「突然死」したVIXベア投信 (3)表面化しにくいETN発行体のリスク
2019/01/28
早期償還が決まったVIXベア投信。
投資家にとってみれば、
前日まで100だったものが4にまで値下がりする悪夢でした。
しかし「あくまでも可能性において」ですが、
発行体にとっての悪夢は終わっていないかもしれません。
というのもこのような商品の多くはETN(指標連動証券)であり、
ETF(上場投資信託)ではないからです。
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ETFでは特定の指数に連動するように現物証券が買い集められ、
それを資産とする投信受益証券が発行されます。
つまりETFは「ノミ行為ではない金融業」「バランスシートを使わない金融業」。
たとえ発行体が潰れても、組み入れた銘柄によって投資家の資産は保全されます。
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それに対してETNには裏付けとなる資産がありません。
発行体が指数に連動する社債を発行し、
それを受託証券として売買できるようにしたものだからです。
発行体がリスクを「丸呑み」した上で、
指数と同じ損益を投資家に与えているという構図はFX証拠金取引やCFDと同じ。
つまりETNは「ノミ行為的金融業」「バランスシートを使った金融業」。
投資家がETNを買うと発行体に対する信用リスクを背負うことになり、
発行体と買い手の間に利益相反が発生します。
この違いについては、以下を参照してください。
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「ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇2016」
第5章 投資商品の一般原則
第5節 ノミ行為的金融業と利益相反
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発行体は通常、それらのポジションの損益をまともに食らわないようにヘッジしています。
VIXベア投信を売ったならそのリスクをなくすようVIX指数を売るか、
オプションを組み合わせて売っているはず。
反対の動きをするVIX(ブル)投信も売っているなら、
社内でネッティング(差し引き)して余った分だけヘッジします。
すると顧客の損益とヘッジの損益が相殺され、手数料だけが着実に入ります。
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しかしVIX指数が瞬間的に踏み上げられ、
VIXベア投信の純資産を超える損失を食らったらどうなるでしょう。
たとえば純資産300億円に対し、
ヘッジポジションが500億円の損をしてしまった場合です。
発行体はETNの買い手に対し、損失補填を要求することはできません。
発行体はETNの価値をほぼゼロまで落としたとしても、
超過した200億円の損は自己資本で穴埋めすることになります。
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100の価値だったものがいきなり4にまで値下がりすれば、
投資家にとっては悪夢です。
しかし発行体にとって、悪夢は終わっていないかもしれません。
もはや顧客に対するポジションはなくなってしまいました。
しかし残されたVIX指数やオプションの売りヘッジを早く手仕舞いしないと、
損失がどんどん膨らみます。
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ボラティリティの売り(セルボラ戦略)は理論上、損失無限大。
買い戻さなければベガでやられガンマでやられの地獄です。
おそらくいろんな発行体が、先を争って買い戻したことでしょう。
大きな損害を被ることなく、うまく処理してくれたらと願います。
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これはあくまで「可能性」の話に過ぎません。
ETNが「ノミ行為的金融業」である以上、起こり得る話です。
しかし損失無限大のポジションを取っても投資額以上を失わないのであれば、
投資家は発行体から「ゼロ以下にはならないプットオプション」を
与えられていたことになります。
資産をほぼ吹き飛ばしたことは残念だったでしょうが、
「借金を背負わなかった分だけ利益を得た」可能性もあるのです。
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