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週末だけのグローバル投資コラム

対抗関税の損得勘定 (3)資本主義という「宗教」、自由貿易という「教義」は死なない

2019/01/28

2018年7月17日、日本とEU(欧州連合)は世界最大規模の
経済連携協定(EPA)に署名しました。

これが実現すれば、世界の国内総生産(GDP)の3分の1近くを占める経済圏となります。

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これはもともと安倍首相が訪欧して署名するはずでした。

しかし日本の豪雨災害によって訪欧は急遽中止に。

すると欧州委員会のユンケル委員長が訪日してくれることになり、
めでたく日本での署名となったのです。

人道を旨とするEUらしいふるまいであり、
またこの協定に対する期待の大きさを示しています。

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マスメディアはこれを「米国の保護主義に対抗」と報道しています。

英国では「これで我々は取り残された。EUを離脱するべきではなかった」
と報道しているようです。

しかしそれらは全く的外れです。

米英日を争わせたい人々の報道を信じていたら、彼らの思う壺となります。

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米英日はそれぞれ国益に沿った形で、自由貿易を再構築しようとしているだけです。

トランプ大統領は就任直後にTPPへの離脱を表明しましたが、
今では復帰の検討を指示しています。

英国と日本は自由貿易協定(FTA)の交渉に着手しています。

また英国は環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する意向も示しています。

お互いに交渉して主張することはあっても、対抗する意図はありません。

対抗するものがあるとすれば、それは自国の安全を脅かす国に対してです。

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資本主義国家が、自由貿易という「宗教」を捨てることはありません。

共産主義が宗教であるのと同様、資本主義もまた宗教です。

それは国家の枠を超えて経済的利益(カネ)を追求します。

そして自由貿易はそれを支える「教義」のようなもの。

資本主義の総本山である米国や、
それを支えている英国や日本が自由貿易を捨てるわけがないのです。

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[共産主義教]

共産党を頂点とする一神教。

他の宗教や政党を認めない。

逆らう奴は皆〇し。

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[自由貿易(資本主義)教]

経済的利益(カネ)を頂点とする現世宗教。

最適な国で作り、最適な良い国で売る。

政府は邪魔すんな。何でも自由にやらせろ。社会が荒廃してもシラネ。

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これらのうち、どちらが優れているのか?

その結論はすでに出ています。

共産主義はイノベーションが進まず技術が遅れ、経済的にも衰退します。

不満を抑えるため、人々を弾圧します。

賢い人々は自由な国へと逃げ出して、二度と帰って来ません。

稼げない人たちが国に残って、自分の権力をますます強化しようとします。

自縄自縛に陥って、いずれ破滅してしまうのです。

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一方、資本主義教も最初は悲惨なものでした。

もともと共産主義教は、資本主義教の矛盾に対抗するために生まれたものだったのです。

しかし資本主義教には、共産主義教が捨ててしまった「自由」と「競争」が残っていました。

国や企業間で競争が働き、社会主義の良い部分を取り入れて福祉を発展させました。

今の先進国は、昔のリベラルが夢見た理想をほぼ実現しています。

問題が尽きることはありませんが、間違いを修正する柔軟性があります。

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日欧EPAは、反米でも反トランプでも反英でもありません。

単なる「資本主義国間の自由貿易体制の再構築」です。

ただしこれによって経済のブロック化は進むでしょう。

それは「米国(資本主義陣営) vs 中国(共産主義陣営)」という新冷戦に基づくものです。

(終)

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