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大前研一ニュースの視点

アフガニスタン情勢/タリバン統治/トルコ情勢/アフガン難民 ~新政権の動向をどのように見るべきか

・アフガニスタン情勢 タリバンが大統領府掌握
・タリバン統治 ツイッターで出社拒否訴え
・トルコ情勢 アフガン駐留トルコ軍撤収判断は「時期尚早」
・アフガン難民 欧米や周辺国、アフガン難民の多数流入懸念

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▼タリバン新政権の動向をどのように見るべきか?
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アフガニスタンの武装勢力・タリバンが15日、
首都カブールにある
大統領府を掌握しました。

ガニ大統領は衝突による流血を避けるため
退去を決断したとし、
タリバンが勝利したと表明。

 

一方のタリバンは、17日、
制圧後初の記者会見を開き、
アフガン戦争の集結と
全国民に対する恩赦を宣言しました。

タリバンの状況を見ると、
全体としては
まだどのような展開を見せるのか
わからない状態だと言えます。

 

一般的にタリバンは、
バーミヤンの石仏の破壊や、
女性の権利の極端な制限などにより、
世界中から嫌われている側面があります。

タリバン側は
イスラム教の教えだと主張していますが、
他のイスラム国家と比べても
極端だと言えるでしょう。

 

また、
アルカイダのようなテロ集団の
温床となったというのは、
国際的に嫌悪される
大きな理由でしょう。

こういった点が修正できるのであれば、
米国が20年かけて構築してきたものを
一気に崩壊させた力もあり、
統治する力もあるでしょうから、
期待できるかもしれません。

 

一連のタリバンの動向を見ていると、
約20年前の911テロ事件では、
あっという間に
英米に抑え込まれてしまったことを
猛省しているように感じます。

世界に向けて
「20年前の自分たちは違う」
ということを
一生懸命に
アピールしているのだと思います。

 

ただし、
現状においては
20年前とは違うという確証はありません。

タリバン新政権のトップは、
代表としてカブール入りをした
バラダル師ですが、
彼はオマル師とともに
タリバンを創設した人物です。

 

その他の指導者を見ても、
お馴染みの人ばかりが並んでいます。

以前のやり方を反省して
新しい政府としてやっていくと言われても、
このようなメンバーを見ていると
簡単には鵜呑みにできないでしょう。

 

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▼国境が複雑で長いアフガニスタン、周辺国への影響が大きい
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タリバンはそもそも宗教団体であり、
スンニ派が主体となっています。

その母体から考えると、
イランとは対立することもあるでしょうが、
スンニ派人口が
一定以上存在するイラクとは
手を組める可能性は
あるかもしれません。

 

トルコのチャブシオール外相は、
他国がいなくなったら
空港の警備などのために
アフガニスタンに駐留しても良いなどと
発言していますが、
エルドアン大統領は
賛同していないと話しており、
トルコの動向は不明です。

また、私が注意して
見ておくべきだと思うのは、
パキスタンです。

 

元々、パキスタンがタリバンを
支援しているからです。

なぜ、パキスタンが
そのようなことをしているのか。

インドとの関係性を
有利に進めるために
動いているのかもしれませんが、
この点についても
詳細を解明する必要があると思います。

 

そしてこの先、
大きな問題になってくるのが
アフガンの難民です。

パキスタン、タジキスタンに逃れる人、
さらにはイランなどを経由して
トルコに逃れている人も大勢います。

 

英国のジョンソン首相は、
アフガニスタンの難民を2万人ほど
英国で受け入れる用意があると
述べています。

ドイツのメルケル首相も
相応分の難民受け入れについて
表明しています。

 

また、米国も同様に
難民を受け入れる姿勢を見せていますが、
現実的に
どのように難民を移動させるのか、
という問題があります。

タリバンが支配している
道路や空港を通過して、
米国まで難民を連れていくのは
至難の業です。

 

今回の件は、
米国にとっても
完全に予想外でしたから、
難民を連れてくる準備も
整っていないでしょう。

国境を接する国、
あるいはその関係国は、
この難民問題に
頭を悩ませていると思います。

 

アフガニスタンは、
中国、インド、パキスタン、
タジキスタンなどと
国境を接していますが、
国境が複雑で非常に長いため、
周辺国へ様々な影響が予想されます。

そのような場所を
得体の知れないテロリスト集団が
支配することは
困惑を招きますし、
周辺国にとっては
非常に厄介な問題でしょう。

 

タジキスタンが
最も国境を長く接しており、
今ここに人が溢れかえっています。

この点については、
ロシアも懸念しているはずです。

 

また中国も、
国境から新疆ウイグル自治区が近いため、
そこに難民が流れ込んでくる可能性を
懸念していると思いますし、
中国は西方戦略の見直しを図る必要が
あるかもしれません。

 

一方で、
泡を食っている米国を横目に見ながら、
状況が落ち着いてきたら、
中国はタリバンに近づいていくことも
考えているはずです。

すでに
タリバンのナンバー2を北京に呼んで
話し合いをしています。

 

中国、ロシア、トルコが
どのような動きを見せるのか、
非常に重要だと思います。

イランは宗教的にはシーア派なので、
タリバンと同調するのを嫌うでしょうが、
他国の状況によっては
妥協するかもしれません。

 

今、世界の難民では
シリア人が一番多くなっていますが、
ここから一気に
アフガニスタン人の難民が
増えていくことは間違いないでしょう。

難民問題を含め、
タリバンについては
様々な情報が錯綜している状況です。

 

タリバン国営放送の女性キャスターが
命の危険を訴えるなど、
正式なスポークスマン発表とは
異なる情報も多く、
状況の変化を慎重に見守ることが
重要だと思います。

 

 

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