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週末だけのグローバル投資コラム

米朝合意。ようやくここからスタート

2019/01/28

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(1) 会談できたこと自体が驚き
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弊社は

「米朝首脳会談が開催される確率は10%以下(影武者の可能性アリ)」

と予測していました。

それだけにまず、金正恩氏がシンガポールに到着したとのニュースで
「ほんとに来たんだ」と驚きました。

次に、映像を見て「誰?」と思いました。

独裁国家の指導者は、何人もの影武者を用意することが珍しくありません。

クーデターや暗殺の危険が常にあるため、それが常識なのです。

しかしよくよく考えてみると、
私の記憶にある金正恩氏が「本物」という証拠もありません。

ごく一部の情報機関を除いて、どれが本物かを知ることもないのでしょう。

あらゆる可能性を考えると、キリがなくなってしまいます。

「本物はすでに亡くなっており、ずっと影武者が働いている」

「最初からそんな人物は存在せず、架空の人物を元首として祀り上げていた」

まるで小説のようですが、独裁国家ならありえる話です。

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(2) 「合意した」だけではいつものパターン
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ともあれ「今回の金正恩氏」は合意文書にサインしました。

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- 北朝鮮は「朝鮮半島の完全な非核化に向けた取り組みにコミット」

- 米朝は「米国と北朝鮮との新たな関係を築く」ことで一致

- ポンペオ米国務長官と北朝鮮側の担当者が主導するフォローアップ交渉の実施で米朝は合意

- トランプ大統領と金委員長は「新たな米朝関係の発展および朝鮮半島と世界の平和と繁栄、
安全保障の推進に向けた協力にコミット」

(出所)Bloomberg 2018年6月12日 15:47 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-12/PA76VA6S972E01

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この内容を見ても、あまりに抽象的すぎて「何だかなあ」という感じ。

むしろ「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」が
前提と言っていたトランプ大統領のほうが譲歩した印象です。

合意を何度も破られている過去の経験に照らし合わせると、イヤな予感しかしません。

これまでは北朝鮮が合意を守らなくても、
友好国や各国マスメディアが時間を稼いでくれました。

米国や日本で「倒閣運動」が燃え上がり、なぜか中東の紛争が激化して、
それどころではなくなりました。

そのうち選挙になって大統領が変わり、スタッフも変わって、繰り返し騙されてきたのです。

今回がこれまでと違うのは、世界の耳目を集めた上で首脳同士が合意した点だけです。

これを破ったら武力行使をしても、反対する人は減ったと思います。

しかし大統領か変われば、また忘れられてリセットされる可能性は十分あります。

今回の合意により、北朝鮮はサッカーW杯が終わるまでの時間を稼ぐことができました。

それが終わる頃、また韓国あたりが「新しい対話の機会」を取り持つでしょう。

その間に日米で倒閣運動・世論誘導・言論弾圧などを活発化させるはずです。

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(3) 中華文明では約束を信じると危ない
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中華文明圏の中国・北朝鮮・韓国などでは、
約束や契約に対する考えが我々と大きく違います。

というのも

「賢い人物は口先で相手を騙し、利益を得るものだ」

「契約は相手に守らせるものであって、自分が守るものではない」

「約束を守る人間は愚か者」

と考えるからです。

このことは「核や拉致をめぐるこれまでの交渉」「慰安婦合意」
「日韓基本条約」などの結末を見れば明らかでしょう。

彼らの価値観で言うと、

「約束を守る人間は愚かで地位が低いのだから、どんなことをしても良い」

ということになります。

そして日本人や西洋人は相手の言葉を信じ、約束を守ろうとする習性があります。

彼らの価値観では「何度でも騙して良い相手」になるのです。

さらに日本は地理的にも中華文明の辺境にあり、最初から見下されています。

日本人を脅して騙すことが正義であり、
仲良くしようとすると「親日派」として弾圧されます。

彼らが日本に対して居丈高に要求ばかりするのは、
そのような意識と価値観が根底にあります。

日本人が彼らとの関係に強いストレスを感じるのは、これが大きな原因です。

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(4) 北朝鮮内部が危険な状態に
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今回、弊社の「米朝首脳会談がが開催される確率は10%以下(影武者の可能性アリ)」

という予測は外れました。

なぜそのような予測をしたかといえば、「金正恩氏の地位が危うくなるから」です。

北朝鮮の核ミサイルは、軍部・中国北部戦区・他国に散らばる親北派たちの悲願です。

それを手放す素振りを見せただけでも、クーデターや暗殺の危険が高まります。

だから合意はできないし、そもそも国から出られないと考えました。

正直、今回の合意にはたいした意味はありません。

しかし独裁者が敵に愛想を振りまいたとなれば、その権威が大きく揺らぎます。

にこやかに外国人と話をして約束を守ろうとするだけで、
彼ら内部の「格付け」が暴落してしまうのです。

「ヘラヘラしやがって」→「愚か者に見える」→
「我々の指導者にふさわしくない」→「引きずり降ろせ!」

国内を恐怖で支配しているだけに、「舐められたらおしまい」なのです。

今後、金正恩氏が査察を受け入れたり人権問題で
注文をつけられるたびに権威が下がることでしょう。

それに連れて北朝鮮国内は、これまで以上に不穏なものとなります。

それを引き締めるため弾圧を強化したり、合意を反故にしたりするでしょう。

すんなり核を放棄するとはとても思えないのです。

今回の米朝合意について、現段階では「いつか来た道と同じ」としか言えません。

会談を実現させたのは「力」であることを忘れず、
過去の反省を生かしながら合意を履行させることがカギとなると考えます。

(終)

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