ヘリコプターマネーの本質 (4)「統制経済の罠」で衰退の連鎖へ
2019/01/28
本筋ではありませんが「ETF買い入れ倍増6兆円」について話を続けます。
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私は、デフレ脱却の補助としてETFを買い入れるのは「あり」だと考えています。
デフレ脱却のためには
「通貨価値を下げ、資産価値を上げる」
政策が必要だからです。
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インフレマインドに火をつける「着火剤」として、株や不動産などの資産を買う。
それが異次元緩和のETF買いであり、REIT買いなのです。
このメカニズムについては拙著
「超絶バブルの安全な投資術 バブル期に始める株式投資の勝ち方」
http://blog.livedoor.jp/contrarian65-wild/archives/51121736.html
でも詳しく説明しました。
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しかし中央銀行が株を買えば買うほど、様々な弊害が生まれます。
簡単に言えば、「統制経済の罠」によって経済が衰弱するサイクルに嵌りかねないのです。
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1. 浮動株が極端に減り、「株式市場の価格シグナル」が歪む
2. 筆頭株主が日銀となり実質国有化される。倒産させられなくなりガバナンスが緩む。
3. 民間企業の強みであるスピードや柔軟性が失われる
4. 上場企業が買収や資金調達などで極端に有利となり、新しい企業が育つ余地が狭まる
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日銀(≒国)が大株主となれば、企業はそちらのほうを向いて仕事をします。
役所とうまくやれる人材、国の仕事を取って来れる人材が出世します。
規制と闘いながら、市場を開拓するパイオニアは生まれません。
大企業から中小企業まで、悪い意味での「お役所仕事」になってしまいます。
それでは世界的な競争に勝てるわけがありません。
市場を失えば企業はますます内向きになり、国に頼るようになって、衰退が加速します。
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別の意味で危ない兆候もあります。
今回の日銀会合当日、何が出るかわからないので売り板も買い板も極端に薄くなりました。
オファービッド(市場の売値と買い値)の差が大きく開きました。
損失を限定するために、逆指値を仕掛けた人が多かったのでしょう。
日銀が動く前に日経は2%上げたり、4%下げたりしました。
発表後の動きより、その前の「ストップ狩り」の動きのほうが大きかったのです。
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他国のように最初から発表時間を決めておけば、こんなことは起こりません。
しかし今の黒田日銀は、市場に「手を読ませない」ことを戦略としています。
その結果デマが飛び交い、ストップ狩りの仕掛けが横行します。
値動きが大きく合理的でない市場は、リスクプレミアムを求められます。
資金調達コストが上がる可能性があるということです。
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日銀のEFT買いによって、すぐに日本が衰退するわけではありません。
しかし今回の政策に何の疑問もなく踏み切ったのであれば、かなり危険な兆候です。
すでに「株価」と「政権支持率」の維持が目的となっているようです。
そこから進む未来は「統制経済」。
後戻りできない「衰退の連鎖」へと向かっているように思えます。
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ワイルドインベスターズ株式会社