国内株式市場/日銀/米オフィスビル市場/米インテル
▼国内株式市場 日経平均終値3万1458円
日経平均の急激な下落は、日本市場の過剰反応による
5日の東京市場で、日経平均株価は前週末比4451円、
12.4%安い3万1458円で取引を終了しました。
アメリカ景気の悪化懸念からドル安円高が進むにつれ、
日本株が下げ幅を拡大したもので、
下げ幅はブラックマンデーの1987年10月を上回り、過去最大となりました。
今回の日経号外でも4451円安と報じられ、
日経もこの急落に驚きを隠せないようです。
日経平均の推移のグラフによると今回は確かに大きな下落がありましたが、
全体としては長期的な上昇基調の中で急に落ち込んだという状況です。
また日経平均とダウ平均の騰落率の推移のグラフによれば、
日経平均は2020年のコロナウイルスの世界的な感染爆発による
株価急落のときにも動きがありますが、
今回の下落のほうが大きかったことが分かります。
ところがアメリカのダウ平均を見ると、
アメリカに影響されたとされていますが、
コロナ禍への突入時のほうが下落は大きく、
日本市場が過剰反応をしているのが特徴的です。
▼日銀 「円キャリー」想定外の巻き戻し
素人投資家の参入リスクが、大きく影響
日経新聞は9日、
「『円キャリー』想定外の巻き戻し」と題する記事を掲載しました。
これは日銀が追加利上げを決めた7月末以降、
ヘッジファンドなどによる円キャリー取引の急激な巻き戻しが起こったと紹介。
円安株高のシナリオにかけていた外国の投機筋が急激な円高で
持ち高の調整を迫られ、大量の株売りにつながったもので、
株売りはアメリカのハイテク株にも向かったと見られ、
世界的な資産価格の押し下げ圧力にもなるとしています。
今回の日経記事は過剰反応だと、私は思います。
元はといえばウォーレン・バフェット氏の影響が大きく、
しかし彼の考え方は正しいとも言えます。
彼は日本株が過小評価されているが、
全体としては可能性があり意外に強い会社もある、
しかし個々の会社についてはよく分からないということで、
6年ほど前から日本のインデックスとして三菱商事や
伊藤忠商事などの商社株を購入し始めました。
こういったバフェット氏の動きに安心感を覚えた投資家たちが
日本株を買い進めた結果として、今回のような事態が生じたと言えます。
この背景には、円キャリー取引がありました。
以前の円キャリー取引では金利の安い日本で借りて、
金利の高い国に資金を移し、例えばアイスランドで住宅ブームが
起こった際にはドイツを経由してアイスランドの住宅市場に投資しました。
それが巻き戻されたときには、
アイスランドで返せない人がたくさん出たものです。
バフェットは自分の資金で株を購入していますが、他の投資家たちは、
預けたときには0.1%にいかず、借りるときにも0.4%ぐらいということから、
日本で借り入れを行って日本の株式を購入していました。
このように日本株を購入していた投資家たちは、
慌てて株を売りに出したため、株価が急落しということです。
しかし、よく考えてみると、日銀の金利はまだ0.25%程度であり、
優良企業の株を保有していれば、配当だけで4%程度のリターンが期待できます。
金利と配当の差を考えれば、慌てて売る必要はありません。
バフェット氏の後を追う形で訳も分からず動いた投資家たちが
パニック売りをしましたが、現在、市場は落ち着きを取り戻しつつあります。
今後も日銀総裁の「金利引き上げを続ける」
といった発言はあるかもしれませんが、
「こういう状況が続く限りは金利を上げない」という副総裁のコメントも、
市場が落ち着いた要因となったのでしょう。
今回の状況は、素人投資家が市場に参入した際のリスクを示す、
典型的な事例だということです。
▼米オフィスビル市場 オフィスビルが97%値引きで落札
オフィス空室率の問題は、アメリカ経済全体の問題である
米ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウン地区にあるオフィスビルが、
先月31日、ネット競売サイトで、
およそ12億7000万円で落札されたことが分かりました。
FRBの金融引き締めにより、
銀行がオフィスビル向けの融資を絞っているのを受け、
ビルの所有者が借り換えに窮して、投げ売りを余儀なくされている現状で、
トランプ氏が所有するビルも空室率が上昇しているほか、
来年には現在のおよそ2倍の金利で借り換えを強いられる可能性があるということです。
こちらの状況のほうが深刻です。
リーマン・ショックの時は、サブプライムローンを通じて、
貸すべきでない人々が住宅ローンを組むことを許され、
これら債権をみじん切りにして優良債権として世界中に売りまくられました。
しかし住宅ローンを組んだ人たちが資金を返せないとなったときに、
パニック売りが起こったのです。
しかし今回は、プロによるニューヨークのオフィスビルが中心です。
