小さく、
自由な意見を
述べやすい場所ではあります。

とはいえ、
中小企業が果たしてきた役割や
生産性が改善しない構造を理解せず、
廃業を促そうなどという
意見を持ってしまう人物は、
事実の認識や論理的思考力に
問題があると言わざるを得ないと
私は考えます。

 



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▼ニコンの一眼レフの開発停止は、合理的な経営判断の結果
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光学機器大手のニコンが、
近年の一眼レフ市場の
縮小傾向を受けて
一旦開発を停止し、
今後は成長が見込める
ミラーレスカメラの開発・生産に
注力すると
報じられました。

ニコンは
ミラーレスを中心に据えるという
方針を示したのは間違いありませんが、
やや報道に混乱が見られます。



それは「開発の停止」と
「生産販売の停止」は
意味が全然違うという点です。

今回ニコンが発表したのは
「開発の停止」のみで、
生産や販売を停止して
市場から一眼レフが
なくなるという話ではありません。



とはいえ、
「いつかはクラウン、いつかはニコン」
と言われた
カメラのトップブランドが
開発を停止したことは、
世界に衝撃を与えるニュースです。

ニコンの業績は、
カメラ付き携帯電話に押されて
芳しくありません。



ですが、
セグメント別の業績をみると、
2022年3月期には
主力5事業すべてで
利益が出ていますので、
「生産販売の停止」のような
大胆な改革をするような時期では
ありません。

当然ニコン側も否定するはずです。



一眼レフとミラーレスの
出荷状況・出荷金額を比較すると、
一眼レフは右肩下がりで、
2012年に比べると
総出荷利益は6分の1にまで
落ち込んでいます。

一方で、
ミラーレスに関しては
右肩上がりで
堅調に推移しているので、
ミラーレスに注力するというのは
当然の帰結です。



むしろ「一眼レフの開発を続けます」と
宣言したほうが、
株主としては
異議を唱えたくなる状況だと
言えるでしょう。

 




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▼クボタは、米国のニッチ市場で勝機あり
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産業機械大手のクボタが、
米国やインドに
新工場を建設することが
わかりました。

2030年までに3,000億円を投じ、
海外での生産比率を
3割から5割に引き上げる方針です。



新型コロナ禍で
供給網が世界的に分断しているほか、
コンテナ船の海上運賃等が
高騰しているのを受けて、
需要のある場所での
現地生産に移行する考えです。
    
今後の戦略を考えたら、
インドと米国に注力するのは
合理的な判断です。



2020年の農機の世界シェアを見ると
クボタは8.8%です。

インドには
マヒンドラという企業がありますが、
世界シェアは0.6%に留まり、
クボタが有利に戦える市場だと
言えるでしょう。



中国市場に関しては、
マヒンドラと同等の
世界シェアを持つ
フォトン・ロボルをはじめとする
地場の企業が複数あるため
好ましい環境ではありません。

一方で米国には、
ブランド「ジョン・ディア」を擁する
世界シェア12.7%を占める
ディア・アンド・カンパニーをはじめ、
インターナショナル・ハーベスターなど
巨大な競合が多く存在します。



しかし、
巨大な農場が多い米国では、
クボタの製品は「ガーデントラクター」、
つまり家庭菜園用の農業機械という
位置づけになり、
ニッチ市場での戦いになります。

クボタをはじめ、
ヤンマーや井関農機などの
日本の農機メーカーは、
巨大農場向けの製品は
あまり得意ではありません。

ですが、
小さな農場向けのニッチ市場では、
クボタのきめ細かく工夫が施された
使い勝手のいい農機は
十分に戦えると考えます。

 

 

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