通常オフィスビルの空室率が5%を超えると価格が大幅に下がる傾向があり、
97%の値引きで落札されるなど、完全にパニック状態となりました。
1960年代に建てられた古いビルも含まれていますが、
その価格の下落は驚異的です。
またトランプ氏は、ウォール街の証券取引所から
50メートルほどのところにトランプビルを所有しています。
トランプタワーというのもありますが、こちらは住宅で、
トランプビルはオフィスビルです。
トランプビルは700億円ぐらいの価値があるとトランプ氏は主張していますが、
実際には相当下がっているようです。
サンフランシスコでは、オピオイド中毒患者の影響で、
中心部のオフィスは買い手が付かない状況が続いています。
また在宅勤務が普及しているハイテク企業が多いため、
オフィスの空室率は25%を超えています。
またヒューストンやシアトルの空室率も、23パーセントを超えました。
アメリカ全体の平均空室率は18%を超えており、非常に危険な状態です。
オフィスビルの価値が暴落すると、
貸し手は貸したお金を回収できなくなります。
現在オフィスの価値は極端なケースでは97%引きという大変な
暴落の状況ですが、経験上、さらにマイナスになることもあり得ます。
つまり借り手にお金を払わなければ、
オフィスを借りてもらえないということです。
引っ越し費用を負担し、
最初の2年間は賃料を免除といった条件提示も考えられますが、
その場合の価値はマイナスです。
私たちは過去50年の間に2回、このような経験をしていますが、
現在の米オフィスビル市場でも同様の現象が見られる都市が
いくつか出てきているのです。
アメリカ経済全体を見れば、
一般消費者の消費はそれほど危機的ではないように見えますが、
オフィス市場に目を向けると、
90年代初頭に世界を襲ったパニック現象に匹敵しており、
その後、日本でも地価が暴落しましたが、
今のアメリカはまさにそのような状況に陥っています。
しかし『裸の王様』のように誰もが口を閉ざし、
空室率だけが問題視されています。
アメリカ経済は一般消費者のほうがよいとFRBはそちらに向いていますが、
オフィス空室率は大変な懸案事項であり、
アメリカ経済の深刻な問題であると言えます。
▼米インテル 最終赤字約2400億円
大幅赤字は、生成AI事業への乗り遅れが要因か
米インテルが発表した2024年4月から6月期決算は、
売上高が前年同期比1%減少のおよそ1兆9000億円、
最終損益はおよそ2400億円に赤字となったことが分かりました。
主力のパソコン事業やデータセンター事業の売り上げが
前年同期比で減少したことなどが要因で、これを受けインテルは
従業員の15%に当たる1万5000人の削減と配当の停止を発表しました。
現在、世界的な半導体ブームの中で、
かつて半導体業界のチャンピオンと呼ばれていたインテルが、
このような厳しい状況に直面しています。
生成AIやグラフィックプロセッシングユニット(GPU)などの分野では、
インテルはまだ対応が遅れているのです。
インテルは、イスラエルの企業であるモービルアイを買収しましたが、
エヌビディアに比べると、その需要は伸び悩み、売り上げも伸びていません。
インテルは自動運転技術に期待してモービルアイを買収しましたが、
生成AIの分野での技術開発を行っていなかったことが
今回影響していると考えられます。
エヌビディアは生成AI関連の需要に対応し、
ChatGPTでその技術が採用されたことから大きな成長を遂げましたが、
インテルは長らく収益を上げ続けた伝統的なパソコン事業に
依存し過ぎたために出遅れたようです。
インテルの株価推移のグラフによると、かつて70ドル近くの株価が、
今は10ドル台にまで落ち込んでいます。
このような苦境に立たされている姿を目の当たりにするのは久しぶりのことです。
ここでAI関連のご質問に答えします。
「レノボは中国企業でありながらAIを全機種へ搭載とありますが、
中国ではAI搭載機を売れなくなるとすると、
大きな市場を失うことになると思いますが、
レノボは中国市場を諦めてインド等に軸足を置き始めたということでしょうか」
レノボは、
もともとリュウ・シーチャウ氏がIBMのパソコン事業を買収してできた企業です。
しばらくはIBMブランドを使うことが許されていましたが、
現在はレノボというブランド名で展開しています。
中国や台湾ではパソコンメーカーが多くありますが、
レノボは日本を含む世界中でよく売れており、
中国市場だけに依存しているわけではありません。
元IBMのパソコン部隊と考えると分かりやすいでしょう。
中国ではAI搭載機に「習近平」と入力すれば
「偉大な方ですよ」などと答えるように、
何らかの制限をかける可能性はあります。
しかしレノボは世界市場で広く展開しており、
今後もその戦略を続けると思いますので、大きな懸念はないと思います。